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女神の誓剣  作者: 長月遥
第八章 砂漠王と清流の女王
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第百十四話

 そんな事を考えているうちに、会議室へと辿り着いた。


「おぉ、刻皇陛下! お久しぶりです!」

「やあ、ドルトバス。久し振り。元気そうで何よりだ」


 会議室に入ると、そこにはもうドルトバス族長とバステアス、そしてウィシュヌの代理として軍部の部長が揃っていた。

 研究員の所長もまだ重度の魔人化したままで話にならないから、彼は色々大変らしい。


「じゃあ、始めようか。まずレーゲンガルドと土の宮は、今どうなってるんだ?」


 席に付いたルトラから早速そう問われて、まず答えたのはバルバトス族長だった。


「はっ。レーゲンガルド北西部の土の宮周辺は、境皇様のお力で今もエレメント領域となっております。我らドワーフも北方カッパギア山脈から地下洞窟に下り、生き延びた者達三千名あまりで隠れ住んでおります」

「逆にレーゲンガルド南部はリザードやコカトリス、それと瓦解した国々の人間達が魔人になって支配していて、無法地帯になってしまってる。カッパギアも山の頂にはハーピーがいるし。境皇が地下に潜ったのは間違いないと思う」


 ドワーフ族が地下に潜る事を選んだのもそれもあってか。

 ドルトバス族長の答えを引き継ぎ、重たい息と共に言ったバステアスの声は沈んでいた。無理もないが。


「ククルスエイジはどうなってるんだ?」

「ここから更に西に行ったかつての首都をそのまま使ってる。水のある所は限られるからね、一回滅ぼされたから違う所に一から建てようなんて早々出来ない。酷い有様だけど、まあ、大砂漠で星空見ながら眠るよりはいくらかマシだ」


 レーゲンガルドは北に高山、中央から南部は砂漠地帯と、決して住みやすい環境じゃない。川の畔になんとか町が点在する程度なんだとか。


 それでもここに人が住んでいるのは、レーゲンガルドは良質の宝石、鉱石が採れるから。

 平和な時は輸出入で生活が成り立っていたが、今はそんな状況じゃないから食べる物さえ乏しい有様だろう。


「だが町は町だから、拠点としては十分使える。土の宮までも馬で二日と遠くない」

「いいのか?」

「勿論。ただし住みやすさはここより断然劣る。何しろ昼間は死ぬ程暑くて夜は死ねる程寒い」


 まま砂漠の気候だな。


「覚悟しとくよ」

「慣れるためにも、数日滞在してからの方がいいと思うが、どうだ?」


 それは今から行かないかって事か?


「いや、こっちのがエレメントの回復早いから、三、四日回復させてから行くよ」

「そうか」

「――魔族達はいいとしても、僕達はドワーフ達の所に身を寄せた方がいいんじゃないか?」


 ああ、そうか。同じエレメント種族だもんな。

 頭の横まで挙手をして言ったルトラに、しかしドルトバス族長は唸り声を上げた。


「難しいですなあ。いや、勿論歓迎はさせていただきますが、外敵から逃れるため地下へ地下へと掘り進んだので、スペースもあまりありませんし、精霊の皆にはちと行き来は難しいかと」

「ハルト、本当よ。無理。止めた方がいい」


 すでに一度ドワーフの洞を訪ねているフィレナも、ドルトバス族長に同意して首を横に振った。


「魔人以外の来訪など久しぶりでしたからな。何事かと思って迎えに行ったのです。中間付近で難儀していたようでしたのでな!」

「あそこまだ真ん中なの!?」


 フィレナから驚きと慄きの声が上がる。うん、判った。無理な気がしてきた俺も。行き来するだけで体力使い果たしそうだ。


「ルトラ、やっぱりククルスエイジに世話になるって事で」

「そうだね」


 提案してきたルトラも同意した。


「じゃあ、精霊の皆は後から来るとして……じゃあ僕達は先に戻って受け入れ態勢を整えようか、フィレナ」

「あ……。ええ、そうね」

「もう行くのか?」


 自分の国が心配だろうバステアスはともかく、フィレナも一緒にっていうのが少し驚いた。

 ……いや、違うな。残念、だったのかもしれない。久し振りに会ったから。


 まあ会ったから何って訳じゃないし、フィレナも気に掛けてくれるから、今は会わない方がいいっちゃいいんだが……。


「うん……」


 しかし当のフィレナもどことなく気乗りしなさ気だ。気乗りしないなら別に俺達と一緒に向かっても――と俺が言うよりも早く。


「婚礼の準備もあるからね」

「……婚礼?」


 なんか、この場に相応しくない単語を聞いた気がする。

 こんな時に、婚礼?

 ってか、バステアスの婚礼の準備にフィレナが何の関係が。


「土の宮奪還の前に済ませてしまおうと思ってるんだ。勿論簡易になってしまうけど、重要なのは事実だからね」

「……」


 上機嫌なバステアスに対して、フィレナの表情は硬い。

 ……って、まさか。


「フィレ、ナ?」

「……うん」


 こくん、と小さくフィレナは肯定の頷きを返して来た。

 婚礼って――お前とバステアスの結婚なのか!?


「な、何で! いきなり過ぎだろ!」


 それとも実は小さい頃から知り合いで、元々そう言う話があったりしてたのか!? よく考えりゃお姫様と王子様な訳で、おかしくはないけど……!

 いやでも、レトラスとククルスエイジに国交が可能だったとは思えないぞ!?


「い、いきなりだけど、悪くない話だと思うの。レトラスとククルスエイジを統合して、そうすれば――」

「俺達は一緒に魔と戦えるだろ?」

「っ!」


 目を眇めて笑ったバステアスと、僅かに、耐えるように拳を握ったフィレナとの反応で、判った。

 やっぱりフィレナの意志じゃない。


(条件だったのか……!?)


 俺達を助けるための。だったら、そんなの――。


(させられるか!)


 ついでに、フィレナが女で自分が男だからって、都合よく結婚で片を付けようとするのも気に食わない!


「そう言うわけだ。俺達は先に帰る」

「待て」


 立ち上がって待ったを掛けた俺を、バステアスは伏木層に振り向いた。


「何だ? 何か問題が?」

「大ありだ。そんな結婚認められるか」

「君に関係無いだろう、人間の結婚なんか。俺達は互いに納得している」


 納得とか言ってる時点で駄目だろ!

 王族だからそういう事もあるのかもしれないけど、でも安売りしすぎだろ、フィレナ!


「関係はある」

「ちょ、ハルト……。まさか……」


 俺の意図に気が付いたか、ルトラが引きつった声を上げる。流石だ。

 ここにネクスがいなくて本当に良かったと、今は切にもう。


「俺が彼女に惚れてるからだ」

「なっ!?」

「えっ!?」

「何と!?」


 バステアスを睨んで言った俺の言葉に、バステアスとフィレナ、ドルトバス族長が驚きの声を上げる。ルトラは顔を手で覆って盛大な溜め息。

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