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48.ダンジョン探索

魔法学校は夏休みに入った。


マッテアとシエルは冒険者登録を済ませてから、本来冒険者がやるべき任務を何一つこなしていなかった。そのため二人はダンジョン探索に出かけることに決めた。


ダンジョンの入り口は鬱蒼とした森の奥に隠されていた。


「暗すぎる……ここはきっとサタンの巣窟に違いない」

マッテアは壁にぴったり身を寄せ、その震える声が広くて薄暗い地下空間に響き渡った。シエルは冷静にたいまつを掲げ、二人の進路を照らし続けた。


「うわあああ、緑……緑色だ、シエル、これは何?」


マッテアとシエルがダンジョン内を進んでいると、突如六体のスライムが四方八方から飛び出してきた。体は透明で淡い緑の光を放ち、まるで緑色の粘液の塊のように見える。スライムたちは瞬く間に二人を包み込み、前後から挟み撃ちの形を作り上げた。


「これはスライムというモンスター」シエルは落ち着いて告げた。「心配しない。弱い相手、私たちなら楽に討ち取れる」


マッテアはクロスボウを構えてスライムに矢を放ったが、的を外してしまった。


「ちくしょう!」マッテアは腹立たしく罵った。「この粘液の化け物、よけるのが上手すぎて狙いが定まらない。姿もぐにゃぐにゃして、腐った泥みたいだ。こいつら、本当にサタンの手下じゃない?」


「スライムには通常の物理攻撃は通用しない」シエルは話しながら、ダンジョン探索用にわざわざ購入した、魔獣の骨で作られたナイフを抜いた。彼女は鮮やかに身を翻して一振りすると、背後から不意打ちを仕掛けようとしたスライムを一匹討ち取った。続けて、飛びかかってマッテアを襲おうとしたスライムの正面を突き刺し、もう一匹もあっけなく消滅させた。それから何か思い出した様子で、マッテアに呼びかけた。「そうだ、スライムのよだれに気をつけろ」


「よだれ?」マッテアは疑問そうに顔を向けた。


「スライムのよだれには腐食性があり、服を溶かしてしまう」


だが、シエルの注意喚起はすでに手遅れだった。その瞬間、一匹のスライムがマッテアに向けてよだれを吐き出し、見事に命中した。


「うわあああ!早く言ってよ!」マッテアは絶叫を上げた。腹部の布地はよだれの腐食作用で瞬く間に溶け落ち、平らな下腹があらわになった。その様子を目にしたシエルの瞳には、わずかな興奮の色が過った。


「ちくしょう……宣教師である私にこんなことをするなんて!剣をとる者はみな、剣で滅びる。消えろ、消えてしまえ!」


怒りに燃えたマッテアは、マーガレットが誕生日プレゼントとして贈ってくれた美しいナイフを迷いなく抜いた。このナイフは上位魔獣を素材に作られた逸品。マッテアは罵りながら、残りのスライムを一匹残らず全滅させた。


スライムたちを討ち果たしたマッテアとシエルは、さらにダンジョンの奥へ進んでいった。二人は広々とした大ホールに辿り着くと、豚の顔を持つコウモリの群れが一斉に飛びかかってくるのが目に入った。これらのコウモリは長い牙と血のように赤い瞳を備え、見るからに獰猛。


「シエル、この得体の知れないコウモリは何の化け物?」


「これはコウモリ・ボアというモンスター。人の血を非常に好む」シエルは話しながら、手に持つナイフを振り回した。


「まずい、数が多すぎる」

マッテアがナイフを一振りするたび、コウモリ・ボアが血を流して上空から墜落していく。地面にはモンスターの死骸が山積みとなり、血生臭い気配が空気に充満した。マッテアはシエルと背中合わせになり、焦りを隠せずつぶやいた。「撤収!」


シエルは即座に意図を汲み取り、二人は素早く分かれ道へ駆け込んだ。コウモリ・ボアたちが追いかけてきた瞬間、マッテアはシエルに叫んだ。「やれ!」


瞬く間に火炎放射系のアイテムから灼熱の炎が噴き出し、群れのコウモリ・ボアはすべて丸焦げになった。


「すげい!」闇夜が炎に照らされて昼間のように明るくなる様子を眺め、マッテアは思わず感嘆した。「だけど、使い捨てのアイテムにしては値段が高すぎる!」


ここにマッテアとシエルが金を稼いだ経緯を挿入する。


「これだけあれば足りるだろう?」シエルはガラスの試験管が一杯詰まった盆を掲げ、マッテアに問いかけた。


「十分だ」マッテアは盆の上に整然と並ぶ試験管を一瞥し、満足げに頷いた。「だけど」マッテアは盆から1本の試験管を取り、調合したばかりの液体を慎重に注ぎ入れながら続けた。「睡眠薬の素材、思ったより値段が高い。もし高値で売れなかったら、村長が次に送金してくるまで、二人で土を食べて過ごすしかない」


読者の想像通り、二人が睡眠薬の素材購入に充てたお金は、食費から捻出したものだ。


「魔法学校の錬金設備が使えて本当によかった」シエルが言う。「これがなければ素材を買っても調合する術がなかった」


出来上がった睡眠薬を携え、マッテアとシエルは各種薬剤を扱う店へと向かった。


「オーナー、睡眠薬を売りたい。」マッテアはカウンターにリュックを置き、ゆっくり中身を開けると、100本の睡眠薬試験管が姿を現した。


オーナーは1本の試験管を手に取り、丹念に目視で確かめたあと、鼻から距離を取って栓を抜き、手のひらで揮発した気体を扇いで鼻元へ運び、匂いを嗅い。


「1本につき小銀貨3枚」オーナーは悠々と告げた。


「4枚」マッテアは値切ろうとした。


「3枚は3枚。値切りは一切受け付けない。嫌なら他の店に持っていっても構わない」


マッテアは頭の中で素早く計算した。1本3枚、10本で30枚、100本なら計300枚。睡眠薬の素材購入にかかった費用は小銀貨計100枚。つまり、原価を差し引いて純利益は200枚となる。


「取引成立」マッテアはあっさり承諾した。


薬を売り終えた二人は、魔法アイテム専門店へ足を運んだ。


「オーナー、これはいくら?」シエルは店内に陳列された風変わりなアイテムを手に取り、尋ねた。


「これは火炎を噴射できる魔法アイテム。価格は小金貨1枚」オーナーが答えた。


「小金貨1枚!」マッテアは仰天した。「それって小銀貨100枚相当ってこと?」


「その通り」オーナーは頷いた。


「使用回数は何回?」シエルが追質問した。


「1回限り」


「高すぎる」シエルは首を振った。


「値段はずっとこのままだ」


オーナーが一歩も譲らない態度を見て、シエルはマッテアを脇へ引き寄せ、耳元でささやいた。


「少し、安くしていただけませんか?」マッテアは儚げで愛らしい表情でオーナーを見つめた。


オーナーは、平和の聖女に女神が授けた祝福の魅惑に抗えなかった。葛藤の末、心痛そうに言った。「九割引にしてやる。小銀貨90枚でいい」


「作戦成功」シエルは胸の内でほくそ笑み、腹黒い笑みを浮かべながら思った。「どうやらオーナーは除呪アイテムを携帯していないようだ。それに、マッテアの顔も効いたのかもしれない」


一方マッテアは心の中でツッコミを入れた。。「シエルめ、私に宿る『サロメの魅惑』の使い方がどんどん上手くなってきた」


魔法アイテム専門店を後にしたマッテアとシエルは、武器と防具を扱う店へと向かった。店内でシエルは魔獣の骨で作られたナイフを一丁購入し、代金として小銀貨100枚を支払った。


魔術付きナイフを選ばなかった理由は、魔術を施された武器や防具には使用期限が定められているからだ。通常の有効期間は約三年で、三年ごとに再び魔術を付与し直さなければならない。それに対し、魔獣の素材で作られた武器・防具には、こうした欠点が存在しない。


コウモリ・ボアを撃退した二人は、さらにダンジョンの深部へと進み続けた。すると前方から、武器を手にした三つの人影が大股で悠然と向かってくるのが見えた。


「シエル、あれ」マッテアは前方の敵を指差した。「あの背が低く緑色の肌をした怪物は何?この風貌、きっとサタンの手下に違いない」


「あれはゴブリンだ」シエルが答えた。


「サタンの手下ではない?」


「違う。ごく一般的なモンスターの一種」


「こいつら強いの?武器まで持っているし」


「ゴブリンの身体能力は普通の人間と同程度」


その時、一体のゴブリンが大剣を振り回し、まっすぐマッテアへ突進してきた。次の瞬間、シュッと矢が飛び、モンスターの体を貫いた。


「物理攻撃が通用するなんて」マッテアは驚きを隠せなかった。


シエルの矢に貫かれたゴブリンは苦痛の絶叫を上げ、顔から地面に崩れ落ち、緑色の体液を流し始めた。


「血が緑色だなんて、やっぱりサタンの手下に相違ない」


「ゴブリンはスライムと違い、通常の物理攻撃でもダメージを与えられる。それと、ずっと聞きたかったんだけど、マッテアが何度も口にするサタンとは一体何者?」


「サタンは何かの物体じゃない、サタンはサタンそのもの」


「何も説明してないじゃん!聞いてしまった私がバカだった。」


仲間が目の前の人間に瞬殺されたのを目の当たりにした残り二匹のゴブリンは勝ち目がないと悟り、狼狽して逃げ出そうと背を向けた。だがシエルはクロスボウを構え、ゴブリンの背中へ矢を二本連続で放ち、二匹とも討ち取った。


もちろん、マッテアとシエルは道中、モンスターの死骸を回収することを怠らなかった。死骸はすべて売却して換金できる素材となるのだ。

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