アグニエルを新たに迎えた日常
無事に依頼も終わったため酒場まで戻ってきた俺達。
ハリバンと会話し俺の正体に関してはむやみに他言しないようにさせることにする。
とは言え今までの反応を見て簡単に信じる奴もいるとは思えなさそうだが。
「俺の正体については黙っていろ。今は俺はこの生活を楽しみたいのでな」
「心得ました」
こうしてハリバンの口を封じておく。
とは言ってもやはり俺の力を実際に見ないと多くの奴らは信じないだろうが。
「それと試験の取付頼んだぞ」
「何時がよろしいでしょうか?」
「明日で構わん」
「分かりました。取り付けておきます」
「頼んだぞ」
これでとりあえずレベル3には上がれるはずだ。
先は遠いな。
「お前よく999まで上げたな」
隣にいるアグニエルのレベルは今思えば異常なものだ。
「私の場合は四天王だったからすぐ上がったというのもある。シェルの場合も私が推薦すれば簡単に上がるはずだよ」
「そういうものか」
「そういうもの」
「なら推薦してくれていいぞ。沢山推薦してくれたら簡単に上がるだろう」
「分かったよ。それでもこうしてシェルの役に立てるのはすごくうれしい」
子供のような笑みを浮かべるアグニエル。こう見えてまだまだ年相応なところもあるようだ。
「早く999になりたいものだ」
「のんびりしたいって話じゃないの?」
「やはりレベルは高い方がいいのだ。俺はド底辺から頂点へと成り上がる。成り上がりの神と呼ばれ、モテモテとなるのだ」
「今でもモテモテじゃ?」
「もっとだ。俺は世界中の若い女からモテるのが夢だ」
「可愛らしい夢」
クスッと笑うアグニエル。
「やはり嫁は多くいなければ俺ではない。今の俺の彼女は8人しかいない。一先ず10人目指したいところだな」
「その8人って?」
「ユリ、ミーナ、エル、リル、アニー、リア、ノイ、アグニエル。これで8人だ」
そう口にすると嬉しそうな顔をする彼女。
「私も入れてくれるんだね」
「当然だ。お前が望むのならば俺は拒むことはせんよ」
俺を羨望のまなざしで見てくるアグニエル。
「流石だ…レベルが高すぎる…」
「そうだろう。俺のレベルは999すら超えている」
腕を組み不敵に笑うと彼女も顔を緩めた。
「それより今日はこれからどうするの?」
「これからはユリ達と遊ぶ予定だ。ドキドキ王様ゲームだ」
「何それ」
不思議そうな目で見てくるアグニエル。
「俺が王様役となってお前達に命令しまくるゲームに決まっている」
「…?」
首を傾げてまだ理解していないようなそんな顔をするアグニエル。
「とりあえずやって見ればわかる。来い」
彼女の手を引っ張って部屋に戻ることにした。
「これよりドキドキ王様ゲームを始める」
「何それ?」
「何なんですか?」
ユリとミーナが疑問の声を上げる。
「今から説明するから待っていろ」
机を真ん中に置いてその周りを囲むようにソファを魔法で移動させた。
「リア」
「はい、なんですか?」
「菓子を持ってこい」
「分かりました」
頷いて部屋の隅からお菓子を持ってくる彼女。
それを受け取り机の上に置いた。
「まぁ座ってくれ。話はそれからだ」
「何なんでしょう?」
「分かんない」
色々と思うところはあるらしいが、各々それでも座り始めてくれた。
「にしてもまさかドキドキ王様ゲームを知らない奴がこんなにいるとはな…」
「だからそれ何なの?」
「落ち着け。今から説明してやるから」
ユリの言葉にそう返す。
全員が座ったのを見届けてから俺はユリの右に座った。
そして俺の右にはアグニエルがいる。
「ルールは簡単。俺が王様になりお前達に命令し続けるだけだ」
「何それ、つまんなさそう」
辛辣な感想を包み隠すことなく言ってきた彼女。
「いや、面白いから黙って聞くのだ。なら先ずユリに命令を出すぞ。1枚脱ぐのだ」
「何で?」
「俺が脱げといえば脱ぐのだ。いいから早くしろ」
「この変態…」
文句を言いつつも脱ぐのが可愛いところだ。
「脱いだけど…」
「暑くないのか?」
何枚来ているのかは知らないが1枚脱いだところで何も変わらなかった。
「こんなこともあろうかと着込んでおいたの」
「未来予知でも持っているのか?しかし全部脱がせるのが楽…」
「何考えてるのかなぁ?」
「何も考えてないです…」
すごい剣幕で見られてつい王者の風格を崩してしまった。
俺としたことが…。
「それより先だ。ミーナにも命令をくれてやろう」
「な、何なんですか?」
「ユリをもう1枚脱がせ…」
「もう一度言ってみてくれる?」
言い終わる前に笑顔を浮かべているユリに突き飛ばされてしまった。
その間に俺から主導権がユリに移ってしまったようだ。
「それよりつまらないから私が命令するね」
「私から順番にシェルの悪口を言うこと」
全員を見回して最初にユリが口を開く。
「変態」
「変態です」
「変態なのはダメだと思います」
「シェル変態なの?」
「中々変態だな」
「まさか…シェル様がそんなに変態だなんて…」
「シェル…変態だったんですね」
ユリからノイまで全員が俺をそう罵倒した。
「俺は変態ではないぞ」
「…いや、変態だよ」
諦めたようにそう口にするアグニエル。
「俺が変態ならこの世の中の全てが変態ということになるが…いいのか?」
「その謎の自信はいいから。それより次はお姉ちゃんが王様しようよ」
「それはいいですね」
ユリの言葉を受けて両手を軽く叩いたミーナ。
まるで名案だとでも言いたげな顔をしている。
「ならシェルの告白タイムといきましょう。もう一度みんなにその口から愛を語ってくださいね」
そう言って笑顔で俺を見る彼女。
「ふ、求婚などもう済ませてるだろう?」
「もう一度私たち一人一人にしてください」
「また後でな…」
「こら、逃げるなぁ!」
立ち上がって逃げようとしたところユリに捕まった。
「いやいや、勘弁してくれ…」
「勘弁しませんよ」
そうにっこり微笑むミーナ。
「調子に乗って悪かったな。今日は全員俺の隣で寝てもいい権利をやる」
「ほんと?」
「本当だ俺は嘘をつかない。存分に眠るがいい」
そう言うと全員俺の周りで寝る準備を始めだした。
「…今更ドキドキ王様ゲームの始まりかよ…」
1人小さく呟いて寝ることにする。
ドキドキする胸を抑えて瞳を閉じる。
すぐ隣からユリの息遣いが聞こえてくるが聞こえないようにして目を閉じた。




