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三国志新劉封伝~転生したら劉備の養子の側近だったので蜀漢の為にはたらきます~   作者: umenohoke


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第7話 常山の龍

「 叔誠、まだ腕が痛むか? 」


数日後、劉封が傷の癒えきらぬ高衛を連れ出したのは、練武場の端にある一角だった。

そこでは一人の将が、静かに槍を振るっていた。


無駄のない動き。

白銀の穂先が空を切り裂くたび、鋭い風の音がここまで届く。


「 ……趙子龍殿か 」


高衛は思わず呟いた。

趙雲、字は子龍。

前世の知識では「 不敗の猛将 」であり、劉備への忠節を貫いた完璧超人だ。

だが、実際に目の当たりにするその姿は、荒々しい張飛や威厳に満ちた関羽とは違い、どこか澄み渡った川のような静謐さを湛えていた。


「 子龍殿! 」


劉封が声をかけると、趙雲は滑らかに槍を止め、こちらを向いて会釈した。


「 これは若殿。……と、後ろにおられるのは高叔誠殿でしたか。先日の初陣、身を挺して若殿をお守りしたと聞きました 」


「 い、いえ……ただ必死だっただけで 」


高衛は恐縮して頭を下げた。

現代のシステムエンジニアだった自分が、この伝説の武人に名を覚えられているだけで心臓が跳ねる。


「 必死、結構なこと。戦場で最後におのれを助けるのは、技でも策でもなく、その『 必死の心 』です 」


趙雲の瞳は、どこまでも優しく、そして深い。


「 子龍殿、お願いがある。こいつ……叔誠を、少し鍛えてやってくれないか。俺を守ろうとして怪我をするようなお人好しなんだ。せめて自分の身くらい守れるようにしてやりたい 」


劉封の無茶振りに、高衛は肝を冷やした。


( 趙雲に稽古をつけてもらう? 贅沢すぎるが、大丈夫か……? )


だが、趙雲は嫌な顔一つせず、傍らにあった予備の木槍を高衛に放り投げた。


「 高殿。槍は『 真っ直ぐ 』が基本。あなたの心も、今はまだ迷いの中にある。迷えば槍はぶれ、敵に隙を与えます。……まずは突いてみなさい 」


「 は、はい! 」


高衛はぎこちなく槍を構えた。

前世の知識では、趙雲はこの後、長坂坡で劉禅(阿斗)を救い出し、劉封とは対照的に「 忠義の象徴 」として語り継がれる。


( ……この人の隣で、この人の戦い方を少しでも学べれば、俺は『 知識 』を『 知恵 』に変えられるかもしれない )


高衛は、震える手で槍を握り直した。

現代でキーボードを叩いていた時とは違う、掌に伝わる木の感触。


「 ……いきます! 」


放った突きは、趙雲に軽く受け流された。

泥臭く、無様に、何度も地面に転がりながら。

高衛は、後の「 劉封 」を支えるための、本当の意味での「 力 」を、常山の龍の背中から学び取ろうとしていた。

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