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これから反省してくれるといいのだが

「続きを話してくれるか?」


「うん」


アニーに食事前にした話の続きを聞かせてくれるように頼む。

何故現魔王が人間に手を貸すようになったのか。

俺の地位が欲しかったのなら当初俺をあの狭間に送った時に果たしたはずだ。その後人間に手を貸す必要などなかった。


「それは、人間と魔王軍の力の差がはっきり出ちゃってこのままではどう足掻いでも人間に勝てないことに気付いたらしい。それで魔王軍を解体する代わりに自分の身の安全を要求したみたい」


「…はぁ?意味が分からん」


呆れて言葉も出てこない。何だそれは。


「私に文句を言われても困る」


それはアニーも困惑するくらいの話らしい。

当然か。俺も困惑しているくらいなのだから彼女もするに決まっている。


「ひぃ…はぁ…」


肩で息をしながら農作業に励む魔王を横目で見た。

情けなさそうな見た目をしているが中身まで情けない奴だとは思わなかったし思いたくもなかった。


「俺から全てを奪う程の覚悟があったくせに中身はそんなにもつまらないやつだったのだな」


しかし、それにしても人間がこんなに力を付けるなんて昔は有り得なかったのだがな。


「やはり魔王が変わって人間に対して甘くなり奴らが付け上がったため数が増えたとかそういうところか」


「そうみたい。現魔王は何もしなかったので有名だから。嫌がらせすらしなかったみたいだし」


「それはダメだな。やはり魔王としては人間に嫌がらせの1つや2つはしなくてはならないのだが」


あの怠け者はやはり魔王には相応しくないな。おままごとをしている訳では無いのだ。本気で邪魔をしなくてはならないのに嫌がらせのひとつも出来ないとは。呆れた。


「ところであれは今日中に終わりそうか?」


アニーに農作業の進捗を訊ねる。

出来れば今日中に終わって欲しいところなのだが。

何せこんなものに何日も使っている暇なんてないわけだし。


「多分終わる。別の貴族に担当させている区画も今日中に終わりそうだという報告がある」


「そうか」


1箇所に沢山の奴らを投入しても効率的ではないかと考えた俺は貴族を幾つかのグループに分けてやらせているのだがそちらの方も終わりそうみたいだ。


「終わったら教えてくれるか?」


「いいけど今からどうするつもり?」


「思い上がっている人間をどのように絶望させるかを考えるのだ」


この世界で最高の種族は魔族だ。それ以外の種族はない。人間などにいつまでも天下を取られているのは気に食わない。早速魔王を通して魔王軍を動かして人間から天下を取り戻すつもりだ。


「あいつとはまだまだ話をすることがある。作戦について説明しなくちゃならないのもそうだし、だから出来るだけ早く終わるように監視していてくれ」


「分かった」


頷いたアニーを見て俺は家に戻ることにした。




「ご苦労」


一応魔王を労ってやる。自分のせいでどう考えても自己責任だがちゃんと俺の言いつけを守って農作業を終えたことに関しては労ってやろう。


「何とも勿体ないお言葉です…」


俺の言葉にきちんと頭を下げて感謝の意を示す魔王。


「シェルの言葉は有難く受け取っておく事ね」


ユリにもそんなことを言われており魔王の威厳など微塵も感じさせない。


「そうですよ。せっかくシェルが更生のチャンスを与えてくれたのですからきちんと反省してくださいね」


こんなこと言いそうにないミーシャまでもが魔王にそんなことを言っていた。


「分かりました…」


ミーシャの圧にすら負けたのか丁寧な口調で返事をしている魔王。

俺がこんな奴に座を奪われたと考えれば情けない話でもあるが今更気にしてもしょうがない話でもあるか。


「まぁ好きに腰掛けてくれ。何遠慮する必要はない」


「それでは失礼して」


農作業を終らせた俺は自宅に魔王を招いていた。

いつまでも立たせたままというの、いくら格下だとしても礼儀に反するので適当に腰掛けることにさせた。


「ここに貴様を呼んだのは他でもない。人間の勢いについてだ。貴様も知っての通り我ら魔族は人間に情勢をひっくり返された」


「は、はい…」


「無論貴様が統治していた頃からの話だ。理解しているな?」


「は、はい…」


沈鬱に頷く魔王。どうやら自分のした事については理解しているらしいな。

ならばそう責めることもないか。


「俺の言いたいことはそんなに難しいことではない。何か理解できるか?」


「…責任を取れ…ということでしょうか?」


「あながち間違いではない。しかし貴様のような情けないやつに任せていては我らは堕落するだけだろう」


これ以上人間に思い上がられるのは正直耐えられないところだ。


「俺が全部指示を出す。お前は傀儡となれ。俺の指示をその口から魔王軍に伝えるただの傀儡となれ」


「…傀儡ですか?」


「返事は、はい又は、はいでしろ」


「両方はいじゃない」


「ユリこれは、はいしか選択肢がないということを遠回しに伝えてるんだぞ」


「あ、そうだったんだ。ごめん…気付かなかった」


「これから理解していけばいい。俺の頼みは基本ハイで答えるということをな」


俺の命令を断るなどという選択肢はない。存在しないのだ。


「はい…」


頷く魔王。その姿を確認してから口を開く。


「その言葉、忘れるなよ?よし今日はもう帰っても構わない。細かい内容は明日考えるからな」


「宜しいのですか?」


驚いたように俺を見てくる魔王。俺も鬼ではない。


「今日は農作業で疲れただろ?しっかり休んで明日に備えるがいい」


「シェル甘やかしすぎじゃない?」


ユリにそう言われたが別にそんなに甘やかしているつもりは無い。


「これからは俺がこいつを監視するのだ。調子に乗ってまたやらかすということもないだろう。だからこそ休息を許す」


「あ、ありがとうございます…」


頭を下げて椅子から立ち上がる魔王。


「し、失礼します!」


大声で挨拶をしてから家を出ていったその背中を見つめる。


「ユリこの後付き合ってくれ」


「どうしたの?」


「それを話してしまってはつまらないだろう?」


不思議な顔をする彼女を見てから一旦話をメモにまとめることにした。

それからユリに付き合ってもらおう。






新作投稿しました。

よろしければそちらもお読みいただければ嬉しいです。

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