第385話 激怒
「ぐっ」
全ての元凶である魔族、バンデルが放った魔力。その凄まじい威圧にグレイクは顔を歪めてしまいます。ノンとアレッサから魔族の話は聞いていましたがその実力は予想を遥かに超えていました。
しかし、それでも彼は弓を降ろしません。魔族はこちらを殺すつもりでいる。グレイクたちを殺してしまえば闇ギルドの思惑は獣人側にばれない。むしろ、ガレスがここで死ねば人間に襲われ、相打ちになった、とバンデルが噂を流し、人間との関係にトドメを刺すことでしょう。
「さぁ、どこからでもかかってきなさい。文字通り、あなたたちが死ぬまで付き合いますよ」
バンデルはすでに勝った気でいるのか、余裕綽々と言った様子で笑いました。魔族は死なない。つまり、グレイクたちが死ぬまで戦い続ける、ということです。
「ちっ」
ガレスもそのことを知っているため、面倒くさそうに舌打ちをしました。それに加え、彼の魔法は非常に強力であり、それを連射できることもわかっています。
そして、なにより魔族は頑丈なため、普通の攻撃ではまともにダメージを与えられません。この中で有効打を持っているのは獣王であるガレスとノン、アレッサのみ。
そのうち、ノンはすでに先ほどの狙撃によって生死不明。小屋の下敷きになってしまったため、救出するのも時間がかかってしまいます。それをバンデルが見逃すわけもなく、後ろから魔法を撃ってくるでしょう。
「アレッサ、どうする?」
「……」
「……アレッサ?」
この後の動きを相談するため、隣に立つアレッサへと声をかけるグレイク。しかし、アレッサは無言でジッと小屋の方を見ていました。
「おい、どうした」
「……ごめん。ちょっと抑えられないかも」
「は? 何を――」
「――グレイクは援護。アゼラ、ミアは隙を見てノンを助けて」
「いや、それだけじゃ……ッ!?」
作戦会議、とは言えない一方的な指示。様子のおかしい彼女のグレイクはバンデルから視線を外し、隣を見て目を丸くしました。
「絶対に、殺す」
その顔はまさに鬼の形相そのもの。マジカルヤンキーの野蛮な表情とは違う、まさに怒りに満ちた顔。ノンが狙撃され、生きているかも怪しいこの状況で彼女が何に怒りを向けているのかは一目瞭然でした。
「じゃあ、よろしく――【雷人】」
そんなアレッサの激情を表現するように呪文を唱えた途端、彼女の体から凄まじい電流が迸り、周囲を焦がします。その激しさにグレイクは咄嗟にアゼラとミアを抱え、その場を離れました。
「こ、れは……」
顔を上げるとこれまでに見たどの喧嘩殺法魔法よりも激しく閃光を放つ雷を両手に纏ったアレッサがいました。そのあまりの激しさにいつものローブを着ていたらその雷によって袖は焦げていたことでしょう。
明らかに様子のおかしいアレッサにグレイクは奥歯を噛み締めます。完全に我を忘れている。これでは先ほどのガレスと何も変わりません。
「おい、アレッサ! 落ち――」
「――ごぼっ」
「……は?」
まずは落ち着かせようとグレイクが彼女に声をかけた瞬間、その姿が消え、余裕ぶっていたバンデルが吹き飛ばしました。そのあまりの速度にこの場にいる全員が茫然としてしまいます。
「てめぇだけは絶対に許さない」
そんな彼らを放置して吹き飛んでいくバンデルを睨みつけながらアレッサは言葉を零すとそれに呼応するように彼女の両手から溢れる紫電がバチリと弾けました。
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