今日から始まる貴族としての生活
次の日俺達はユリ達の村を朝に経った。
そして今は新しい家の前に立っていた。
「わぁ、大きい…」
それを見て最初に声を出したのはリルだった。
「私たち…こんな素敵なお屋敷に入っても良いのでしょうか…」
エルはリルと抱き合ってそんなことを呟いている。
「問題ない。好きに過ごしてくれ。文字通り俺の家だ。ユリ達の家ではなく俺の家だ。穴を開けても構わんぞ俺の家だからな」
そう言ってから門を開けて中に入る。
門から玄関まで続く石の道。その左右には緑の芝生が広がっていて右には小さめの池もついている。
左側には小さな水遊び場がある。しかし中には水が入っていない。
「あれなにー?」
だからだろう。謎の穴に興味を示したのかそう聞いてきたリル。
「水遊び場だ」
そう答えながら魔法を使い水を入れる。
「遊びたいなら遊んでくるといい。塀は高くなっていて外からは見えないはずだ」
いや、しかしな。万が一ということもあるかもしれないということも考えた。
「待っていろ」
そう言ってあの一帯だけ魔法で壁や天井を作ることにした。
「これで他からは見えないだろう。遊びたいなら遊んでくるといい。ついでに遊泳用の衣類も用意しておいた」
そう口にしたら俺を見てくる全員。
「どうしたんだ?」
「どうしたんだ?じゃなくて…凄すぎて誰も口を開けないんですよ」
そう言いながらも何とか口を開いたのはミーナだった。
別にそんなに凄いことをしたとも思えないが。
「何、お前達を守るのは俺の仕事だ。当然のことだ。分かったなら遊んでくるといい」
「うん!」
元気よく返事をしてそっちへ走っていくリル。その後ろを追いかけるエルとアニー、それからリアだった。
「俺達は先に家に入って荷物置いたりしよう」
ここに残ったメンバーを率いて俺は先に家に上がることにした。
初めて入るが中も中で結構綺麗だった。
ハリバンの奴もいいところを紹介してくれたものだ。
「部屋は適当に選んでくれて構わない」
俺は別に個室というものは必要じゃないしユリ達に選ばせることにしよう。
「いいの?」
「喧嘩しないで選んでくれるなら別になんでもいいぞ」
「お姉ちゃん、探検しよ!探検!」
そう言ってミーナの手を引いて2人はどこかへ行ってしまう。
ここに残ったのは俺とノイとアグニエル。
「広い家に興奮してるんでしょうか?」
「そうじゃないか?」
「子供みたい…」
そう呟いたアグニエルの髪には犬の髪留め。
「お前も中々子供っぽくて可愛いが?」
「それは言わないで欲しい…」
恥ずかしそうに俯く彼女だった。
「それより…遅いな」
そう呟いた時だった。
「ごめんくださいなー!」
バカでかい声が外から聞こえてきた。狙ったかのようなタイミングだな。
「誰なんでしょう?」
ノイが不思議がっている。
「俺の客だ」
そう短く答えて出ることにした。
玄関の扉を開けたそこに立っていたのはボロ着に身を包んだ元気そうな少女だった。
こんな貴族街にもこんな少女がいることが少し意外と言えば意外だった。
肩で息をしながら俺の目を見てくる少女。少し薄汚れた金髪の間から覗く顔はまだまだ幼い、大変だな。
とは言えユリ達と同年代くらいだろうが。
「ここはシェルヴィ様のお宅で間違いないでしょうか?!」
「あぁ。俺がシェルヴィだ」
「こちら、お届けものです!ご確認ください!」
両手で山ほど持った籠を俺に渡してくる。
「ご苦労」
そう労ってから受け取るも少女は俺の顔から視線を外さない。
「どうしたんだ?」
「いえ、随分とお若いと思いまして…」
「追加のチップが欲しいという所か」
懐から金貨を取り出してくれてやる。
「い、いえそういう訳ではないんですが!それにこんなに貰えませんよ!」
そう言って両手を横に振って断ってくる少女。
「まぁ、受け取っておけ」
押し付けるように渡した俺は籠の中身を透かして見て問題ないことを確認してから後ろにいたノイに持たせることにした。
「では、受け取っておきます」
それ以上は何も言わずチップを受け取ったのだった。
「貴族の方が引っ越してくると言うので気になっていたのですがお若いんですね」
また同じことを言う少女。そんなに意外なのか。
「若い貴族というのは珍しいのか?」
「いえ、そうではなく、若い当主というのは珍しいですね。まだ10代、ですよね?」
「まぁ、そうだが」
そんなに珍しい事だったのか。
「凄いですね!10代の当主なんてきっと才能に満ち溢れている方なんですよね?!」
ちょっと不自然だったかと考えていたところだが、そうではなくそんな風に納得していた。
「まぁ何にせよ俺は当主ということだ。これからも今日みたいに配達を頼むこともあるだろうよろしくな」
そう言って手を差し出した。
「はい。ご贔屓にしてくれると嬉しいです」
俺の手を取る少女。話はできそうなのでもうすこし話をしてみることにした。
「嫌なら答えなくていいが何でそんなボロ着なんだ?ここは貴族街だろう?金がない、と言っても貴族街で働くのならもう少しマトモなものを身につけてそうだが」
「お金…溜めてるんです…」
自分の体を抱くように手を回して答えてくれた少女。
「私…家が貧乏で…唯一の家族のお姉ちゃんも病気で…それで…」
「なるほどな」
まぁ、何処にでもある不幸と言ってしまえばそうだが。
こう目の前にあると不憫に思えるのも確かだ。
「名前は?」
「シオン。シオンって言います」
「そうか。お前の家は何処にある?」
「どうしてそんなこと聞くんですか?まさか…泥棒でもするつもりですか…?お姉ちゃんは私が守りますから…」
その言葉を聞いて首を横に振った。そんな訳ないだろう。
「お前の家に泥棒に入って何か得られるのか?」
「それは…」
俯くシオン。どうやら理解してくれたらしい。
「お前のお姉ちゃんとやらを見てやろうと思っていたが不要か?」
「…お医者様なんですか?」
「まぁ、そんなところだ。その手の知識は多少はあってな」
ただの魔人が知っているのはどうだろうと思って適当な嘘をついておいた。
「でも…私お金ないですよ…」
「いや、初回ということで無料にしておいてやる」
上着を脱ぐとアグニエルに手渡した。
まだ昼か…。
「すぐ戻るだろうが遅くなったら先に食べておいてくれ。それと何も起らないとは思うが、何か起きたら頼むぞ?ノイ。アグニエル」
今俺の仲間の中でも強い2人だ。そしてそれはこの2人がいれば大抵の事は何とかなると言える程でもある。
「はい。任せてください」
「気をつけて」
各々の返事で承諾してくれる2人。
確認してからシオンの方に目を戻した。
「案内してくれるか?」
「はい。こっちへ来てください」
貴族街の事はまだまだ分からないことが多いし情勢に関してもそれは同じだ。
シオンから何が聞けるかは分からないが有益な話を聞けることを願おう。




