王城で行う会議の準備をする
俺は日々の疲れをユリ達に落とさせていた。
そう、マッサージだ。
「あぁ…生き返る…」
「死んでたの?って無粋な質問はなしの方がいいかな?」
「あぁ。なしの方がいいだろう」
下らない会話をユリと交わすがこんな会話すら今の俺の楽しみになっていた。
「それで魔王との話はどんな風に進めるつもりでいるのですか?」
「んー。それなんだがな」
俺も色々と考えたがやはり魔族が世界の覇者となるならば人間に力の差を見せつける。それ以外に方法はないだろうと思う。
「どうにかして俺たちの力を人間共に見せつける。それだけだろう。俺たちの出来ることで奴らをねじ伏せるまでだ」
「その後はどうするんですか?」
「特には考えていないがもう一度魔族…いや俺の恐怖を芯まで刻み込んでやる。そうしてあいつらが立ち上がってくるのを待つ」
全て終わらせてしまえばそれこそつまらないだろう。
「それはいいね。あいつら調子に乗ってどんどん攻めてきたんだもん。そろそろ懲らしめてやらないと」
ユリも笑ってそう口にしていた。
「そうだろう?それにあの魔王と手を組んで俺たちを滅ぼそうとした前科がある。それも許せんな」
「うん。そうだね」
「でも、人間は強いですよ?特に攻め込むとなれば向こうはフルに施設を使ってくるはずです。生半可な人選では逆にこちらが負けてしまうかもしれません」
「何、気にするな。そこはちゃんと考えている。そもそも俺の力があれば考える必要すらないが」
俺がちょっと指を振れば俺の軍は鬼神が如き力を全員が得るのだ。それに任せていれば何が来ようと大したことではない。
「それよりこの辺りの村の人間達はどうなった?」
魔王が間引こうと変なことをしてから村人達は妙な病に侵されていた。それを治してはいるが奴らの反応はどうなのだろうか。
「皆さんシェルに感謝していましたよ。咳が止まった。空気が美味しくなった。体も元気になったって」
「そうか。それは良かったな」
「シェルってやっぱり根はいい人だよね」
「なんと言っても魔王だったからな。人の上に立つ以上やはりいい人というのは必要なものだろう」
「今の魔王もシェルだったらいいんですけどね」
小さく笑うミーナ。
「魔王になるつもりはないがこれからは俺が実質的に統治を行うのだ。それで問題なかろう?」
「まぁそうですけど」
どうしても俺に魔王をして欲しいのか言い淀むミーナだった。
「安心しろ。悪いふうにはしない」
マッサージさせてる手を止めさせて2人の頭を撫でた。
「絶対ですよ?」
「あぁ。約束しよう」
そう言って今日は寝ることにした。
次の日朝起きた俺はアグニエル達に家のことを任せて魔王城、その王室に向かっていた。
両脇にはユリとミーナを連れている。
「お待ちしておりましたシェル様」
王室に入ると跪いて俺を出迎える魔王。
これまでも見られなかった光景だしこれから見ることも無い光景だろうと思えるものだ。
魔王が他の者に敬意を表すなどというのは本来あってはならないこと。
それが目の前にはあった。
「すご…お姉ちゃん魔王様が土下座してるよ」
「すごい光景ですねほんとに…」
後ろから2人が会話する声が聞こえたがそれには混ざらずに1歩踏み出した。
「お前の用意した部屋とやらに案内するがいい。お前と世間話をする程俺も暇ではないのでな」
「は、はい!こちらへ!」
そう言ってペコペコ頭を下げながら立ち上がる魔王。
実に情けないものだな。
「こちらです」
そう言って俺達が辿り着いたのは会議室。
貴族と王族が議題について話し合う場だ。
「ちゃんと食事も用意してあるのか」
「勿論。粗相があってはいけませんから」
相変わらず俺にペコペコ頭を下げて機嫌を取ろうとしている魔王。
それを無視して中に進むと椅子に腰掛けた。
「…あの男何者だ?」
「魔王様が凄腕の軍師を見つけたとか何とか言っていたがあそこまでペコペコする程の存在なのだろうか?」
そんな俺を見て会話をする貴族達の姿があった。
「あんな、ガキで大丈夫なのか?」
「魔王様もあんなガキ相手に頭を下げるなど落ちたものだな」
小声で色んな会話が聞こえてくるが無視して会議が始まるのを待つことにする。
今日の議題は決まっている。その事についてもう一度話すべきことと今後の方針。
それを今のうちにまとめておくことにしよう。




