また変な奴に絡まれたがやはり雑魚だった。
何もなく酒場まで戻れた俺はさっそくハリバンと話すことにした。
「も、もう終わったのですか?!」
「終わった。ただの白トカゲくらい1日も要らん」
俺が皮袋を渡すと信じられないような目で俺を見るハリバン。
「普通はいくつものパーティを集めて入念に準備をした上で…更に作戦を練ってようやく倒せるモンスターなのですよ?」
「そう言われても俺は一日で終わった」
「流石はシェル様ですね」
俺を憧憬の目で見てくるハリバン。
「おいおいおい!」
ハリバンと2人で話している時だった。
勢いよく扉が開かれ外から中に入ってくる人影がいた。
「ハリバン、先程ホワイトドラゴンの素材を扱っている者がいたがあれはどういうことだ…」
「どういうことだ、とはどういうことだ?」
「お前も知っているだろう。危険度最高のホワイトドラゴンを。そのモンスターの素材が何故こんか何でもない村で出回っているのかについて聞いている」
「それが何か不思議なことか?討伐した人がいるからその人が流してくれた。それだけの事だ」
「ホワイトドラゴンだぞ?何故そんなに落ち着いている?まるで…ホワイトドラゴンが倒されたのを知っていたかのような…」
その時男は初めて俺の方を向いた。
「お前は確かシェルヴィとかいう…」
「それがどうしたんだ?」
「いや、お前は全属性のハズレだ…ありえない」
何やらブツブツ呟いて自分で答えを出していた。
「いきなり来て人のことをハズレだのナンダのと散々な言い草だな?」
「何を言おうが全属性がハズレの役立たずということは変わらん」
目を細めて俺を睨む男。
「ところでお前誰なんだよ急に来てぐちゃぐちゃベラベラと」
「な、…この前名乗っただろう?」
そう言われてその貴族風の格好をした男の全身を見て見た。
しかしその男に見覚えはない。どこかで会ったことがあるだろうか。
「いや、覚えていないな。そもそも人の名前など滅多なことがないと覚えないが」
「ザファルだ。以前貴様に決闘を挑んだだろう?」
「…?いや、覚えていないな」
そこでユリ達の顔を見た。
「覚えてるか?」
「覚えてるよ。シェルが勝ってた」
どうやらユリは覚えているみたいだが、俺には本当に覚えがない。
「あの時は油断していただけだ。思い上がるなよハズレ」
「まぁ、記憶に残らないほどつまらない決闘だった、ということだろう」
「お前…」
俺を睨んでくるザファルと名乗った男。
「俺の記憶に残らないのは特段珍しいことではない。気にするな」
「その口閉じさせてやろうか?」
「辞めておけ。シェル様に手を出したところで黙ることになるのはお前だぞ」
既にここで事を構えた結果がどうなるか分かっているハリバンはこの場を何とか抑えようとしている。
「そうだな。しょせんお前程度では俺に傷の1つを付けるどころか触れることすら叶わん」
「…口だけは達者なようだな」
「…」
ザファルが伸ばしてきた手。それを取ると床に組み伏せた。
「…?!」
全てが終わってから驚くザファル。
「な、何が起きた!」
「だから言った。お前ではシェル様には勝てないと」
俺が無言で手を離すと奴は悔しそうな顔をして立ちあがる。
「…覚えてろ」
そう言葉を残して逃げる様に酒場を出ていくザファル。
何がしたかったのやら。
「シェル様がホワイトドラゴンを討伐した事がよっぽど悔しかったようですね」
「そうなのか?しかしあの程度で悔しがるとはまだまだだな」
「ホワイトドラゴンは彼の悲願とも聞いています」
なるほどなそれを役立たずの俺が簡単に倒してしまったのは確かに耐えられないものかもしれないな。
「それは悪い事をしたかもしれんな。しかし早いもの勝ちだ」
そう答えハリバンから報酬金を受け取る。
金貨の入った皮袋は相変わらずズシリと俺の手に重さを伝えてくる。中身に関しては今回も期待できそうなくらい入っているだろうな。この重さならば。
「あまりお気になさらないでください。結局はただの戯言ですよ」
「初めから気にしてなどいない。あれ如きが俺に気にされるなど100年に一度あるかないか程度だ」
「一応気にすることはあるんだ」
俺の言葉を聞いて小さく笑うユリ。
「俺とて哀れな存在を見つければそれなりに同情したりする」
「シェルって何だかんだ優しいですよね」
ミーナも口に手を当ててクスッと笑った。
「でも、気をつけてくださいねシェル様」
「何だ?」
急に真面目な顔をするハリバン。
「ザファルはかなり地位があると聞きます。何らかの報復がないとも言い切れません」
「私怨もいいところだな」
「そうですが、油断していると足元をすくわれるかもしれませんよ」
「俺が足元をすくわれるなんてことはない。あの程度の頭で考えられることなど全て見えている」
「それは心強いですね」
ハッハッハと笑うハリバン、しかし逆にユリは鋭い目をした。
「でもそれが本当なら世界の狭間になんて飛ばされてないよね?」
痛いところをついてくるなこいつは。しかし素直に認めるのも格好がつかない。
「たまには他の世界を見るのもまた一興だと思ってな。あれは飛ばされたのではない。断じて放り込まれたのではなく俺から入ってやったのだ」
「…ほんとに?」
「ほんとだ。ほんと。俺は自ら飛び込んだんだよ。あいつらの魔法が面白そうだったんでわざと受けたのだ」
「ほんとですか?」
ミーナまで信じていないような目で俺を見てくる。
「信じろ。そうすればお前達は永遠の救いを授かれるぞ」
「シェル様だけを私めは信仰させていただきます」
手を合わせて拝むハリバン。どうやら俺に救われたいらしい。
「お前は救わん」
「な、何故ですか?!神よ。何故私をお見捨てに…」
「何となくだ」
「そんな…」
落ち込んでいる振りをしているハリバンを横目にミーナ達の顔を見る。
「そういうことにしておきます」
「そうだね。そういうことにしといてあげる」
二人とも笑顔でそう口にしていた。
「分かればいいんだよ」
「そういえば世界の狭間というのはどのような場所だったのですか?」
2人から視線をハリバンに戻すとそう聞いてきた。
「そうだな…。なんと言うか不思議な場所ではあったな。未知の生物がいたしまぁ他にもいろいろあるんだろうなと思えるようなそんな場所だった。ひとつ言えるとしたら暮らせるような場所ではないだろうな」
「でも、シェルってそんな場所で何百年も過ごして帰ってきたんだよね?凄いよね。私だと絶対無理だよー」
「そうですね。そんなことシェルだからこそ出来たことですよね。本当に凄いですよ」
ユリとミーナがそう言ってくれる。そうやって言ってくれるならあそこで長い年月を過ごしたのも無駄ではなかったと思える。
「シェル様、ところで本日はこれからどうなさるおつもりですか?」
「これから…か」
どうしようかと外を見てみるともう暗くなり始めているところだった。
「とりあえずここで食事にでもしようか」
「ありがとうございます。ご満足頂けるよう精一杯頑張らせていただきます」
「あぁ、頑張ってくれ。ユリとミーナはエル達を呼んできてくれるか?」
俺がそう頼むと二人とも嫌そうな顔をすることも無く言うことを聞いて酒場を出ていった。
カウンターに目を戻すとハリバンも奥へ向かっていった。
さて…全員揃うまで依頼でも見ているか。
次の依頼でも探しておこう。
見やすいように近いうちに章分けするかもしれません。
よろしくお願いします。




