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嫁は100人くらいは欲しいものだ

「綺麗なものだな」


「あ、ありがとうございます」


顔を赤くして俺の横に座るエル。

その金髪は洗った後に見るとより綺麗だった。


「全て毟りとって食べたいくらい綺麗だ」


「じょ、冗談ですよね?」


体を震わせるエル。


「貴様がどうしても捧げたいというのなら食ってやってもいい」


「遠慮しておきます」


「遠慮するな。俺は寛大だ」


「変態」


ユリがジトっとした目で見てくる。


「どこが変態だ。美しいものを口に入れたいと思うどこが変態なのだ」


「変態ですよ」


ミーナもそう続いた。


「俺は変態なのか?」


思わずエルに抱きついて訊ねる。


「い、いえ。正常です」


「ほら見ろ」


姉妹に向き直り言い返す。やはり俺は変態ではないのだ。


「変態って何?」


妹の方のエルフ、リルが首を傾げながら聞いてきた。


「普通の存在ではないやつのことだ」


「その定義ならやっぱり変態だよね」


「変態ではないわ。この変態」


「へ…変態じゃないもん!」


ユリと罵りあっていると間にミーナが入ってきた。


「子供の喧嘩みたいな言い合いは辞めてくださいね?」


「だってユリが」


「だってじゃないです」


「ミーナお母さんみたいだね」


リルがそう口にしていた。


「そ、そうですか?」


「お兄ちゃんの事子供扱いしてるから」


「俺は断じて子供ではない。こう見えてお前達の何倍の時を生きている偉い元魔王だぞ」


「でも精神年齢子供だよね。見た目も若いし説得力ないよ」


「ぐぬぬ…」


ユリに何も言い返せない。精神年齢は兎も角見た目に関して突っ込まれては何も言い返せない。俺の見た目はせいぜい盛って20くらいの見た目だ。


「…俺を黙らせたこと末代まで誇るがいい…今この瞬間は俺の敗北を認めてやる…」


「魔王でも潔いんですね」


「当たり前だ。俺は潔い男だ」


ミーナにそう返す。

それを見ていたリルとエルが笑い始めた。


「何が面白いのだ」


「…魔王様がそんなに面白い人だって知らなかったからです…」


「お兄ちゃん面白い」


二人とも堪えることなく笑っている。


「ここで俺の威厳を示した方がいいかもしれないな。俺は疲れた。二人とも足を揉め」


そう告げるとエルもリルも素直に揉み始めた。


「加減どうですか?」


「あぁ…」


「気持ちいいかな?」


「あぁ…」


こうしてマッサージしてもらうのもいつぶりだろうか。

気持ちよくて思わず口の端からヨダレが垂れそうになる。


「馬鹿になりそうだ…」


快感に身を震わせる。


「これ以上馬鹿になるの?」


「何だその元から馬鹿だと言いたげな顔は」


「だって馬鹿だよね」


ユリは結構毒舌だな。


「俺を馬鹿にできるのも今のうちだぞ。俺が魔王になった日には四天王にその生意気な口閉じさせるぞ」


「自分で閉じさせるんじゃないんだ」


「俺は優しいからな」


「私が四天王に黙らせるためにあんなことやこんな事されてもいいの?」


「それはダメだ。お前は俺の大事な人だからな。これは決定事項だ。触れた瞬間葬る」


「なら自分で黙らせるしかないんじゃない?」


クスッと笑う彼女。


「それはそうだな」


しかし黙る様子がないのがユリだった。


「まぁいい。黙っておけ。黙っておくなら俺の愛の言葉の一つや二つ後で送ってやろう」


「どうしよっかなぁ?」


「まさか…俺の愛の言葉より…黙らないことを選ぶとでも言うのか?」


ありえない。ありえないぞ。


「俺は最強の元魔王だ」


「それは分かってるけど…さ。でもシェルのことちょっとからかいたくなっちゃうんだよね」


「悪魔かお前は」


静かに体勢を崩し壁に背中を預ける。


「こっちへきてくれ」


「うん」


恥ずかしそうに俺の横にきたユリ。


「お前もだぞミーナ」


「え?私もですか?」


「当たり前だ。お前達は等しく俺の妻だろう」


何を不思議そうな顔をしている。


「っていうか私はもう妻なのですか?」


「俺が嫁だといえば嫁だし妻だと言えば妻だ。俺が月は赤いといえば赤くなるしそんなものだ」


「今の月は赤くないけどね」


ふふっと笑うユリ。


「赤く染めてやろうか?」


「冗談に聞こえないから遠慮しとくね」


左手の指にユリの黒髪をクルクルと絡ませた。


「俺のために今日も綺麗にしてきたのか?」


「うん」


「いい子だ」


「もう…くすぐったいよ」


そう言っても首筋を触る俺の指には触れないユリ。


「鼻血出てるよ?」


「…しまった…」


「魔王だって鼻血出るんだね」


「当たり前だ」


今度はミーナの髪を触ってみたがこちらもサラサラだ。


「俺のために洗ってきたか。当然のことではあるが感謝しよう」


「まだまだ偉そうな感じが抜けませんね」


「どれだけの間魔王として君臨してきたと思っている。中々抜けるものでは無いな」


しかし1人の魔人として生きるならば早めに抜かなくてはならないな。

次はリルに目を向けた。


「お前達も頑張れば俺の嫁にしてやろう」


「ほんとに?頑張るね」


「あぁ、頑張ってくれ。俺は応援するぞ」


次に何も言わないエルに目を向けた。


「どうして私達を引き取って下さったんですか?」


エルが聞いてきた。


「嫌だったか?」


「そうではないですけど…でも…私達よりもっといい人いるんじゃないかって…」


「俺がお前達を選ぶのに理由が必要か?お前が俺の嫁にもお付にもならないというのならその答えも俺は受け入れよう」


マッサージする指を止めさせて今度は彼女の顎に手を当て俺を見させる。

俺だけを見させる。


「俺を忘れられない男にしてやる。挑みがいのある女は嫌いじゃない。抵抗。それこそがお前をより美しく見させる」


「…なら私も抵抗した方がいいのかな?」


「従順な女も好きだぞ」


ユリの質問に答えを返す。


「今ここで忘れられないようにしてくれますか?」


そう言って俺の胸に手を当てるエル。


「何浮気宣言目の前でしてるの?」


「王たるもの持つべきものは多くないとな」


「今のシェルは王じゃないよね」


ユリの何も言い返せない正論。


「最強の王となるべき男はやはり多くを掴まねばならん」


「王になるの?」


「いつか俺は魔王になる」


「へー。でも浮気しないで欲しいな?」


顔だけは笑っているが怒りマークが見えそうな顔をしているユリ。


「浮気ではない。俺はお前達を全員我が妻のように思っている。浮ついている訳では無いのだ」


「それは…そうだけど…」


「それに俺には多くの女を愛するだけの器量があるのに1人だけに注いでしまえばそれは注がれなかったやつが可哀想であろう?俺は百人ほど嫁にしたいと思っている」


「正気?」


「正気だ。むしろ百人では足りないくらいだ」


「この変態」


「変態でないと言っている。言ってやってくれエル」


「変態ですよ」


「…」


「ほら見なさい」


「嘘だろう?俺は変態ではないぞ?」


もはや縋り付くようにエルの肩に手を置いた。


「中々変態さんだと思います」


「…しかし俺は諦めん。認めんぞ。お前ら全員を嫁にする。これは定められた未来だ」


俺の心は折れない。


「俺の信念は砕けんぞ」


「頑張ってくださいね」


ミーナだけは応援してくれる。


「あぁ。俺は頑張る」


「ちょっとお姉ちゃん…あいつ堂々と浮気宣言したんだよ?」


「俺をあいつ呼ばわりとは中々平等な立場ということが板についてきたようだな我が嫁」


「だからまだ嫁じゃないって」


「そう恥ずかしがるな」


顔を赤くするユリ。


「遠慮するな。貴方と呼んでこの胸に飛び込んでくるがいい」


瞳を閉じて両手を広げた。これこそが真なる男の姿だ。どんな女だろうと受け入れる。それこそが俺という男。


「お断りだから」


代わりに飛んできたのは突きだった。


「もういいもーんシェルなんて嫁を増やしまくって刺さればいいのよ」


「随分な言い方だな。しかしそうやって抗う姿も美しいな」


「馬ー鹿。もう知らないもん」


子供みたいな言葉を残して赤い顔を隠すように部屋から出ていくユリ。


「難しい奴だな」


「そうだよね。皆で仲良くすればいいのに」


「全くだ」


リルの言葉に頷く。


「お前もあいつとは仲良くやるんだぞ」


そう言いながら頭を撫でる。


「うん」


「いい子だな」


これだけ扱いやすければいいんだがな。難しい奴だ。

しかし俺の目には見えている。あいつがすぐに戻ってくる未来が。

ブクマありがとうございます。

暫くは毎日更新できると思いますのでお付き合いいただければ嬉しいです。

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