土地が荒れたのは誰かの仕業だったので動くことにした
大地を復活させたとき何か言いようのない違和感を感じた俺はその原因を探ることにした。
「ここか」
さっき魔力を浸透させた時何とも言えない異様な感覚を覚えたのだ。
それを感じた方向に向かって歩いたのだが。
どうやら俺の感覚は当たりだったらしく、農地から少し外れた地面の上、そこで言い知れぬ何かを感じる。
「何かあるな…」
何とも言えない空気をこの場所から感じる。具体的に何かはまだ分からないがこの場所には何かがあるのは確定したと言っていい。
「…」
無言で魔法を使うと目の前の一帯の土を掘り起こし近場に置いておく。
「これか…?」
そうしてから掘り起こした穴に目をやるとやはり何かがあった。
「…闇玉…か?」
触れたものに悪影響を及ぼすと言われている魔の玉。それこそが闇玉だったはずだが、何故こんなところに。
いくら魔王側の土地だと言え、土地はただの土地だ。
こんなものを埋められては少なくとも何かしらの悪影響が出るに決まっている。
「…」
無言で大きく開いた穴の中に降りるとその禍々しい玉に触れる。何故…これがここに。そんな疑問だけが頭の中でぐるぐると回り続ける。
「…結構大物だなこいつは…」
闇玉というものにもランクがある。これは…その中でも上の方の物のように感じた。
玉を掴んだまま穴から飛び出ると穴を埋める。
兎に角これをここに置きっぱなしにしておくというのはなしだ。
こんなものがあればいくら直しても土地は汚れ続けるだけだ。
「…」
溜息を吐いてからユリ達の元に戻ることにした。
全く面倒なことにならないといいが。
そうは思ってもこんなものがここにある時点で面倒なことになるのは目に見えているのだが…。
ユリ達と合流したあと女も呼んで酒場へとやってきた。
既にさっき俺が土地を癒した話が広まっているのか移動している途中で何度も名前を呼ばれたのが少し面倒だったが、何とかやってこれた。
「これが、何か分かるか?」
瞳を閉じて玉をゴトっと音を鳴らして机に置いた。
「また厄介なものですね…」
女の横に座っていたハリバンはその存在を知っているのか嫌そうな顔を作った。
「俺も正直こんなものを見つけるとは思っていなかった。何かの勘違いであって欲しいとこれほどまでに願った事は今までにない」
そう言いながら女を見た。別に責めているわけじゃなければ、こいつを疑っている訳でもない。
「ごめんなさい。知りません」
そして知らないことについても何か言うつもりもないから謝られたのは心外だが、まぁいい。説明しようか。
「闇玉…最悪の代物だ。1つで下手をすれば国1つ潰せると言われているものだ。その正体は負のエネルギーの塊。今は無力化しているがこんなものがあれば土地があれだけ荒れるのも当然の話だ」
「なら、あれだけ農地が荒れたのはこれのせいってこと?」
ユリの質問にただ黙って頷く。
理解が早くて助かるな。これについて知らなさそうな顔をしているが仕方のないこと。普通に生きていればこんなもの目にすることなんてことはない。
「しかし通常これは魔力を持った魔人やモンスターがその己が体内で力を使って形成するものだ。故に土の中でこれが形成されることは普通は無い。それが、どういうことかわかるか?」
ここまで言えば理解して欲しいところだが。俺が何を言いたいのかを。
「ど、どういうこと?」
ユリの理解していなさそうな声を聞いて座っていた椅子から落ちそうになった。
「誰かが埋めた可能性があるということですか?」
しかしミーナは理解しているようでそう聞いてきた。
「あぁ。そういう事だ」
いつからあるのかは理解できないがあれだけ荒れ果てているところを見るなら埋められて何日ということはまずないだろう。
これが埋まった状態で何年も放置すればあれだけ荒れ果てるのも当然だ。
「そんな…一体誰が…」
女が俯いて考えている。これで答えが出れば楽なことこの上ないのだがな。
「誰がやったことか、分かりそうか?」
「…すみません。分かりません」
「そうか」
次はハリバンに視線を向ける。
「お前はどうだ?昔からこの村にいるのだろう?」
「さぁ…分かりませんね」
一応ユリ達にも視線を向けるが二人とも芳しい反応を示してはくれなかった。
「ならば、この村の村人が荒れる前にあの辺で何かしていた、というのはないか?」
全員に聞いてみたがやはり芳しい返事はなかった。
何より管理している人間が何も見ていない、何も知らないというのであればこの村の人間が関わった訳では無いだろう。
「なるほどな。全員分からない、と」
別に責めた訳じゃないが申し訳なさそうな顔をしている。
「しかし、お陰で絞り込めた事もある。お前達が見当が付かない、と言ってくれたおかげでな」
「それってどういうことなの?」
ユリが驚いたような顔で聞いてきた。
「シェル様は誰が犯人か分かっておられるのですか?」
「いや」
ハリバンの質問に短く答えた。
「しかし、よく考えてみろ。埋めたところを誰も見ていない。誰にも託していない。となると犯人が自分で埋めたことになるのだが…こんなものを埋められるやつはそういないぞ」
それだけでかなり絞り込めるようにはなったはずだ。
埋めるのもそうだが手に入れるのも簡単ではない。悪意を持って行った上流階級の中に犯人がいると俺は思う。
これでも絞り込むのは大変だが、少なくとも見当が付かない程数がいる中から探し出すよりはマシだ。
「それって…やっぱり誰かが故意でこの村の農地を荒らそうとしたってことですよね?」
ミーナの質問に首を縦に振って答える。
「そうなるな。そしてそれ以外に考えられないのが現状だ」
少なくとも俺はそういう風にしか今は考えていない。
「現状、誰が行ったかは分からないしここにいて手に入る情報は限られている」
「どうするおつもりですか?」
ハリバンにそう質問されたが答えは既に出している。
「魔王城に近い位置に家を持とうと考えている。そこならまだまだ情報は手に入るはずだ」
俺の想像ではこの村を潰したい貴族が狙ったとしか考えられない。
「俺のユリ達に手を出そうとしたのは万死に値する。捨て置けない」
そう言って立ち上がるとハリバン達を見る。
「長い間世話になったな。落とし前をつけさせたら帰ってくる」
「お相手は貴族たちですか…お気をつけて…」
「なに、いざとなれば町ごと破壊して疑わしきは消し炭にしてやる。そう心配するな」
フハハハハと笑ってユリたちと共に家に戻ることにした。
いろいろと準備しなくてはならない。




