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抵抗されるほど強引に攻めたくなる

「…こんなところでどうしたのだ」


「…お兄ちゃん誰?」


少しの時間体を動かそうと村の外にある森に来たところ木の下に座り込んでいる金髪のエルフを見つけた。ダークではなく普通の方。光属性魔法を得意とするのだったな。

瞳は金色。顔を見る限りまだ小さいな。幼い印象を受けた。


「俺はシェルヴィ。通りすがりの最強だ」


その肩より下の髪を揺らして驚く少女。


「通りすがりの最強さんなの?」


「あぁ、通りすがりの最強だ。こんなところで何してるんだ」


「お姉ちゃん待ってるの」


「お姉ちゃん?」


話が見えない。


「こんなところに何しに来たんだ。怖い魔物や人間が出るぞここは」


「帰り道が分からないの」


「へー。そうか。家どこだ?」


「お家はお姉ちゃんが知ってる」


家が分からない?何だか雲行きが怪しいがその姉とやらを探しに行くとするか。人助けも大切なことだ。


「俺が探してやるからこいよ」


「でも、お姉ちゃんはここで待っててって」


「俺の言葉は聞けないか?一緒に行こうと言っている。それともここで待っているか?」


「連れてって。やっぱり1人は嫌」


そりゃそうだろうな。こんな森の中で1人永遠に待ち続けたくなんてないだろう。


「いい子だ」


頭を撫でて背負う。

満足に食べられてないのかかなり体重は軽かった。

まぁ…こんな時間にこんなとこにいる時点で何が起きたかはだいたい理解できるが。


「お姉ちゃんどっち行った」


それでも詮索することなく目的の人物を探す。


「あっち」


「りょーかい」


言われた方向に進む。






「あれか…」


暫く進むとそれがいた。ケルベロス。三つの顔がデカい木の下を覗いているようだった。


「な、なにあれ…」


背中の少女が喚くが知ったことではない。


「目瞑ってろ」


背中の少女を魔法で眠らせてから奴を睨む。


「クゥーン」


瞬間逃げ出すケルベロス。

俺の殺気が伝わったのだろう。魔法を使うつもりはなかったからいい結果だ。


「もういいぞ」


「あれ…あの犬は?」


「俺にびびって逃げたよ」


答えながらあの犬が覗いていた場所に近寄る。穴が開いていた。そこに隠れている奴が一人。


「だ、誰ですか?…狩猟難易度が最高のケルベロスを…圧だけで退けるなんて…腕利きの狩人の集団でも多くの犠牲は出ると言われているくらいなのに…」


「通りすがりの元魔王と言って信じるか?」


しゃがみこんで訊ねる。


「…」


黙って首を横に振る女。こっちも金髪のエルフだった。

背中の少女と同じ空気を感じる。

お姉ちゃんというのは呼び方としてのお姉ちゃんだと思っていたが本当の姉妹なのだろうか。そんな気がする。

両方髪型が同じでよりそんな風に思う。


「怪我はあるかないか」


「その…右腕が…」


「ほう…」


見るとたしかに肘から下が無くなっていた。


「歩けるか?」


「怪我が酷くて…」


「仕方ないな」


左腕で抱き抱えることにする。


「…え?」


「丁度使用人が欲しくてな。魔王には使用人の1人や2人いなくては困るものだから。俺が面倒を見てやるということだ」


抱えたこいつも軽いものだった。


「お前ら奴隷だろ」


「…はい、何故それを?」


「身なりを見ればわかる。それとお前も後ろのチビも軽い。マトモなものを食べられていないのだろう?」


俺は魔力量や魔力こそ最強ではあるが腕力に関してはそうでもない。身体を強化していなければ女子だとしてもそれなりに重さを感じる。のだがこれは軽すぎる。


「それにあんな時間にあんな場所にいるとしたら公には出来ない事情があると考えるのが普通だろう。誰がこんな時間に人気のない森に女二人で出歩くというのだ」


「…分かるものなんですね」


「当然だ。俺を誰だと思っている。通りすがりの元魔王だ」


言っていて情けなくなってくる。


「それにしても何故目の前に魔族がいてお前達は黙っているのだ」


それが気に食わない訳では無いが引っかかる。


「…私達は周りの人間にも捨てられたんです。今日…移動途中で、この子は買われたことを知らないみたいですけど…その途中であれに襲われて必死に逃げて…」


「それであそこにいた訳で。絶望し全てから抗うことを辞めたと、そういう訳か」


頷く女。


「俺は認めんぞ」


「え?」


「抗え運命に、抗え全てに。抗ってこそお前達は美しい」


俺は魔王として気が遠くなる程の時間を過ごした。そして1つの考えに至ったのだ。


「貴様らは抗うからこそ輝くのだ。俺はお前達のその美しさを見たくて魔王として君臨していた。だが、なんだその無様さは。抗えよ、諦めることは許さん。抗ってみせよ。それでこそお前は美しい」


「無理ですよ…」


「そうか。ならばこの話は後ですることにしよう」


そうして俺は帰り道を駆け抜ける。





「許せ。捨てエルフを拾ってきた」


「…捨てエルフ?」


「そうだ。捨てられた哀れなエルフだ」


ユリ達に拾ってきたエルフを見せる。


「ダークじゃないんですね」


「ダークかそうでないかなど関係ない。俺は俺の世話をする存在が欲しかったから拾ってきたのだ。自分で着替える魔王など絵にならない。俺は着替えすら誰かにやらせる」


「いや、赤ちゃんじゃないんだからさ…」


「何?俺は偉いからやらせるのだ。それの何が悪い。決して着替えられないからやらせるという訳では無い」


ユリの言葉に返す。そうだ俺は偉いからこそやらせるのだ、と。


「まぁ良い。この2人は俺が預かる」


小さい方はよく寝ている。疲れたのだろうが。姉の方はまだ起きている。


「何が良いのかは分からないけど…でも見捨てられないよね」


「そうだ。それでこそ人情というやつだろう」


目の前に子犬が捨てられていて見捨てられる奴などいないだろう。


「それより、忘れていたな。お前だ」


右腕を怪我しているエルフを呼びつける。


「怪我している部分を見せろ。俺が治してやる」


「…これを…治せるんですか?」


「当たり前だ、俺を誰だと思っている。通りすがりの元魔王だぞ」


呆れてモノも言えなくなりそうだ。通りすがりの元魔王にできないことは無い。

そう口にして傷口に手を当てる。


「終わりだ」


瞬間失っていた右腕が何も無かったかのように戻ってきた。


「あれ…?」


不思議そうな顔をするエルフ。


「…嘘…?」


「嘘ではない現実だ。そして俺は通りすがりの元魔王だ」


「本当に…魔王様だったんですか?」


「信じていいよ。この人は絶対に元魔王」


ユリも俺の言葉を裏付けるようにそう口にした。


「歴代の魔王の中で全知全能の神と呼ばれた魔王こそが俺だ。俺は寛容だ、ひれ伏さなくてもいい。楽にしてくれ」


「…あの怪我を一瞬で?」


信じられないように元に戻った手を握ったり開いたりしている。


「俺を誰と心得ている。俺に出来ないことなどない」


口元を歪めてフッと笑う。


「俺は万能だ。出来ないことなどないぞ」


「普段偉そうな事言ってるだけあるよね」


「偉そうではない。偉いのだ。いや、偉かったのだ」


今は確かに偉くはない。だから言い直す。


「しかし俺は偉大な存在だ」


「自分で言うんですか」


ジトッとした目で見てくるミーナ。


「俺は偉大だからな。そしてそんな偉大な存在にお付の100や200いないのはおかしい」


「そんなにいるの?」


「必要だ。多ければ多いほどいいに決まっている。歯を磨くお付きに洗濯物をするお付きに俺の夜のトイレに同行するやつに、な?沢山必要だ」


「トイレのお付きはいるの?」


「お化けが出たらどうする」


「怖がりなんだね」


「そんなわけではない。要らぬ争いを生まないためにだ」


「どうなんだか」


首を横に振るユリからエルフに目をやる。


「お前を俺の奴隷にしてやる。喜べ、俺のために尽くせよ。お前の妹もだ」


「私達を…ですか?」


「そうだ」


「…分かりました」


「なら先ず最初に仕事をくれてやる俺のズボンを頭に被れ」


そう言って狭間から帰ってきた時に履いていたそれを放り投げる。


「…」


「なぜ顔を歪める」


「臭いが…」


「当たり前だ何百年も履き続けた代物だ。喜べ」


定期的に身を浄化していたがそれでも染み付いてしまったものは中々取れなかった。


「それに奴隷なのだったのだろう?こんなことにも耐えられないのか?」


「私たちはまだ奴隷ではなかったです。買われて連れていかれるところだったんです。だから、何も知りません…」


「それよりも被れぬか?抗うか俺に」


「…」


「どうだ?」


顎に手を添え俺の顔を見させる。


「…嫌です」


「くくく…ふはははは…そうかそうか。気に入った。それでこそ強引に俺の色に染めたくなる。泣いてくれよ?愉しませてくれよ?」


ズボンを奪い取り消し去る。もう必要ないものだ。

その光景を見入るようにしていたエルフだがまだまだ序の口だぞ?


「名乗れエルフ。お前に興味が湧いた。俺の奴隷となるのだ、名前くらい教えてくれ」


「…エ、エルです」


「エルだな。気に入った」


その金色の髪は少し傷んでいるような気がする。


「風呂に入れ。王の前だ。その身を浄化せ…してくれ」


危ない。つい偉そうな喋り方をしてしまっていた。気をつけなくてはな。


「ユリ、道具と風呂を貸してやれ」


「はいはい。王様の言うことは絶対だよね」


「俺は1人の魔人だ。王ではない」


「なら、道具がある場所教えるから自分で用意してよ」


そう言って俺を引っ張るユリ。


「何故俺が動かねばならない?」


「拾ってきたのシェルだよね?」


「は、はい。そうでございます…」


珍しく彼女の顔に怒りが現れたようで尻込みしてしまった。何たる失態…


「シェル面白いよね」


クスッと笑うユリ。


「俺は面白くなくてはならない」


「なにそれ」


クスッと笑うユリだった。

それを見ているとこちらの顔まで緩んだ。

そうしてエルにそれを渡した。


「ありがとうございます…」


受け取ってすぐに顔を伏せた彼女。


「どうした?」


「…その、たとえ奴隷でもあなたの傍にいられてうれしいです…」


そう口にして急ぎ足で部屋を出て行ったエル。


「案内してやってくれ。あいつ場所知らないだろ」


「うん」


気持ちを汲んでユリに行かせることにした。


ブクマありがとうございます。

とても励みになります。

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