ユリと同じ布団で寝ることになった
人間の村からの帰り道ユリと何でもない会話を交わしていた。
「ド畜生だよねシェル」
その言葉は少し心外だ。
「何だと?俺は畜生ではないぞ」
帰り道ユリにそう言われてしまった。
「何もあそこまですること無かったんじゃない?」
「あいつには俺の前に立ってもらわなくては困るからだ。俺は暇だからな。それに雑魚ばかり倒してもつまらん」
どんな敵だってちょっと指を動かすだけで初めからいなかったかのように消えていく今の俺の力。
正直そんな戦いばかりでは胸も躍らないしつまらない。
「シェルって寂しがりだよね」
笑ってそう口にすると俺の手を自分の手で繋いでくるユリ。
「俺の手を最初に繋いだのはお前か」
思えば初めて欲しいと思ったのはユリだった。それを考えれば順当なものか。
「あ、ごめん…」
「いや、離さなくていい」
手を離そうとした彼女にそう告げた。
「そのまま俺の手を最初に繋いでしまったことを一生悔いて生きろ」
「やっぱりド畜生だね」
クスッと笑うユリ。
「そうか」
「ねぇ」
「どうした?」
「私、シェルの事好きだよ」
「知ってる」
そう答えると押されてしまった。
「ばーか。シェルの馬鹿」
そんな悪口を耳にして思わず表情を柔らかくしてしまった。
「そうやって子供みたいな悪口しか言えないお前も可愛いな」
もう一度近寄ってその黒髪をかき分けて頬に触れる。
「…責任取ってよね…」
「何の責任かは分からないが嫁にすると言っただろう?」
「…お嫁さんになる」
「ようやくその言葉が聞けたか。しかし正式にお前を嫁に迎え入れるのは俺が魔王になってからだ」
そう言うと不思議そうな顔をする彼女。
「どうして?」
「他にもミーナ達も迎え入れなくてはならないのだからな。1人の魔人が多くの妻を持ってしまうと面倒くさそうだからだ。え、あの全属性の何処にそんな魅力が?とか嫉妬されるのも面倒くさい」
しかしそう伝えると納得したような顔をするユリだった。
「…じゃあ、ちょっと辛抱しないとね」
「あぁ。まだ俺の彼女1号でいればいい」
「サラッとクズみたいなこと言うよね。何よ彼女一号って」
また小さく笑うユリ。
「俺はクズっぷりも頂点でなくてはならない」
「それは難しいんじゃないかな?シェルって意外と誠実だし」
「誠実っぷりも頂点でなくてはならない」
「その2つの頂点になるのは難しくない?」
腹を抱えて笑い始めたユリ。
「なら俺は誠実の頂点に君臨することにしよう」
どちらかにしかなれないのならまだまともそうな方にしようか。
「うん。それがいいと思うよ」
ニコッと笑うユリだった。
「どこ行ってたんですか?」
「ちょっと外にな」
ミーナの質問に答える。
「どうしてユリだけ連れて行ったんですか?」
「こいつが一番嫉妬するから」
「嫉妬なんてしなかいから勝手なこと言わないでよ!」
俺の言葉に恥ずかしそうな顔をするユリだった。
「あぁ、たしかにすぐに嫉妬するのでいい判断でしたね」
「ミーナもこう言っているが、何か言いたいことはあるか?」
「ないです」
肩を落としてそう答えるユリ。でも顔は笑っていた。
「そうやって私のこと何となく知ってくれているんだって考えるとちょっとうれしいかも…」
そう言ってまだ赤い顔で俺の顔を見てそう言ってきた。
「俺もお前が喜んでくれるならうれしい話だ」
「そう言えばエル達は?」
「ちょっと用事があるとのことでお出かけしましたよ。私は留守番でした」
「そうか。ならここからの時間は三人で過ごそうか。アグニエルにアニーもいるのだ問題も起こさないだろう」
そう言って部屋にあったカードゲームを手にする。
「ルールは知っているな?」
2人が頷いたのを確認してから口を開く。
「順番は二人で決めてくれ。俺は最最後でいい」
そう言って順番が決まるのを待つことにした。
「何でシェルはカードも強いのよ」
「俺が勝利の女神だからだ」
カードの結果としては俺が一番で勝ってしまった。
ルールについて詳しいわけでもないし特段美味いわけでも特異なわけでもない完全に運だがそれでも勝った。
「さすがですよね、ほんとにシェルは勝ち続けるんですね」
ミーナもそう言ってくる。結果としては俺の手札が強すぎたせいで圧勝だった。
「ふははは、やはり俺はどんな勝負にも負けられないのだ」
不敵な顔で笑う。
「もう一回…もう一回!」
泣きそうな目で見てくるユリ。
「仕方ないな。俺を負けさせてくれ。俺に悔しさを教えてくれ!見事俺に勝ったのならばお前の言うことを一つ聞いてやる」
悔しさを知りたい俺はその言葉に頷くことにした。どうか俺を負けさせてくれ。
「やった…勝った…」
「くそ…なぜ負けた。勝利の女神たるこの俺が…」
「さっきから思ってたんですが勝利の女神であっているんですか?」
「あっている」
ミーナの質問に短く答えるとユリに視線を向けた。
「いい勝負だったな。素直に悔しいと思える戦いだった。何でもいい言うことを聞いてやる」
そう言うと少しの時間無言になったと思えば顔を赤らめるユリだった。
「同じ布団で寝たい…」
「いいぞ」
「いいの?」
恐る恐る聞いてきたユリだったが約束は約束だ。
今日は疲れて帰ってきたリルが別室ですぐに寝たし問題ないだろう。あいつが見ればうるさくなるだろうがその心配もないというわけだ。
「でも恥ずかしいかも…」
「なら私が代わりに…」
そう言って立ち上がるミーナの腕を掴むユリだった。
「…やっぱり頑張る」
そう言うと寝る準備を始める彼女。
それもまたすぐに終わった。
「来て?」
その布団の真ん中で震える口でそう言う彼女。
「あ、あぁ…」
その姿があまりにも美しくて体ががちがちになっていた。
しかしなんとかユリの横に寝ると彼女の顔がより近く似合って心臓の動きが早くなる。
「シェルの手震えてるよ?緊張してるの?」
ふと暗くなった部屋で俺の手を取りながらユリが話しかけてきた。
「当たり前だろ…」
何とか答えを返すが今俺の頭の中はまともに何かを考えられるだけの余裕はなかった。
「シェル…?」
何やらユリの声が聞こえた気がするが俺の意識は彼方へと吹っ飛んでいった。




