面倒ごとは嫌いだが厄介そうなことが起きている
「邪魔するぞ」
入室した後だが一応断っておく。
「は、はい…どうぞ…」
下から返事があった。
何となく感じ的にこのまま立たせたりするのはいけないと思ったので、近くにあったベットに寝かせることにした。
そっと少女を寝かせる。
「あ…そのごめんなさい…色々迷惑かけちゃったみたいで…」
顔を赤くして俺を見て謝ってくる少女。
「別に構わない。俺が自分の意志でしたことだ。それより名前を教えてもらえるか?分からないのであれば話も進めにくいのでな。俺はシェルヴィ。シェルと呼んでくれ」
「シェ…シェルヴィ様…ですか?」
軽く咳き込みながらそう聞いてくる少女。
様はいらないがまぁいい。後回しだ。
「あぁ。シェルヴィだ」
「私は…リオン…です」
そう自己紹介してくれたリオン。
シオンと同じく黒髪に黒目といった見た目で大人しそうな少女だった。
歳もそう離れていないせいで姉妹というよりは友達同士のように見える。
「リオンだな」
コクっと首を縦に振って頷いたのを確認してから俺も口を開く。
「決してそういう意図はないのだが体に触れてもいいか?」
何が悪さしているのか…何が原因でどのような状態になっているのか、それらを知ることは病気を調べる上で大事なことだ。
「体…ですか?」
「何の病気か調べるために必要な事だ。腹の辺りで構わない」
「それは必要なことなんですか?」
シオンも聞いてきたが必要なことだ。
「あぁ。言うならば魔力を目に見えない…とても細い糸状のようにして細かい穴という穴の隙間を通らせて全体を調べるからだ。触れていなければ精度が流石に落ちる」
「そんなことできるんですか?」
シオンが驚いたように聞いてきた。
「可能だ。聞いたことないか?そんな技術。俺以外にも出来るやつはいると思うのだが」
そう言うとリオンも目を真ん丸に見開いて俺を見てきた。
「…聞いたことありませんよそんな技術…」
「なら医者はどうやって患者を見るのだ?」
「普通に症状からこれじゃないかって見ていきますよ」
相変わらず咳き込みながらそう返事をくれたリオン。
「で、その医者とやらはリオンの病気について何と決断を下した?」
この様子を見るにその医者が少しでも役に立っているようには見えないが。
無能。俺の目から見たその医者はそれ以外に言い表す言葉が見つからない程だ。
「一過性のものだって言われました。長引くのは私の体が弱いからだって…」
そう言いながら咳き込んでいる。
「で、それを信じたのか?」
「はい。私なんかを診て下さる先生だったので…」
「実際今のところ断言は出来ないが、俺の考えでは一過性のものではないだろうな」
そう言ってからシオンを見た。
「シオン、リオンの咳はいつから出てる?生まれた時から出てたとか小さい頃からとかではないと思うが」
「小さい頃は出ていませんでした。最近ですよね?」
そうリオンに確認を取っているリオン。
「そうですね。ここ数年だったと思います」
本人もそう言っているので昔からの生まれた時からのものではないだろう。
と、なるとまだ繋げていいのかは分からないが嫌な予感はする。
まだ生きているだろう土地を死んだ扱いした謎の専門家と一過性のものではなさそうな咳を一過性のものと判断した医者。偶然として片付けていいのかどうか。
「ちなみにリオンと同じ咳が出ている奴は他にもいるのか?」
そう聞くと顔を見合わせる二人。
「いえ、私は…ずっと家で休んでいるので、分かりません。ごめんね。シオン無理させて」
「いいんですよ。お姉ちゃん私もお姉ちゃんが苦しむ姿は見たくないですから」
2人の姉妹愛とでも言うのか。互いを思い合う気持ちは美しいものだ。
「そうですね…他にもこの辺りでは同じように咳き込んでいる人がいますよ」
思い出したようにシオンはそう言ってくれた。
「そうか…何人くらいだ?」
「分かりません」
「そうか。一先ずリオンを調べたいと思うが大丈夫か?」
なんにせよこんなに苦しそうなリオンを放ってもおけない。
他の罹患者を調べるにしてもその後の方がいいだろう。
「はい。お願いします」
少しも悩むことなく俺に調べて欲しいと言った彼女。
そうだな。
本人がそう言ってくれたことだしこれで問題ないだろう。
「なら、見ていくぞ」
「…」
それ以上は何も言わずに無言で俺を見つめるリオン。
そんな彼女が自ら俺に腹部を見せてくれた。
白く柔らかそうなそんな肌。
それに触れると魔力を流す。
「んん…」
「変な声上げるな。気が散る」
「でも…くすぐったくて…」
全神経を右掌に集中させる。
それ以外の声も音も聞こえないと言うくらいに集中したら見えてきたものがあった。
「ちっ…!」
思わず手を離してしまった。
何だ今のは…。
何というか表の道を歩いて綺麗なものを見ていたはずが、いつの間にか薄汚い路地に迷い込みドブの中から汚水まみれの人間に腕を掴まれたかのような不快な感覚だった。
「どうしたんですか?」
俺が急に手を離したからかそう聞いてきた彼女。
何もわからない素人だろうがそれでも今の反応が尋常なものでないことは感じ取れたのかもしれない。事実俺はここで感じたくない感覚が手の中にあった。
「どうしたもくそも…な…」
もう一度手を当て原因に魔力を集中させるとそのまま消した。
原因となるものを消したり、修正すればどんなものだって快復に向かう。それは分かっていたし今回もそうだ。
今回はその原因が厄介そうなのだが…。誰かが裏で何かしているようなそんな印象を受ける。
「…あれ…何か今…楽に」
結果としては俺の予想通り、リオンの中にいた悪いものは消え去ったようだ。
その言葉を聞いてから右手を離す。
「…そのシェルヴィ様ありがとうございます。…何とお礼を言ったらいいか…」
赤くした顔でそう言ってくるがあまり聞こえなかった
「お姉ちゃん治ったの?シェルヴィ様ありがとうございます」
「あぁ…」
リオンもシオンもすごく嬉しそうな顔をしているが俺は素直に喜べなかった。
予想以上に厄介なことが起きているかもしれない。そんな漠然とした予感だけがあった。
面倒ごとにならなければいいのだがな。




