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試験など受けなくても結果は分かる

「おっさん。取り付けといたか?」


「ハリバンと言ったが名前は覚えてくれないのか?」


「俺の記憶に残りたいなど片腹痛いわ。で、どうなのだ?」


「取り付けられた。試験場だがここからすぐ行った場所」


これだと言って渡してきた紙を手に取る。


「分かった。すぐ向かう。ほら行くぞミーナ、ユリ」


二人を呼んで指定された場所に向かうことにした。






「意外と人がいるな」


どうせ俺だけだろうと思っていたが違った。

試験用に用意された場所。

そこにいた受け付けに話しかける。


「試験受けに来たんだが」


「登録証をお願いします」


「ほら」


受け付けに渡すと怪訝な目で見られた。


「あなたが飛び入り参加の?」


「飛び入りなのか?おっさんが申し込んでくれたが」


「飛び入りですよ。予め申し込んで欲しいのですが…次からはきちんと期日までにお願いしますね」


「善処しようか」


俺に何かを渡してくる受付の女。

それを受け取って対応する試験場に向かう。


「遅いな」


「悪いな遅れて」


試験官に紙を渡しながら答える。


「お前が…全属性のか…」


「ジロジロ見るな。男に見られる趣味はない」


怪訝な目で俺を見ていたためそう返す。


「俺を馬鹿にするのは構わんが、全属性の素晴らしさを見て後で絶望するなよ」


「それはないな。全属性は外れだ。時期が悪かったな。クシナ様が生きていた時代ならば高く評価されたのに」


試験官すらはははと笑う。本当に落ちぶれたものだな。


「全属性の素晴らしさって…くくく…面白すぎる。今どき外れもいいとこの属性で凄さって…」


「辞めてやれ。最新の情報が入っていない田舎から出てきたんだろ…ぷぷっ…」


同じ試験を受ける奴らも笑い始める。


「俺は寛容だ。笑いたけりゃ笑うがいい」


「物は言いようだな」


あちこちからそんな声が届く。

久しぶりに力を出そうか。


「シェルヴィお前は最後だ」


「分かったよ」


「最後ってハードル上がるのにな。泣きべそかかせてやろうぜ」


「そうだな」


知り合い同士で受けてるのか男達が俺を見てそう口にしていた。

後でその顔を絶望に染めてやるから待ってろ。


「試験内容は単純なものだ。この先に大きな岩がある。それに向けて魔法を撃つだけだ」


見ると確かに魔法があった。


「壊せれば何でも構わん。兎に角壊せ」


その声にはい、という声があちこちから聞こえてくる。

…あれを壊せばいいのか?あんな脆そうな?

岩は直径10メートルというところか。

まず最初の男が開始位置に立った。


「せい!」


魔法を使うがやはり凡人、しょぼいものだ。

詠唱したうえで何度も魔法を使って岩を全壊させてはいるがそれだけ魅了させるようなものはない。

そうして何人もが同じことを繰り返しやがて俺の番が来た。


「全属性お前の番だぞ」


「くくく…ふははは…あれを破壊など秒もいらん」


初めは特殊な岩かと思ったがどうやら違うらしい。

あの程度余裕だ。小指で捻り潰せる程度のもの。それこそ俺が息を吹きかければ消え去る砂上の楼閣。

開始位置に立つ。


「おい試験官もっとデカくても良いのだぞ?」


「何を言っている。お前が思ってるより難しいから始めてくれ」


気だるげな声でそう返ってきた。

それを聞いてから俺は岩を見た。見るだけだ。


「な?!」


岩が粉々に砕けた。


「な、何だよ!今の!」


そんな声があちこちから聞こえてくる。


「そんな…有り得ない…」


試験官すら動揺を隠せないらしいがこんなもの序の口だ。


「ホワイトドラゴンの討伐でもいいんだぜ?」


「…過剰な自信は身を滅ぼすぞ」


俺を黙って見つめる試験官。


「あぁ。はいはい」


何か言ってやろうかとも思ったがまた出入り禁止にされては堪ったものではない。大人しくしておこう。


「どうだ?これがお前らが馬鹿にした全属性の素晴らしさだ」


全属性は関係なかったがな。

そう思いながら他の参加者の顔を見るとどいつもこいつも信じられないものを見たような目をしている。


「いつまで惚けている」


「いや…だって…あの一瞬で全壊?」


「不思議なことではないだろう。俺なのだから見るだけで壊せる」


「何をした?見るだけで壊せるわけがない」


試験官が言ってくる。

魔族のレベルの落ち方が嘆かわしいな。これができる奴はたまにいたのだがな。


「兎も角…試験は合格だ」


「そうか。安心した。で、次からは何を狩れるんだ」


「大き目のボスゴブリンとかその辺だな」


「まだあの程度か…」


「もっと上に行きたければ試験を受けろ。また後日になるがな」


「そうかよ」


俺がこんな下の方で狩りごっこをしているのは実に悩ましいものではあるが仕方ないか。何せ今の俺は1人の魔人だ。


「また受けに来るからよ。宜しくな」


そう言って手を振りながらその場をあとにした。

後ろからは絶望に染った声が聞こえる。そんなに俺に負けたことが悔しいか。そうか。


「ふははははは」


自然と笑いが込み上げてきた。




「通ったぞ。当然の話だが」


試験の結果を2人に報告する。


「すご、流石だね」


「しかもすごい成績ですねこれ…」


ユリは素直に褒めてくれてミーナは呆然としていた。


「何がすごい成績なのだ?」


「いえ…一瞬で岩を壊したのがこれまでにない逸材だって」


「あの程度朝飯前だ」


俺にとって全てのことは息をするのと等しいくらいに簡単だ。


「シェルに勝てる存在っているのかな」


苦笑いするユリ。


「俺に勝てるのは俺だけだ。故に俺は世界最強なのだ」


腕を組んでそう告げる。


「でもどうして世界の狭間に行ってたんですか?」


「油断したのだ。一瞬の隙を付かれて押し込まれたのだ」


あの時のことは確かに悔しい。俺も本気を出していた訳では無いがあのせいで何百年もの間死んでいたのと同じだ。

あいつに復讐したいところではあるが既に寿命で死んでいることだろう。残念だ。


「魔王でも油断するんですね」


「当然だ」


「何自信満々な顔で答えてるのよ」


ジトーっとした目で見てくるユリ。


「王はいつでも胸を張るものだ。頼りない王に誰が続く」


「私は頼りなくてもシェルならついて行くよ」


「私もです」


2人はそう言ってくれている。


「でも今のシェルは王じゃないよね」


「そうだな。しかし俺はいつでも気持ちは魔王だ」


確かに王ではないが俺はいつまでも魔王だった時のことを忘れないし魔王の気分を貫く。それだけだ。


「おい、全属性小僧」


「小僧ではない。シェルと呼べと言っているだろうおっさん」


気持ちよく酒場で食べ物をつついていたとき奥からあのおっさんが飛び出てきた。


「お前…なんて事してくれたんだ…」


「何かしたか?」


「何したも何もお前…」


俺に恐れ多くも抱きつこうとしてきたおっさんを足で踏みつける。


「触れるなおっさん。我が身は高潔なものだ。許可無しに触れるな」


「もう足で踏んでくれててもいいから聞いてくれ。お前に試験を受けさせたことで俺の株も上がってな」


「それは良かったな。どうだ人の活躍で上がる株の気持ちは」


「あぁ…いいもんさ」


このポーズでそう言われては気持ち悪さが倍増だ。足で踏みつけるのも辞める。


「言いに来たのはそれだけか?」


「いや、それがな」


周りを見る男。


「答えたくなかったら答えなくていいがお前…何者なんだ?」


「シェルヴィ。遠い村出身の1人の魔人だよ」


笑って答える。これほどまでに愉快な気分というのは久しぶりだな。


「お前が強いのは理解した。だが四天王や魔王はそれを上回るぞ」


注意してくるおっさんだがそんなことは無い。


「俺は最強だ。要らぬ心配などするな」


「とは言ってもよ…」


「それが要らぬ心配だ。安心しろ俺は最強だ」


「分かったよ。お前のことだし好きにしてくれ」


そう言うと諦めたように両手を上げたおっさん。

そのまま奥へと戻っていく背中を見送る。


「さて、行こうぜ」


ユリとミーナに声をかける。

もうテーブルには何も残っていない。



ブクマありがとうございます。

これからも頑張ります。

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