いつの日かもう一度頂点へ
「寝ましたか?」
「寝たな」
「その子昨日ずっと花占いしてましたから。求婚なんてされたの初めてでどっちがいいかなってずっと花弁触ってました」
「今更だが俺も求婚したことについて恥ずかしくなってきた」
何故あの時あんな事をしたのだろう。分からない。
「俺の求婚については忘れてくれて構わない。あれだ。久しぶりにこの世界の空気を吸って頭がおかしくなったのだろう」
しかし、未来の嫁に変わりはないが。
「私もその子も忘れられませんよ。あんなドストレートな求婚」
「…そうか」
頭をガシガシ掻きむしった。
今となっては恥ずかしい記憶だ。
「魔王城にいた時は多くの奥さんがいたのですか?」
「いや、忙しくてそんなことする暇はなかった。四天王の監視と貴族共の報告を聞いてと色々することがあったからな。しかし、それでも魔族を作り上げたのに後悔はない」
「やっぱり1人は寂しかったんですか?」
「そういう訳では無い。勝手に人間を減らしてくれる存在が欲しかっただけだ。奴ら放っておけば増えるからな。現に今もそうだ」
苦笑いしか出ない。
「それでもまた魔王になりたいのですか?」
「色々考え中だな。今まで忙しかったし俺の人生は長い。終わらない。それを考えた上でたまにはこうして何でもない100年や200年過ごしても問題ないかとかも考える」
お前たちと共に。
「その人生に私達を選んでくれて幸せです」
そう言って微笑むミーナ。
「あの時あそこにいた偶然、と言う奴だな。俺もそれには感謝しよう。あれがあったからお前達に出会えたのだから」
「魔王城の内部ってどんな感じなんですか?」
「硬いやつばっか。だがあそこから見下ろす景色は素晴らしい」
あそこから見下ろした景色は今でも覚えている。そしてもう一度見たいともそう思う。
「それよりお前は俺のそばにいることについて納得したのか?」
「貴方が望むのなら。まだ少ししか過ごしていませんが信じられる人というのは感じてきました。なんて言うんでしょう…裏がない…って言うんでしょうか?」
「俺には基本裏はない。その考えは間違ってはいないな。騙したところで俺にメリットなどない」
「誠実な人なんですね」
「そうだな。俺は誠実だ。ずっとそうだ」
大したことじゃないところで嘘をついてもそれだけだ。
どうでもいいことでしか嘘をつかないしついたとしてもある程度のところで訂正する。
「そういう人が魔王だったんですね」
「だからこそ務まるんだよ魔王が。嘘をつく魔王に誰がついていく」
「それもそうですね」
膝に載せたユリの頭を撫でる。
「可愛いやつだな」
「本人に言ってあげれば喜ぶと思いますよ」
クスッと笑うミーナ。
「俺とて恥じらいくらいはあるが今度口にしてみようか」
「口にしてみるんですね。私も膝をお借りしても?」
クスッと笑ってそう聞いてきた。
「構わんぞ」
「では、失礼して」
そう口にして俺の空いている方の膝に頭を載せるミーナ。
その柔らかそうな金髪がサラリと流れて床に落ちた。
「当代の魔王は厳しいんですよね」
「そうなのか?」
俺はよくは知らないが
「はい。税もキツくて生活がギリギリという人が多くいます。私達もそうです」
「それは許せんな」
ミーナの金髪を撫でる。
「私の髪の毛好きですか?」
「好きだよ」
「…恥ずかしくないんですか?」
「ないと言えば嘘になるが。美しいものは美しい。そしてその美しさを守る為にも魔王にならなくてはならんな」
いつになるかは分からないが今の魔王はどうにかした方がいいだろう。
しかし表だけ見るならばそう急いだ方がいいようにも見えない。のんびりで構わないだろう。
「何より俺が頂点でないと気が済まない」
「高いところはお好きですか?」
「好きだな。1度登ればその快感は忘れられない。だが気付いたこともある。俺は過程をこそ愛しているのだとその道のりがイバラの道であればあるほど燃えるのだ」
登るのが難しい山ほど燃える。それだけの話。
「私達はお供しますよ」
「あぁ、俺の道を共にしてくれ」
そう言って金髪を指にクルクルと絡ませる。
「サラサラだな。俺のためにケアしているのか?」
「その言い方ちょっと気持ち悪いです」
「俺だって傷付くぞ?」
笑って答える。
「でも貴方が望むならこのままキープしますよ」
「そうか。なら、頑張ってくれ」
「はい。頑張りますね」
笑顔でそう答えるミーナ。
俺も微笑んで返す。
「神の御前だからと言ってそう畏まらなくても…。おっとすまない。もっと楽にしてくれ」
また悪い癖が出そうになった。
「昨夜は本当にありがとうございました」
「礼には及ばん。当然のことだ。また再発したり新たな病になったなら呼ぶがいい。いつでも治してやろう」
母親と2人で話し合っていた。
「して、今日は何だ?それだけのために呼んだわけでもないのだろう?」
「ミーナとユリを連れて行って上げてください」
「言われなくても連れていくあれらは俺のものだ」
「変わっておられないようですね。貴方様は」
「俺の事を知っているのか?」
「伝聞ですが」
笑う母親。
それから居間で眠り続ける2人を見た。
「あの子達を幸せにしてあげてください」
「俺といるのだ。幸せ以外になるわけが無い」
鼻で笑う。
「そこまで仰られるなら…安心ですね」
「何を言おうがあの二人は連れていく。今更返せと言わんことだな」
「言いませんよ。あの子達には迷惑をかけました。私がいるせいで満足に色んなことが出来なかった。ですが貴方とならあの子達は何だって出来ると思います」
「当たり前だ。俺と共にあるなら空だって飛べる」
「心強い言葉ですね」
そう言って立ち上がる女。
「私はこの辺りで。お時間取らせましたね。あの子達を頼みます」
そう言って部屋を出ていく。
俺も2人の元へ戻ることにした。
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