第384話 狙撃
やっとの思いでガレスと話し合いに持ち込んだ矢先、放たれた闇魔法。それは船上で飛んできた砲撃とは違い、速度を重視した――まさに特定の一人だけを殺すためだけに放たれた狙撃そのもの。
狙いはガレスだったのでしょう。それにいち早く気づいたノンが彼の体を押して庇った。ですが、その狙撃はあまりにも速く、そのままガレスの代わりに彼の体へ直撃したのです。小さな男の子はその威力に吹き飛ばされ、これまでの戦いでほぼ半壊していた小屋へと激突。その衝撃で小屋はガラガラと音を立てて崩れ、その下敷きになってしまいました。
「ッ――」
その光景をアレッサはただ見ているしかありませんでした。油断がなかったとは言いません。それでも魔力感知には気を配っていましたし、戦いが終わった後に奇襲を仕掛けてくることは十分考えられました。だから、いつでも動けるようにしていたのです。
しかし、爪が甘かった。まさか、あの全てを飲み込むほどの強大な砲撃ではなく、速度を重視した狙撃をしてくるとは考えもしませんでした。
隣に立つグレイクが瞬時に弓に矢を番え、密林へと放ちます。それから数秒後、ガキン、と矢が弾かれる音がしました。
アゼラとミアは大槌と杖を構え、顔を青ざめさせながら密林を警戒しています。きっと、狼狽せずに思考を切り替えられたのはアレッサとグレイクとの訓練の賜物でしょう。
ガレスは奥歯を噛み締め、その場で構えて密林を睨みつけていました。あの狙撃は本来、ガレスが受けていたもの。それをノンが助けてくれたのです。獣王である彼が小さな男の子に助けられた。それが悔しいのでしょう。
そんな中、アレッサは――ジッと、ノンが吹き飛ばされた小屋を眺めていました。
「おや、外しましたか」
その時、密林の方からこの空気にそぐわない穏やかな男性の声が聞こえます。アレッサを除いた全員がその闇の奥へ目を向けるとゆっくりと人間の男性が現れました。
「こうやって顔を合わせるのは初めましてですね」
「誰だ、てめぇ……いや、そもそも人間じゃねぇな」
「おやおや、気づくのが早いですね。さすが獣王」
いきなり姿を見せた男性にガレスが問いかけ、すぐに目を細めてそう指摘します。しかし、その男性は特に気にした様子はなく、肩を竦めて苦笑いを浮かべました。
「改めてご挨拶を……私はバンデル。魔道具職人、というのは人間の時に肩書でした」
そう言った後、男は白い手袋を嵌めた手で顔を隠して――それを退けると肌色だった肌が青色に変化していました。
「魔族!?」
「はい、ご名答。人間の魔道具職人は魔族だったのです――っと」
自己紹介を終えたバンデルですが、飛んできた矢を右腕で弾きます。もちろん、放ったのはグレイク。アゼラとミアもいつでも動けるように身構えていました。
「……やはり、知ってましたか」
「ああ、闇ギルドと繋がっていることも……この獣人誘拐事件の首謀者だということもな」
「なんだと!?」
グレイクの言葉にガレスが目を見開きます。獣人誘拐事件は人間が起こしたと思っていたからでしょう。そして、そう思わせることこそ、魔族の狙いでした。
「まったく、ヴァアロがあの子供と魔法使いの女を殺せなかったのが悪かったですね。ですが、構いません。どうせ、ここで全員殺せばいいんですから」
バンデルがそう言った直後、目の前に立つ魔族から凄まじい魔力が放出されました。
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