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恋した魔女の中で生きる  作者: 菜乃音
第二章

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39 魔女に見惚れる筋肉の時間

 テーブルに並んだ料理を前にして、俺はマナミと向き合って座った。

 いつものように果実をメインにした料理を、口に運んでいく。

 どれもこれも、マナミが島を守っているからこそあるもので、マナミ無くしては生まれていなかっただろう。


「そういや、マナミ。この後はどうするんだ?」


 普段なら、マナミに予定は聞かない方だ。

 予定。それは、この島で云うなら時間を意味する可能性があると思っていたからかもしれない。

 今になって聞けるのは、普段よりも遅く起きたのが原因だ。


 今更感こそあるが、マナミが普段何をしているのか知らないからこそ、俺は気になったに過ぎない。


 マナミは焼いた果実を齧ってから、少し考える様子をみせた。


「クロジはどうするの?」

「質問を質問で返すなよ。……俺かぁ」

「律儀に答えるの、クロジだね」

「やっぱり、筋肉を鍛えるかな」

「なんて?」

「筋肉をき――」

「何をするの?」


 マナミは意地でも答えさせたくないようで、聞こえていないフリをしているようだ。

 無理に答えを出そうものなら、テーブルに並ぶ覚悟が必要になりそうだ。


 少し圧がある笑みを浮かべるマナミを見ると、ほのかに表情を和らげていた。


「まあ、できることなら、マナミの付き人になったわけだし……マナミの、マナミの役に立ちたいかな」

「……もう。クロジは傍にいるだけで……役にやっているのに……」


 マナミが視線を下に向け、口パクをしているのは不思議な感覚だ。

 首を傾げたところで、マナミには見えていないだろう。


 口の動きで言葉を理解しようとすればできるが、生憎、この世界の用語までは理解できない。

 筋肉頼りだったのは、ある意味仇となっている。


 分からなくてもいい言葉かもしれないが、マナミを知りたい……それが、今は全てだと言えるからだ。


 余計なお世話になると感覚では知っている。

 それでも俺は、役に立ちたい、そう思ってしまうんだ。


 マナミは顔を上げて、俺をじっと見てきていた。


「く、クロジには関係のないことだけど……その、今日は……」


 マナミが急に頬を赤くするものだから、見ている方も恥ずかしくなりそうだ。


「王国に出向く予定があるの。だから、クロジもついてきて」


 関係のないこと、とマナミは言いつつも誘ってくるので、やはり魔女の中でも頭一つ抜ける優しさを持っているのではないだろうか。


 最後に顔を出したのは宴の時くらいだったし、エルリッシュ王の忙しい姿を見るためにも出向くのはありだ。


 とはいえ、マナミが何をするために国に出向くのかは気になる。


「あのフルティンキングダムに行くのか、珍しいな」

「また言ってる」


 半ば呆れられているが、心の中では国と思っているのでマシだろう。

 マナミが目を細めて見てきたところで、俺の考えが変わるわけもないが。


「その、クロジ、この先の知らないことみたいな話を、大魔女様と言ってたから……」

「マナミって優しいよな。ああ、優しい、俺が保証する」

「勝手に話進めない」


 それは受け取るけど、と照れながら口にするマナミは、素直じゃないものだ。

 素直じゃないマナミも、一つの感情表現としてはずっと見ていたい気もするが。


 ――感情……。


 俺はふと思いかけたが、楽しそうにしているマナミに水を差す気はないから、口にするべきではないだろう。


「まあ、俺はマナミの付き人に昇格したんだ、気安く使ってくれよな」

「なんで逆じゃないの?」

「召し使いはほら? 雑用だから気安く使う以前に、権利が無いだろ?」

「クロジ。そういうところドライ」


 まったりと言われるのも困るが、軽く分けるのだって大事なことだ。

 バッサリ切るときは切る、突っ込むときはしっかりと突っ込む、その思い切りが時には大事な場面だってある。


 俺の場合は、ほとんど全て値している気がしなくもないが。


「今日は王国をクロジと見てから、エルリッシュにちょっとだけ用があるくらい」

「先に言えよ、それ」

「クロジ。結果だけを見ていない時があるのに、こういう時は結果を見る」

「間を取るのは苦手だからな」

「それ、付き人としては治すこと」

「……分かった。じゃあ、マナミに恋をしてもらえるようになると思うからな」

「……クロジの喜怒哀楽、たまについていけない」


 マナミを謎に疲弊させた気もするが、仕方ないだろう。

 国に行くとなれば、マナミがドラゴンから守る使命に狩られそうだが、それもそれでマナミをよく見る機会の一つかもしれない。


 俺がマナミを見ることに意識を割いているのは、俺自身、どこか今のマナミに思うところがあるからだ。

 勿論、あの力と向き合おうとしているマナミの姿勢に手を貸したいのもあるが、マナミ自身が見えない部分を俺が見ておきたい、ただのエゴだ。


 筋肉が俺にやっていたように、今度はマナミにやってあげるのも悪くないだろう。


 軽く微笑んでいただけなのだが「なんで笑ってるの?」と首を傾げたマナミは何とも愛らしかった。


「食べ終わったら、準備をして出発する」

「そうだな」


 俺はマナミと、国に行くだけなのに、どこか楽しくなっていた。

 二人きりになるわけではないのに、むず痒い気持ちがあるのはどうしてなのだろうか。

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