表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
劣化コピーの召喚者ー追放から、積み重ねで最強になるー  作者: クロミ
第三章 傭兵の国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/15

7

第四章 傭兵の国


 ガルドが見えてきたのは、十日目の夕暮れだった。


 丘の上から見下ろすと、街は城というより巨大な砦の集合体に見えた。高い城壁。無数の旗。煙を吐く鍛冶場。石造りの建物が雑多に並び、その隙間を武装した人間たちが歩いている。


 風が、鉄の匂いを運んできた。


 セナはその街を見下ろしながら、少しだけ目を細めた。


 エルディアとは空気が違う。


 もっと荒くて、もっと剥き出しだった。




 城門をくぐる。


 酒の匂い、汗の匂い、鉄の匂い。街を歩く人間の半分が武器を持っていた。人間だけじゃない。エルフやドワーフ、獣人、見たことのない種族もいる。


 酒場の前では大男同士が殴り合っていたが、周囲は止めもしなかった。笑いながら賭けをしている。


 強い者が立ち、弱い者が沈む。そういう場所だった。


 セナは立ち止まり、周囲を見渡した。


 コピーできる動きが、そこら中にあった。




 商隊の依頼完了の手続きが終わると、金貨五枚が渡された。手の中の重みを、セナはしばらく見つめていた。エルディアで銅貨三枚を握っていた頃とは、もう違う。


 でも、まだ足りなかった。


 もっと強くなりたい。


 その気持ちは、前よりはっきりしていた。




 翌日、セナは傭兵組合の前に立っていた。エルディアの冒険者ギルドより小さく、雑然としている。


 ガルドらしい酒と鉄の匂い。壁には乱雑に貼られた募集紙。


 傭兵団員募集


 護衛募集


 討伐依頼


 その中の一枚で、セナの手が止まった。




『鉄狼団団員募集

実力次第で即戦力として扱う

弱い奴はいらない』




 短い文章だった。だが、その名前を見た瞬間、焚き火の夜を思い出した。




『俺はガルドの傭兵団所属だ。鉄狼団っていう』


『傭兵団』


『ああ。腕さえあれば、種族も出自も関係ない』




 火の揺れ。


 夜風。


 焚き火の熱。


 そして、あのとき無意識に口から零れた言葉。




『そういう場所、嫌いじゃないかもな』




 フィンが少しだけ驚いた顔をした。


 セナ自身も驚いていた。追放されてから、自分はずっと一人だと思っていた。誰かと並んで戦うことも、同じ火を囲むことも、そんな場所を「悪くない」と思ったこともなかった。




 セナは募集紙を剥がした。


「ここにするか」


 小さく呟き、組合の受け付けへ歩き出した。教えられた鉄狼団の拠点は、街外れの古い倉庫だった。


 中へ入ると十数人ほどの傭兵がいた。武器の手入れをしている者、酒を飲んでいる者、床で寝ている者。


 全員、一瞬だけセナを見た。そしてすぐ興味を失った。


 弱そうなガキ。


 それ以上の印象はないのだろう。




 奥に、一人の男が座っていた。


 短く刈った黒髪に白髪が少し混じっている。顔には古い傷が三本。ただ座っているだけなのに、この空間の中心だとわかる。


「団長ですか」


 男が視線を上げた。


「そうだ」


 低い声だった。


「募集を見ました。入団させてください」


 団長はセナを頭から足先まで見た。


「いくつだ」


「十七です」


「戦えるか」


「やってみないとわかりません」


 団長は少しだけ目を細めた。


「庭へ出ろ」



 庭には、大柄な男が待っていた。その男が無言で木剣を投げてよこすとセナは受け取った。


「始め」


 次の瞬間、視界が回った。


 吹き飛ばされていた。


 立つ。


 また行く。


 また吹き飛ぶ。


 重い。


 速い。


 強い。


 剣の軌道が読めない。


 足運びも見えない。


 七回吹き飛ばされたところで、団長の声が飛んだ。


「そこまでだ」


 セナは地面に膝をついたまま、肩で息をしていた。


 全身が痛い。


 でも、頭の中は動いていた。


 今の踏み込み。


 重心。


 剣の角度。


 全部を必死に焼きつける。


 団長が近づいてきた。


「弱いな」


「はい」


「なのに立った」


 セナは答えなかった。


 団長はしばらくセナを見下ろしていた。


「雑用からだ。文句あるか」


「ありません」


 団長が踵を返す。


 セナは木剣を返しながら、さっきの男の動きを頭の中で再生していた。七回やられた。なら、七回分覚えればいい。

お読みくださりありがとうございます!


「面白そう!」

「もっと読みたい!」

「応援してるよ!」


と少しでも思ってくれたら↓の★★★★★を押して応援していただけると嬉しいです!

ブックマークもお願いします!


あなたの応援が、更新の原動力になります!

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ