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英雄くんはおうちに帰りたい  作者: ホッシー@VTuber
第五章 英雄くんは獣人たちと和解したい
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第359話 定数

「はい、これ」

「あ、ありがとうございます……うわぁ」


 次の日、アレッサはミアに一冊のノートを渡しました。おそるおそる受け取った彼女はそれを開き、少し引いた様子で声を上げます。気になったノンは横からノートを見てびっしりと書かれた計算式らしき文字列に顔を引きつらせました。


「なかなかの傑作よ。これを読めば誰でも魔力放出が上手くなるわ!」

「そ、そうなんですか……」


 満足げに腕を組みながら胸を張るアレッサにノンは愛想笑いを浮かべます。正直、ノンはこの文字列の意味がわからず、魔力放出が上手くなるとは思えませんでした。


「……」


 しかし、ミアは真剣な様子でノートをじっくりと読み始めます。ページをめくる速度はとても遅いですが、それでも確実に先に進んでいることからこの計算式を理解しているのでしょう。


「アレッサさん、すみません」


 十数分ほどノンたちに見守られながらノートを読んでいたミアですが、唐突に顔を上げてアレッサに声をかけました。


「どうしたの?」

「この計算式に使われてる魔力量の定数が具体的にどれくらいなのかわからないんですが……」

「定数?」


 もはや子供の口から出てこないような言葉にノンは思わず口を挟んでしまいます。


「この計算式って一定の魔力量を定数に置き換えて使ってるのよ」


 例えば、『一』という魔力量を『x』と置き、様々な計算式に組み込んでいます。つまり、その『x』という魔力量さえわかれば計算式の答えが導き出され、魔力がどのような形で放出されるかわかる、という仕組みでした。


「あー、それに関しては感覚の問題なの……一応、これぐらいなんだけど」

「えっと、これぐらい?」


 そう言ってアレッサは目の前にほんの少しだけ魔力を放出します。それを魔力感知で探ったミアも見様見真似で魔力を放出しました。


「まぁ、だいたいそれぐらいなんだけど……誤差があると計算式も狂っちゃうの。だから、ここを妥協すると今後、必ず詰まるわ」

「うーん、どうしよう」


 魔力は目に見えないため、アレッサが定義した魔力量を掴むまで手探りで試すしかありません。ですが、アレッサ自身もミアが放出した魔力量を正確に把握することはできないため、多少の誤差は生じてしまうでしょう。


「ミア、少し魔力量が多いかも」

「え、ノン、わかるの?」

「はい、魔力感知で二人の魔力量を比べたので」

「そう……ノンの魔力感知の精度は桁違いだから私以上に正確に魔力量を比較できるかも。ミア、魔力量を少し減らしてみて」

「は、はい!」


 アレッサの指示に従い、ミアは放出していた魔力量を減らします。それを魔力感知で探り、アレッサとの魔力量を比較しました。


「今度は減らしすぎかも。ゆっくり増やしてみて。丁度いいところで止めるから」

「うん」


 ノンの言葉に頷くミア。そして、慎重に魔力量を増やしていきます。


「……ストップ!」

「ッ!」


 アレッサとミアの魔力量が一緒になった時、ノンが止めました。その声に合わせてミアも魔力量を増やすのを止め、その量を維持します。


「……ほんの少しだけ減らして」

「この、くらい?」

「うん、これで師匠が放出してる魔力量とほぼ一緒になったよ」

「私も確認したけどこれならバッチリよ。この魔力量を基本として計算式に組み込んで魔力放出してみて」

「わかりました!」


 あれほど詰まっていた魔力放出ですが、ノンとアレッサの協力のおかげで先に進めたからでしょう。ミアはやる気に満ちた笑みを浮かべてアレッサの言葉に頷きました。

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