第360話 予感
船の旅が始まって一週間。魔族の襲撃もなければノンの魔力感知のおかげで海に生息する魔物との遭遇も事前に回避できているため、平和な時間を過ごしていました。
「あ、船長さん。この先に大きな魔力反応があります。少し進路を変えた方がいいかもしれません」
「お、おう……」
「じゃあ、お願いします」
今日も怪しい魔力反応を見つけたノンは操舵室に入った途端、船長に端的に用件を伝えたノンは仕事の邪魔にならないようにそそくさと部屋を後にします。しかし、この一週間の間に何度か魔物を避けるために進路を変えているため、予定よりも遅れていると昨日の夜に船長から報告がありました。この調子で進路を変えていれば数日ほど遅れて到着するそうです。
(確実に魔物ってわかればなぁ)
あくまでノンは大きな魔力反応を感知することしかできず、その反応の持ち主が魔物なのか、魔力を持つ通常の生物なのかわかりません。そのため、これまでに進路を変えなくてもいいタイミングはあったでしょう。
「んー……」
「お、ノン」
とりあえず、船員の手伝いをするために甲板を目指して歩いていると難しい顔をしたアゼラが歩いてきました。彼もノンの存在に気づき、いつもの元気な笑顔を浮かべて手を上げます。
「どうしたの?」
「ん? あー、いや……ちょっと気になることがあって」
「気になること?」
普段、細かいことは気にしない性格であるアゼラがここまで悩むのは珍しく、ノンは詳しい話を聞こうと更に質問を重ねました。
「……変なこと聞くけどこの先ってあんま行かない方がいいような気がすんだよ」
「……え?」
「いや、おれもなんて説明したらいいかわからないんだけど嫌な予感がするっていうか。うーん?」
彼の言うとおり、言葉で説明するのが難しいのでしょう。アゼラは腕を組んでうんうんと唸り始めてしまいました。
「……」
しかし、アゼラの嫌な予感にノンは心当たりがありました。そう、先ほど船長に忠告した大きな魔力反応です。
「ん? あれ、もしかして進路、変わった?」
「え? なんで?」
そして、唸っていたアゼラがキョトンとした様子で確認してきました。もちろん、考えることに集中していたノンは思わず聞き返してしまいます。
「いや、嫌な予感がする方向が変わったから」
「……本当だ。因みにどっち?」
「あっち」
彼の言葉に慌てて魔力感知に意識を向けると大きな魔力反応がある方向が変わっていました。おそらく、船長がノンの忠告を信じて進路を変えたのでしょう。問題はアゼラが嫌な予感した方向とノンが感知した魔力反応の方向がドンピシャで重なったことです。
「アゼラ、なんでわかったの?」
「うーん、なんていうか……あ、やばいなって頭に浮かんだっていうか」
「……ちょっとグレイクさんに相談しに行こうか」
「お、おう?」
一つだけ思い当たる節があったため、ノンはアゼラを連れて甲板に向かいました。この時間、グレイクは念のために甲板に出て周囲の警戒をしているからです。
「グレイクさん」
「ん? お前たちか」
予想通り、甲板にグレイクの姿があり、ノンは話しかけました。海の向こうを見ていた彼はノンとアゼラに気づき、視線を彼らに向けます。
「実は――」
それからグレイクにアゼラの異変について話しました。話を聞いている最中、特に反応を見せなかった彼ですが、最後にノンの魔力反応を感知した場所と合致していることを聞くとピクリと眉を顰めます。
「それは、本当か?」
「はい、間違いありません」
「……それで、ノンはどう見ているんだ?」
グレイクも何か思い当たる節があるようですが、それを言う前にノンに答えを求めました。おそらく何もわかっていないのは当事者のアゼラだけでしょう。
「……何かしらのスキルじゃないでしょうか?」
そして、そんな彼を置いてノンが考え付いた答えを口にしました。
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