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作戦に参加したはいいが、どうやら俺の出番はないのかもしれない

暫くして戻ってきたユリ達を連れて俺達は早速移動し始めた。


「ギルドってのはそこそこ金があるんだな。こんなものを用意するなど」


「ダークエルフの森は死守しておきたいところだからな」


俺達は地を走るのではなく空を飛んでいた。

正確には俺達が飛んでいるのではなく黒いドラゴンの背に乗っているのだが。


「しかしこいつを倒せば俺はギルドに評価されるのでは…?」


「おい、辞めろよ?」


「冗談だ」


ハリバンの言葉にそう返す。

流石にここでこいつを墜落させるつもりは無い。


「キュゥゥゥン…」


ドラゴンも情けない声を上げている。

俺の冗談は通じないのか?


「しっ」


ハリバンがその時口に指を当て俺たちを黙らせた。


「何だ」


「そろそろ降りるぞ」


そう言って奴がドラゴンに何か合図を送ると高度を下げ始めた。

そうしてドラゴンの上から完全に降りられる程に高度も下がった頃。


「お疲れさん」


声をかけながら地に降り立つ。


「ここからは徒歩で移動してくれ。こいつでは目立つからな」


ハリバンがそう指示を出してきた。


「あぁ、分かった」


「キュゥゥゥン…」


「ドラゴンの癖に俺に示す敬意を理解しているのか」


頭を俺に差し出してきたその熱意に免じて頭を撫でてやる。


「珍しいな…こいつがギルド関係者以外に触らせるなんて」


「俺の偉大さをこいつも理解しているということだろう」


「それは、どうだろうな」


苦笑するハリバン。


「私も触るー」


そう言いながら近づこうとしたユリだが


「何なのよ!」


前足で止められていた。


「嬢ちゃん普通は触らせないから気にするなよ」


「うぅ…触りたかった…でもそれなら仕方ないよね」


そんなに落ち込んでいる様子でもない。


「さぁ、行くがいい」


頭から手を離す。

名残惜しそうな表情をしているがこれ以上続ければユリがうるさそうだ。


「終わったと連絡があれば迎えに来る」


「あぁ、頼む。まぁここで待っているのが一番いいのだがな」


「流石に日数がかかるだろ?」


「いや、秒もいらん」


「言うな。しかし決められたことだ。また迎えに来る」


そう言ってドラゴンを操り帰ろうとするハリバン。

それを見送ってからユリ達を率いて歩き始める。





歩き続けたところ2人の門番の前まで来た。

2人が槍を交差させて門を守っている。


「失礼ですが許可は得ているでしょうか?」


「話は通っていると思うが、俺の名はシェルヴィ」


「カードの提示をお願い出来ますか?」


「ほら」


手に持ったそれを渡す。

2人で確認し合ってからそれを返しながら口を開く1人の兵士。


「確認できました。どうぞ」


そう言って2人共扉を開いてから脇にズレた。


「…」


2人の俺を見る目は芳しいものでは無い。


「なぁ」


「はい?どうしましたか?」


「いや、特にこれといったことじゃないんだがお前らは防衛戦に参加するのか?」


「しますよ」


「丁度いい。全属性の印象を覆してやるから目ん玉洗っておけよ」


「…?」


本当にそんなこと出来るのかと本音を隠しきれていない表情をしている。


「期待して待っていろよ?」


ふはははと笑いながら村の中に入る。奥へ奥へと進んだ。





森は外観からは想像出来ないくらい意外と広かった。

1つの国程の大きさあるかもしれない。

俺が入ったのはいくつかある村のうちの一つらしい。

そしてその酒場に入っていく。

ここで説明が行われているそうだ。


「少ないな」


人間が本気で攻め落とすというらしいのにここにいた人数は少ない。


「あんたがシェルヴィとかって人か?」


「あぁ、そうだ」


酒場の店主の声に答える。


「先にカードを見せてもらっても?」


「ほら」


「レベルひっくいね…いくらハリバンの推薦だからって無茶すぎる」


「そんなに低いのか?」


「これならまだゴブリン狩ってるレベルでしょ?しかも全属性…ハリバンも何考えてんだか…あんたあいつの恨みでも買ったの?どう考えても厄介者を減らすために送られたとしか思えないけど」


「そうなのか?」


「あんたのレベルでこの依頼は本来受けられないよ。何せ相手は人間。しかもその人間の中でも狩人の連中だって言われてる。狩人の人間ってのは今この世界で一番恐れられてる連中。それを相手にあんたみたいなのが使われるって…死んでくれって言われてるようなもんだ」


「俺は死なんよ」


「そんな自信満々の顔されてもな…」


頭をかく店主。


「しかしまぁ良かったね。ここは比較的人間が観測されていない方だから。奴ら南に人数を集中させてそっちから一気に攻めるつもりみたいだからこっちは数が手薄だよ。良かったね」


「人数など俺の前では無意味だがな」


腕を組む。


「…あぁ、聞いてはいたがほんとに井の中の蛙なんだな」


「好きに言え」


「忠告してあげるけど無理はしないでくれ。あんたみたいな馬鹿が無駄に命落とすところ何回も見てきたから」


「その言葉後で訂正させてやる」


はははと笑う男。


「訂正させて欲しいものだ。全属性もやるもんだって、な」


「で、作戦開始は?」


「あいつらの気分次第だね。でも明日の朝だって言われてる」


「俺は朝起きれないぞ」


「起きないとあんたも死ぬよ。と言いたいところだけど今回ここにいるのは少数精鋭だし人間の方も手薄。多分あんたが寝てても勝手に終わるよ」


「つまり俺は戦力外通知されたも同然ということか?」


「そうだね。狩猟レベルが低すぎる…どうしてあいつも推薦したんだか…」


瞬きしたあとまた俺を見る店主。


「…まぁいい。ここ出てすぐのところに宿があるから今日はそこで寝て」


「分かった」


そう言ってユリ達を誘い宿に移動することにした時だった。


「ちょっと待って他の奴らも一応カードを見せてくれ」


「待ってる」


俺を見てくる、ユリ達にそう伝えて空いている席に座ることにした。


「全属性だってなお前」


隣に座っていたやつに声をかけられた。


「全属性の奴が来るって聞いたからどんなやつかと思ったら予想より弱そうなやつで笑えるわ」


そう口にしたのは鎧を身にまとった男。


「わざわざ雑魚の称号を背負ってまで全属性を選んだんだから、よっぽど凄いのかと思ったけどただの頭の悪い奴だった訳か。いや、笑わせてもらった」


「なんとでも言え。後でその口閉じさせてやるから」


「だってよ、どう思うよ、お前ら」


男がそう言うと周囲も俺を笑い始める。


「流石、全属性様だ。期待してるぜ」


「うっそぉ受けるぅ。どう見ても弱そうなのに、無理でしょ。可哀想だから辞めたげなよー」


「…はぁ…」


しょせん魔王の肩書きがない俺の見た目なんてそんなもんらしいな。情けなさすぎてため息が出てきた。


「ちょっと泣かないで全属性ちゃん」


「泣いてなどいない」


「強がって可愛い。それよりこの髪の毛何?もしかして女の子?なら俺らとちょっと遊ばなぁい?」


ニヤニヤしながら近付いてくる奴ら。


「強がってかわいいな」


「俺もちょっと可愛がっちゃおっかなぁ」


両サイドに俺を挟み込むように座ってきた男達。


「お前達…1人によってたかって恥ずかしくないのか?」


「お?何だお前?今いいとこなんだよ邪魔しないでくれるぅ?」


そうして俺を守ろうとしてくれたのはアニーだった。

別に口出ししてくれなくてもいいんだが


「それより君も可愛いね。一緒に遊ばない?」


「触れるな」


自分の腕に触ろうとした男の手を弾くアニー。


「ねぇいいっしょ、一晩だけさ」


「そうだよ一晩だけだからさ」


「…断る」


「おぉ、怖。断るだってさ」


「嬢ちゃんいい体してるよね」


そう言って触ろうとした男の腕を立ち上がって掴む。


「何が言いたいか分かるな?最後まで口にさせるな?」


「分かんねぇから教えて欲しいなぁ?」


「その汚い手でこいつに触るなと言っている」


「き、きたな…?」


「その臭い体で近寄るなと言っている」


「ちょっと…シェル…」


「お前…いい加減にしろよ?」


1人が掴みかかってくるがそれを避けて足をかけてこかす。


「てめぇ!」


もう1人がぶん殴ってきたがそれも避けてこかす。


「やるなら外でやってくれ」


その時やっと店主が声をかけてきた。


「…てめぇ…」


それを無視して掴みかかってくる男達。


「無駄だ」


両手の指で立ち上がる前に額を抑える。


「こうされるだけで立てないだろ?」


男たちの顔に浮かぶのは恐怖の色だった。

それを見てから指を離す。


「く、くそが!」


「覚えてろよ!」


そう言い残して出ていく二人の男。


「やるじゃねぇか兄ちゃん」


「すげぇ!」


さっきまで俺を煽る側だったヤツらがそう口にしている。

その場の雰囲気で行動を決めているのだろうな。別に咎めはしないが。


「この程度息をするのと同レベルだ」


ふっと笑う。


「すげぇ!」


より一層の声が上がった。


「その、ありがとう」


アニーも礼を言ってきた。


「礼など要らん。寧ろお前を守るのはヒーローの役目だろ?」


その頬を撫でた。


「周りが見てる…」


「見させておけばいい」


「よくないわよ!」


ユリの掌打が顎に入った。


「死ぬ…」


「あ、ごめん…大丈夫?」


頭がかなりクラっときた。


「だが、悔いはないぞ…」


視界が眩んできた。


「でも立ってるし大丈夫だよね?」


「…」


それを聞いて倒れることにした。


「やばい…死ぬ…」


「見え見えの演技今更しても仕方ないよ?」


それを見て周りが笑う。


「さっきの動き見せられた後であの攻撃で死なないってみんな理解してるぞ」


ガヤがそう声を飛ばしてきたし諦めて起き上がることにした。


「それより話は終わったのか?」


「うん」


「シェルヴィって言ったな。その子達には先に戦線に出てもらうことにした」


店主の言葉に疑問を覚えた。


「何故だ」


「お前より能力値が高かったからだ。全員問題なさそうだと判断したからまだ攻撃が緩そうなところを担当してもらうことにした」


「それなら俺も出させろ」


「いくらなんでもそれは難しい。さっきも言ったがお前の能力値というかステータスはこの中で最低だ」


「最低…?」


「あぁ。最低。レベルは低いし全属性だし…俺から見たお前を最初から使うのは怖すぎる。死にに行くようなものだぞ」


「…何でもかんでも数値で判断するなよ?」


「そう言われても今回の作戦の指揮は俺がすることになっている。言うことは聞いてもらう。独断で動けば報酬は出せないし、試験の話も聞いているがなしにさせてもらう」


「…くそ…」


久しぶりに怒りを感じる。

なんだよそれ。全部全属性だからって理由でそうなるのかよ。


「分かってくれ」


「あぁ、分かったよ」


ユリ達を手招きして酒場から出る。もう寝よう。



誤字報告ありがとうございます。

気付きませんでした。

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