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英雄くんはおうちに帰りたい  作者: ホッシー@VTuber
第六章 逾槫ョちゃんは誰かに祈りたい
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第412話 馬車

「おーい、いるかー?」


 荷物を置き終えたグレイクたちも合流し、馬車の荷台で待機していたノンたちですが不意に外からガレスの声が聞こえました。時間は午後二時。宿に着いて一時間ほど経っています。


「はーい」

「おー、病院の方もなんとかなったぞ。とりあえず、こっちの馬車に移ってくれ」


 その声にノンが荷台から顔を出すとガレスが後ろに停めている馬車を指さして笑いました。その馬車はノンたちがダレッツで借りた物よりも大きく、立派な装飾も施されています。


「立派な馬車ですね」

「ああ、俺専用の馬車だ。本当は走った方が早いんだが、護衛たちがついてこれなくてな」

「そもそも王族が一人で出回るもんじゃないわ……ん?」


 ガハハ、と豪快に笑うガレスにアレッサはジト目を向けました。そして、宿の周囲が少し騒がしいことに気づきます。どうやら、ガレスの馬車を見た街の人たちが何事かと集まってきているようでした。


「これ、急いで移動した方がいいわね。ガレス、私たちも乗っていいの?」

「もちろん、この街にいる間、ノンのお見舞いに行くだろ? 遠慮せずに乗りな!」


 彼女の質問にガレスも頷いたことでノンたちは急いで彼の馬車に移動します。中は大人と子供が三人ずつ乗っても窮屈さを感じないほど広く、座席もふわふわでした。


「おー、すげぇ!」

「わぁ!」

「そうだろ! やっぱ、馬車はケツが痛くなるからな! その座席は特に気合入れて作ってもらったんだ!」

「はぁ……そろそろ動くぞ。座れ」


 特にアゼラとミアは座席の柔らかさに驚いたようできゃあきゃあと騒ぎ始めます。普通であれば静かにしなさいと咎めるところですが持ち主であるガレスが気にしていなさそうなため、グレイクはため息を吐くだけに留め、着席を促しました。


「……なぁ、本当にそれで大丈夫なのか?」

「はい、意外と寝心地がいいんですよ」


 因みに怪我人であるノンはガレスに許可を取り、ハンモック状態となって体を固定しています。その姿を見たガレスはどこか引いた様子で問いかけますがゆらゆらと揺れながら笑うノン。目には見えませんが四方に立てた包帯の柱でバランスを取っているため、ハンモックは見た目以上に揺れていません。


(でも、大変だったなぁ……)


 実は日々、手足のように包帯を操作していたノンですが、獣都までの旅を始めた頃はなかなかに苦労をしました。ハンモックの操作が思った以上に難しく、馬車が揺れる度に体に激痛が走ったのです。これまで毎日のように包帯操作の練習をしていたため、揺れを軽減できなかった時は少しだけショックを受けたのは内緒。


 それからノンは痛みに耐えながらハンモックの操作練習をして今では痛みを感じなくなりました。そのおかげで今まで以上に繊細な包帯操作ができるようになったのです。


「まぁ、いいか。じゃあ、病院に向かうぞ」


 ガレスの合図で馬車が出発するとノンのハンモックがゆらゆらと揺れ始めました。その光景を見て再び変な顔をしたガレスですが、ノンが平気な顔でアゼラと話し始めたので何も言わずにその風景を眺めます。


「病院かー。ノンの怪我、酷くなってないといいな」

「うん、結局、色々やってもらっちゃったし」

「もう心配しすぎだって。ほら、こんなに揺らしても痛くないんだし」









「悪化してますね。本来、くっついてるはずの骨が不完全のままでした。また、報告にあった内臓の損傷も予定よりも治りが遅いです。馬車の旅を一か月半ほど続けてたからといってここまで酷いことなるなんて……」

「……」


 悪化していました。

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