↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第3次パワフル転生野球大戦ACE  作者: 青空顎門
最終章 転生野球大戦編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

480/505

362 比翼の鳥、連理の枝

【隠しスキル】【比翼連理】。

 それはイタリア代表の転生者であるルカ・デ・ルカ選手が取得していたことで初めて存在を確認したスキルだ。

 その効果は『真に心を通わせた伴侶とスキルを共有する。重複しているスキルは効果が1.5倍になる。スキルの重複は最大2つまで』というもの。

 破格の効果であるだけにWBWの前に是が非でも取得しておきたいスキルだったが、正確な発生条件が分からず半ば諦めていたものでもあった。


 勿論、最低限【マニュアル操作】を用いて確認することができる発生条件は、それこそルカ選手のステータスを通して把握してはいた。

 ただ、そこに記載されていたのは「伴侶と真に心を通わせること」という効果からも容易に想像できるような具体性の欠片もない文言でしかなかった。

 よくよく考えてみると【雲外蒼天】も数値で明確に発生条件を示していなかったし、あるいは【隠しスキル】の場合はそういうものなのかもしれない。

 恐らく俺達のような【マニュアル操作】持ちが、他人のステータス画面から即座に発生条件を把握することのないようにするためなのだろう。


 いずれにしても。

【比翼連理】の発生条件が単純に【好感度】だけの問題ではないことは、俺とあーちゃんが取得できていなかったことからも明らかだった。

 改めて発生条件を読み返してみても表記は変わっていない。

 なので考察の域を出ないが、現状を鑑みると【好感度】に加えて互いの野球選手としての信頼関係が関わっていると見て間違いなさそうだ。


 前世にはなかった……のかどうかは分からないが、少なくとも今生には確かに実在しているステータスやスキルといった要素。

 それらは俺達に可視化されている範囲ではあくまで野球のために存在している訳だから、取得可能となった今となっては野球が関わってくるのは当然かとも思う。

 しかし、そうなるとルカ選手は3人の女性選手達と私生活は勿論のこと、野球選手としての信頼関係もしっかりと築いていたことになる訳だが……。

 価値観は正直受け入れがたい部分が多々ある彼だったが、そういった部分ではある意味真摯(?)だったのかもしれない。

 ステレオタイプなイメージだが、愛に生きるイタリア人らしいと言うべきか。

 あるいは俺が余計な心の壁を作り上げてしまっていただけなのか。


 ……まあ、考察や反省は今すべきことじゃない。

 この土壇場で起死回生の一手にもなり得る新たなスキルだ。

 速やかに取得しよう。

【衰え知らず】を持つ俺は【経験ポイント】が余りに余っているからな。

 獲得できる状態になってさえいれば、スキル取得に障害はない。

 そうして【比翼連理】を有効化した瞬間。


「ん、く……」


 異質な感覚に包まれて一瞬足元がおぼつかなくなる。

 顔を上げるとキャッチャースボックスに到達したあーちゃんもハッとしたように振り返り、目を丸くしながら俺を見詰めていた。

 もし試合がとまっていなかったらボークが宣告されていたかもしれない。

 満塁の状況では致命的だった。

 とにかく深呼吸して心を落ち着ける。


(しゅー君、大丈夫?)


【以心伝心】が伝えてくるあーちゃんの心配がいつもよりもハッキリとしている。

 心の中で問題ないと伝えようとすると即座に彼女の不安が和らいだのを感じる。

 どうやら【比翼連理】によって俺にも【以心伝心】が共有されて、気持ちや感情の伝達がよりクリアでダイレクトになったようだ。

【比翼連理】のスキル効果に例外の記載がない以上は【生得スキル】にも適用されるのは自然な話だが、それはつまり……。


「プレイッ!」


 球審のコールを受けて試合再開。

 右のバッターボックスに入った8番バッターのラージャ選手と向かい合う。

 こちらは右投げのまま。

 今回は本当にサイン交換を行い、あーちゃんからの指示に頷く。

 1球目はサイドスローからフォーシームをインコース低めいっぱいに。

 塁は全て埋まっているのでセットポジションでなくてもいい。

 大きく振りかぶってワインドアップから――。


(スリークォーター。スイーパーをど真ん中に変化するように。相手は振らない)


 テイクバックに入る直前に伝わってきたあーちゃんの思考に、グローブの中で咄嗟に握りを変えてスリークォーターからインコースに投じる。

 ボールはほぼ真横に鋭く変化し、その結果としてど真ん中へと向かう。

 甘いコースだ。


「ストライクワンッ!!」


 しかし、ラージャ選手はそれをスイングせずに見送った。

 あーちゃんから伝わってきた通り。

 そして俺の脳裏にも浮かんでいたビジョンとほぼ同じ結果となった。

【直感】による予測。

【比翼連理】によって共有された彼女のもう1つの【生得スキル】の効果だった。

 初めての感覚に戸惑いながらも、今は一先ずそういうものとして受け入れる。


(スリークォーターでスプリット。初球と同じコースから低めに落とす)


 投球動作中に球種とコースの変更を行うことができたことで、あーちゃんは自分主体のリードでもサイン交換の必要はないと判断したようだ。

 具体的な指示が頭の中に直接来る。

 それに頷いて2球目。

 今度は途中で球種とコースを変更することなく、そのままスプリットを投じる。


(空振りする)

 ──ブォンッ!!

 パァン!!


 ラージャ選手のバットは確かに空を切り、ノーボール2ストライク。

 どうやら俺が共有している【直感】とあーちゃんの【直感】が【以心伝心】を介して相互に干渉しているようだ。

 それによって、本来なら1秒にも満たなかった【直感】が作用する時間のスケールが大幅に伸びているのだろう。

 1秒未満というのは具体的にはテイクバックよりも大分後。

 その段階でもコースの修正ぐらいならばギリギリ間に合うだろうが、さすがに球種やフォームの変更は不可能なタイミングだった。

 それが今、状況が変わった。


(アンダースローからフォーシーム。アウトコース高めいっぱい)


 3球目。アンダースローからの全力投球。

 ここも直前での変更はなく――。


(空振り三振)

 ──ブォンッ!!

 パァンッ!!!


 3ストライク。3球三振。2アウト。

 その事実を前に1つ長く息を吐く。

 未だ満塁のピンチではあるが、7連続出塁は許さずに済んだ。


「「「わああああああっ!!」」


 日本代表応援団がいくらか息を吹き返したかのように声を上げる。

 アメリカの観客からはどよめき。

 ふと電光掲示板を見ると174km/hの表記が出ていた。

 やはり【比翼連理】は破格の効果だ。

 あーちゃんの【全力プレイ】と【身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ】が重複した結果、5%の半分の2.5%が【体格補正】にプラスされている。

 つまり自前で-5%が±0%になっていたものが更に+2.5%となった訳だ。

【Pitching Speed】の基礎ステータス値170に加算されると174.25。

 これで俺の最高球速は174km/hとなった。

 それでも【体格補正】+3%でMax175km/hのサイクロン選手やジャイアント選手にはさすがに劣るが……。

 アンダースローであれば彼らに匹敵すると言っても過言ではないだろう。


 ……何にしても、後アウト1つでチェンジ。

 まずはこの状況を切り抜けることが先決だ。

 打順は9番。右のバッターボックスにジェネラル選手が入る。


(アンダースローから高速シンカー。インコース低め)


 頷いて初球。

 振りかぶって――。


(サイドスローからパワーカーブ。アウトコース高め。ファウル)


 今度はテイクバックの前に球種とコースの変更指示。

【直感】によると、最初の配球ではすくい上げられていたようだ。

 その場合の打球角度。打球速度は十分。

 恐らくポールを巻かれて満塁ホームランになっていたことだろう。

 そうなっていたら終わっていた。

 背筋が凍る思いを抱きながら1球目を投じる。


 ――カッ!!

 バンッ!!!


 ボールの下を掠めた打球はバックネットのフェンスに当たってファウル。

 その結果にホッと胸を撫で下ろす。

 あーちゃんの【生得スキル】が拡張されたことでラージャ選手を3球三振に取ることができ、僅かながら余裕ができた気がしたが……気のせいでしかなかった。

 相手はあくまでも世界最強のアメリカ代表。

【比翼連理】なしには手の届かない圧倒的な強者だ。

 リリースする瞬間まで細心の注意を払ってピッチングを続けなければならない。


(サイドスローから縦のスライダー。初球とコースを合わせて)


 あーちゃんに頷いてジェネラル選手に対する2球目。

 投球動作中の配球変更はなく、そのまま縦のスライダーを投じる。


(空振り)

 ──ブォンッ!!

 パァンッ!!!


 再びノーボール2ストライク。

 2球で追い込んだ。


(アンダースローからライズボール。アウトコース低めいっぱい)


 アメリカ代表相手に遊び球は効果がない。

 この回で骨身に染みた。

 3球勝負。左足を上げ、重心を移動しながらテイクバックに入る。


(インコース高め。ボールゾーンへ!)


 そこでコースの変更指示。

【直感】の予測がギリギリで変わった。

 ジェネラル選手が何かを感じ取り、咄嗟に狙い球を変えたのかもしれない。

 対するこちらも投球動作の流れの中で微調整をし、内角高めのストライクゾーンから浮き上がってボールになるライズボールを投じる。


(ファウルフライ!)

 ――カンッ!!


 ボールは高々と上がった。

 1塁ベンチ間際。

 マスクを脱ぎ捨てたあーちゃんが真っ先に駆けていく。

 そして彼女はベンチ前の柵から身を乗り出すようにしながら手を目一杯に伸ばしてキャッチャーミットを差し出し――。


 ――パシッ!

 ガシャンッ!!


 捕球した直後に策を越えて頭からベンチに落下した。


「茜!!」


 美海ちゃんが悲鳴を上げるようにしながら近づくのが見える。

 俺も一瞬冷やりとしたが、俺があーちゃんの【生得スキル】を共有しているように彼女も俺の【生得スキル】を共有している。

 つまり【怪我しない】も彼女に共有されている訳だ。

 であれば、少なくとも怪我はない。

 それでも痛みは多少なりあるので、俺も急いでベンチに駆け寄る。

 すると、ベンチの一段低くなっているところから彼女がヒョコッと顔を出した。

 ボールの収まったキャッチャーミットを掲げながら。


「キャッチッ!!」


 フライアウトが認められて3アウトチェンジ。


「「「わああああああっ!!」」


 日本代表応援団が沸く。

 ようやく7回裏のアメリカ代表の攻撃が終わった。

 俺はこの回3失点を喫してしまったが、6人の出塁を許しながらと考えれば踏みとどまったという見方もできなくはない。

【比翼連理】のおかげでアメリカ代表打線を抑える目も出てきた。

 事態は好転した……ように見えるが、しかし。


 7回だけで俺は23球を消費し、球数の合計81球。

 95球まで残り14球という状態で2イニングを抑えるのは不可能に近いし、何よりも現在のスコアは1-3。2点を追いかける展開。

 更に言えば、7回表は俺の打順で終わってしまっている。

 3人以上出塁しなければ俺に再び打席が回ってくることはない。

 未だ他力に頼る以外にない厳しい状況というのが現実だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。