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お茶供養と催眠

初めて、ホームズ女史と出会ってからもう数年になる。その間に私は自分に憑いている人のことやいろんな不思議な話をきいてきた。けれど、やはり本当に知りたいのは亡くった身内が心安らかでいるかということだけなのだ。私は彼女に会うと聞いてみる。

「ねえ、私の後ろにはまだ7人いるの」

「いる」

「私のおばさんはどう。少しでも上にあがっているかしら」

「あがっていない。あなたにつくには今憑いている7人が強すぎるし、中途半端なところにいる。あまり、いい状態じゃない。もし、おばさんが夢にでてきだしたら私に連絡して」

憑きものはがしは、たやすいことではないし、亡くなった者のその後には、どんな助力もできるものではないのだと実感する。憑き物はがしといえば、これも又友人から面白い話を聞いたことがある。

 その話はやはり7人の人が後ろに憑いていた人の話だ。その人は「お茶供養」なるもので後ろの人達を減らしたと言う話だった。

友人の知り合いは、どちらかといえば行動力があって、はっきりとした性格。ところが、何かを決めるとなると、ささいなことにも迷うのだそうだ。例えば、レストランに入っても、じっとメニューを眺め、あちらのページをめくり、又こちらのページに戻っては迷い続ける。買い物にいっても、シャープペンシル一つ買うのにも、迷う。「あれにしようか」「これにしようか」と悩みっぱなし。

「それで、その理由がわかったの。友人には7人のおばあちゃんが憑いていて、何かを決めるときになると、その7人のおばあちゃん達が『私はこっち、いや、私はこれだよ』って感じで口々に主張するものだから、知人は決めかねて迷っていたということらしいの。」 

面白い話だと思った。この話はまた、日本の話ではなかった。話の場はシドニー。そのころ商社の奥様の間である霊能者が話題になっていたのだそうだ。それで友人の知人も、では、私もお願いしてみようということで連絡をとってみた。すると

「あなたには、7人のおばあさんがついています。7人の個性が違うから、あなたが優柔不断なのは、そのせいです」

と、いわれたのだそうだ。面白いのは、この外国の霊能者は憑いているといった後、このおばあさん達を引き離す術を伝授してくれていること。方法としてはその霊能者が「天使様」にコンタクトを取り

それを又知人に伝えてくれたそうだが、

1.夜どんぶりいっぱいに緑茶をいれて一晩置いておく

2.翌朝そのお茶が自然蒸発分以上に減っていたら天使様が願いを受け入れてくれた証

3.天使様にお礼を言って、残りのお茶は庭にまく(流しや下水にまくのではなく、土にかけることが重要)

4.これを3日(この日数に関しては友人の記憶があいまいで、1週間かもしれない)続ける

 友人の知人はこれをやって優柔不断が改善されたようだが、感覚としてまだ3人のおばあさんが残っているような気がするのだという。

「もう一度お茶供養やってみたら、その3人のおばあさんもいなくなるかしら」

友人いわく、その知人は既に日本に帰っていて天使様とコンタクトとってくれる人がいないと、無理かもしれないので、試していないらしい。憑く、祓う、いろんな不思議な話が日本にも外国にもあるということだ。

 憑く、祓うとは又違う話だが、興味を引かれる話をきいた。これも、別の友人の知人の話だ。

友人の知人の息子さんは当時、家庭内暴力とひきこもりを起こしていた。二人兄弟の弟で随分と年の差のある兄弟だったので、皆にかわいがられて育ったこと以外、ごく普通の男の子であったという。

その彼が包丁を持ち、親をののしり嬌声をあげて部屋中を暴れまわる。時には、本人の声でないような声もあげていたそうだ。父も、母も息子に何が起こっているのかわからず、何とかこの子を元通りにすることができないかと、心療内科のカウンセリングを受けさせた。そして、親は親でいろんなセミナーにでかけ、情報を得て、子供を助けたいと必死に努力をした。

 しかし、一向に事態は収まらず、暴力が本人自身を傷つけるようになっていた。こうなると、親は子供のために藁にもすがる。

あの拝みやがよい、と聞けば子供を連れてゆき、どこそこの神社が霊験あらたかだと聞けばお参りに行く。いろんなことをしたそうだ。そうして、ほとんどのことが徒労に終わったとき、父親は某大学の教授の話をきいた。医学的に催眠をかけて、心理療法を行うという。それから、必死でツテを頼り、父親はその教授までたどりついた。

催眠がはじまった。幾つかの質問に答えるうちに、息子は座っていた椅子から崩れ落ち、床にのたうち呻く。その声は息子の声ではないように聞こえる。しかし教授は、息子を床に転がせたまま1歳1歳と年齢を退行させてゆく。キーポイントは2度あった。兄のことと学校生活のことに反応を示した。兄はおとなしい弟と比べ反抗的で乱暴者であったらしい。そして、その兄を諌める父との暴力的なやりとりを見ることが怖くてしょうがなかったらしい。

「僕はお父さんから兄さんみたいに怒られたくない。殴られたくない。だから、お父さんの言うことを聞いて反抗しないようにしよう」と思ったこと。それと同時期に学校であったクラス替えになじめず、

  学校に行く事が怖くなり、心を痛めていたこと。

それでも弟は、日常生活では自分自身の傷ついた心に気付かないように、何事もなかったように生活してきた。けれど、彼の心がとうとう限界を迎えたのだ。

「学校に行きたくない」でも、お父さんにそれを言うのが怖い。自分の本心に気付くという心の成長を迎えたことにより、心のバランスが崩れたのだ。ヒプノにより、両親は傷ついた小さな息子を見つけた。

しかし、理由が分かったからといって事態が劇的に変化するわけではない。心療治療を受けながらも、息子は発作のように暴れだす。けれど、原因がわかっている。父親は一生懸命に伝える。

「お父さんが悪かった。そんなに怖がらせて悪かった。お父さんがお前を守ってやるから、心配するな」

そうして、何度も何度も心のぶつかりあいを続けしだいに、治療も効果をそうし、息子は全快したのだが、後日父親が語ったことがあるという。

「ああいう、普通の状況ではないとき、普通の状況では考えられない事も多々あったよ。夜、寝ていると妻が呼びに来る。息子が『僕、いかなくっちゃ』といって家を出てゆこうとしているという。深夜だよ。夫婦して止めても、息子は泣きながら「いかなくては」と繰り返しつぶやき、出て行こうとする。

仕方がなくて、父親は息子について深夜に外へでる。息子はまるで目的地があるようにはっきりと歩きだす。一体誰が呼んでいるのだ、ときくと『おばあさん』と答える。そして2時間ほど歩いて、国道からはずれて細い隠れ道のようなところに入ってゆこうとする。父親はもう泣きながらとめたそうだ。

「いかん、いかん。これ以上いったらいかん」って。

「帰ろう。帰ろう。」って。

本当に怖かったと、父親はいったという。ヒプノ(催眠)。魂の奥に道をつけるもの。彼の魂の奥底で、何者につながる道ができていたのだろう。


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