第414話 看護師
「私は入院中、ノン様のお世話をさせていただく、ユニエラと申します」
ぺこりと頭を下げたノンと同じくらいの年齢に見える少女、ユニエラ。部屋の窓から差し込む日差しを受け、キラキラと輝く白に見えるほど薄い金髪と透き通るような翡翠色の瞳が特徴的な女の子です。しかし、最も注目するべきところは彼女の耳の先端が尖っていることでしょう。獣人ではないのは確実ですが、ノンは彼女の種族に心当たりがありました。
「エルフ?」
「はい、ノン様は人族。今、獣人族は人族にいい感情を持っておりません。そのため、エルフ族の私が貴方様のお世話をした方がいいと先ほど決まりました。未熟者でございますがよろしくお願いいたします」
そう言って優しく微笑むユニエラ。精霊の国で種族のことを学んだ時、エルフ族の特徴も教えてもらいました。その際にエルフ族は決まって美しい容姿を持って生まれて来るそうです。
「……」
もちろん、ユニエラも例外ではなく、幼い容姿ながら思わず見惚れてしまうほどの美しさを持っていました。そのせいでしょうか、ノンはポカンとしてしまい、言葉を失ってしまいます。
「ノン様?」
「ッ! あ、はい! こちらこそ、よろしくお願いします!」
「はい、よろしくお願いいたします」
彼女に声をかけられ、正気に戻ったノン。慌てて返事をするとユニエラは安心したように笑みを浮かべ、部屋の外に置いておいたカートを持ってきました。
「今日から入院ですが、不安な点等はありますか?」
「今のところ、特にありません」
「かしこまりました。何かあったらこちらのベルを鳴らしてください」
そう言って彼女が差し出したのは子供の掌に乗るほど小さなベル。それを受け取り、軽く振ってみるとチリーンと綺麗な音が鳴りました。
「ありがとうございます。また、一日のスケジュールですが、食事は朝七時、正午、夕方六時。消灯時間は二十一時です」
「わかりました」
「また、入浴に関しては僭越ながら私がお湯で体を拭かせていただきます」
「あ、それに関しては自分でできますよ」
「しかし、ノン様は複数の骨折と内臓が傷ついていらっしゃいますよね? 腕や胸はともかく背中を拭くのは難しいのでは?」
可能な限り、自分のことは自分でやろうと自分で体を拭けると伝えたノンですがユニエラはキョトンとした表情で聞いてきました。確かにこれだけの重傷を負いながら背中に手を回すのは難しいでしょう。
「僕にはこれがありますから」
「まぁ!」
そう言って彼は入院着の袖から包帯を伸ばします。それを見たユニエラはどこか目を輝かせながら声を漏らしました。
「包帯型の魔道具なんです。結構、細かい操作もできます」
「そうだったのですね。しかし、そういった魔道具は魔力の消費も激しいのでは?」
「僕、魔力量には自信あるんです。だから、心配ないですよ」
「そうでしたか。承知いたしました。それでは体を拭くためのお湯を運ぶだけに留めます。お湯が欲しい時はベルでお呼びください」
「はい、ありがとうございます」
それから彼女は部屋の細かい使い方をノンに伝え、体温計で熱を測ったり、体の調子などを聞いて紙にメモを取り始めます。ですが、今日はすでに医者の診察を受けたため、簡単なやり取りしかせず、ほんの十数分ほどで終わりました。
「朝の食事を運んだ際、その日の予定をお伝えいたします。ノン様は怪我を治すことだけを考えてくださいね」
「何から何までありがとうございます。これからよろしくお願いします」
「はい、それでは失礼いたします」
ユニエラはぺこりと頭を下げた後、器具が乗ったカートを押して部屋を出ていきます。いきなり、エルフ族と出会うことになるとは思いませんでしたがとても優しそうな人だとノンは少しだけ安心しました。
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