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英雄くんはおうちに帰りたい  作者: ホッシー@VTuber
第六章 逾槫ョちゃんは誰かに祈りたい
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第413話 入院

「だから言ったでしょう!! あなたは怪我人なんだから無茶するなって! なのに言うこと聞かなくて、結局、悪化してたじゃない!! もちろん、私たちもあなたの優しさに甘えちゃったところは悪いけど、それでもやっぱり――」

「――ここは病院だ。もう少し声を抑えろ」

「むぅ……いい? 入院中は絶対に安静だから! ね!!」

「あ、はい」


 ノンの怪我が悪化していたと判明してから少し経った頃、用意された個室でガミガミとアレッサはノンを叱っていました。そのあまりの剣幕に腕を組んで見守っていたグレイクが思わず割って入るほどです。なお、ガレスはノンの調子を聞いた後、今日中に終わらせなければならない用事があったため、すでにこの場にはいません。


(やっちゃったなぁ)


 ハンモックによる揺れの軽減。包帯による体の固定。筋肉を定期的に動かすリハビリ。消化のいい食べ物の摂取。考え得る対策は行いましたがそれでも不十分だったようです。


 なにより、骨折が治り切っていなかったのが予想外でした。通常であれば骨折が完治していない場合、リハビリをした時点で痛みが走るからです。もちろん、リハビリをする前に体を動かして調子を確かめてみました。その時は特に痛みもなく、てっきり骨折は治ったと思っていたのです。


 しかし、痛みはなかったはずなのに骨折は治り切っていなかった。先ほど検査してくれた羊の角が特徴的な獣人の誤診? いいえ、違います。単純に痛みを感じにくく――痛みに強くなっていたと考えるべきでしょう。


(でも、なんで急に……)


 前世の闘病生活で痛みには慣れています。慣れてはいますが何も感じないというわけでなく、普通であれば悲鳴を上げるほどの痛みでも歯を食いしばって我慢することができる、という程度。しかし、今回の場合、本来、感じるはずだった痛みがなかった。まるで、痛みに耐性ができたような――。


「ノン? 聞いてる?」

「え、あ、はい。聞いてます」

「……はぁ」


 痛みに関して考えているとアレッサがジト目を向けていることに気づき、慌てて頷きます。ですが、話を聞いていなかったことなど彼女にはバレバレのようで深いため息を吐かれてしまいました。


「とにかく種王会議が始まるまで大人しくしてなさいよ」

「はーい」

「まったく……じゃあ、私たちはそろそろ宿に帰るわ。また明日ね」

「大人しくしてろよー」

「お大事に」


 あまり長居するのもノンの体に障ると思ったのか、アレッサたちは部屋から出ていきます。先ほどまで賑やかだった部屋が急に静かになったからでしょうか。少しだけ寂しさを覚えました。


「はぁ……」


 気づけば思わずため息を漏らしていました。考えるのはやはり、痛覚の変化について。旅を始めて早五か月半。その間にこういったこと――知らない間に自分の体が書き換えられてしまったようなことが何度かありました。


 例えばヒュドラの毒刃。最初に毒が体内に混入した時は瀕死まで追い込まれたはずなのにそこからの回復。そして、その後に右腕に刺さったのに一切、毒の影響を受けませんでした。


 また、王都で魔族ヴァアロと戦った後、身体能力や包帯操作など自身の能力が目に見えて向上。アレッサも理由がわからず、不思議そうにしていました。


「……」


 自分の身に起きている異変。その原因も、考えられる影響も、何もかもが不明。だからこそ、ノンは少しだけ不安になってしまいます。今のところ、プラスに働いているこの現象が今後、自分や仲間たちに悪影響を与えてしまうかもしれない、と。


「失礼します」

「……? どうぞ」


 そんな思考を止めるように控えめなノックと扉越しに聞こえる声。幼く聞こえたそれにノンは首を傾げ、入室の許可を出します。


「……え?」


 部屋に入ってきた人物を見て彼は思わず声を漏らしてしまいました。てっきり、獣人が入ってくると思っていたのに彼女の頭には獣耳がなく――


「調子はいかがでしょうか?」


 ――その代わりに先端が鋭く尖った耳が生えていたからです。

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