料理は作らせるからできなくても問題ないのだ
俺、ユリ、ミーナとアニーの四人で料理をしていた。
「そこ違いますよ」
ミーナから指摘が入る。
「味付けなんか雑なくらいで丁度いいのだ。それが俺流なのだ」
「良くないよ。食べるのシェルだけじゃないんだからちゃんと作ってよ」
俺の腕を掴んで止めようとするユリ。
「そうだな。食べるのはシェルだけじゃないんだからちゃんと作って欲しい」
アニーもそう言ってきた。ここに俺の味方はいないのか…?
「エル達に負けるよ?」
「いや、俺の勝利は決まっている。何故なら俺が料理をしたというだけでポイント換算1万点くらい入るからだ」
「またズルするの?」
「ズルではない。これは約束された勝利なのだ。俺に敗北はない。ふはははは」
「…ダメだこりゃ…」
「何がダメなのだ。俺はルールを守って戦っているというのに酷いな」
「守ってないじゃん…味で勝負するんじゃないの?」
ユリが心配そうに聞いてくる。
「俺が調理しただけで味が1万点分アップする。分かったな?」
「だからその謎の加点辞めて」
「謎の加点を辞めれば俺が作った料理でエル達に勝てるわけがないだろ」
「…言っちゃいましたね」
ミーナの一言。それから全てが崩れるのは早かった。
「もう…チーム編成の時点で俺達の敗北は決していたのだ。もう腹を括るしかない。ここは俺が男らしく1人で腹を括ろう」
「流石…シェルだな…」
俺の潔さにアニーはそんな声しか出なくなっていた。
「俺に初めて敗北を刻み込んだエル達を褒めてやることにしよう。もうこれ以上やっても無駄なのだ」
調理していた鍋から手を離して火も止めた。俺たちに勝ち目はない。
「何故、向こうには2人も料理出来るやつがいてこっちにはミーナしか出来るやつがいないのだ。勝ち目などないだろう」
「私の腕は認めてくれてるんですか?」
「当たり前だ。お前の料理は俺に振る舞うに値する」
「それは嬉しいです。ありがとうございます」
「俺を喜ばせる料理が作れるようになるならば幾らでも褒めてやろう」
「そうです。私は褒められて伸びるタイプなんです」
胸を張るミーナ。
「今夜俺の部屋に来るがいい。夜通し褒め殺してやろう」
「本当ですか?」
「俺に二言はない」
「お姉ちゃんだけズルい」
「ならお前も来るがいい」
ユリにもそう言う。
がもう1人のアニーにも目を向けるとチラチラ俺を見ていたところだった。
「アニーも来てもいいのだぞ」
「本当か?」
「俺に二言はない。ただ俺は一人しかいない。取り合うなよ」
「行く」
顔をパアッと輝かせているアニー。
「さて」
鍋に目を戻すが無理だ。もう敗北は決まった。
「ミーナ。ここから出来だけ…食べられるくらいには修正しといてくれ」
「分かりました」
「どうですか?」
「初期のあれを考えればここまでよくやったものだ」
思ったことを口に出した。俺が何でもかんでも投入していた時に比べればかなりマシになった。
ミーナがそういう風に直してくれた。
「後で頭を撫でてやろう」
「ありがとうございます」
そして料理が入れ替わる。今日作ったのはハンバーグだ。
「どうぞ」
次はエル達が作った分だ。
皆の前に運んできたのはリル。
「俺に敗北を認めさせたこと全世界に誇るがいい」
「負け認めるの早くないですか?」
リアが聞いてきたが勝てないものは勝てない。
「お前達の勝ちだ。俺には無理だ」
食べなくても分かる。俺達が作ったものよりよっぽど美味そうなのだから。食べなくても分かる。
何せ向こうには料理経験があるのがエル、リアの二人いるのだ。勝てという方が無理だ。
そして聞くとノイも一応料理はしたことがあるらしいし。無理だ。
「シェルがめちゃくちゃにしなかったらまだあったのになぁ」
「終わったことをぶつくさ言うな。俺だって頑張ったのだ。それで良しとしよう」
「それもそうだけど」
何か腑に落ちないのか俺を見るユリ。
「そう言えばどうして私には素材の1つすら触らせてくれなかったの?」
「お前の指が大切だからだ」
両手を握って目を見てそう伝えた。
「お前は俺の嫁候補だろう?指を台無しにするな」
「…だから嫁じゃないって…」
顔を赤くしているが何とか質問を回避できた。
それから出てきたものを口に入れる。
「…完敗だ…」
やはり勝てるわけがない。
ここまで美味いものを作られて勝てるわけがないのだ…。
直ぐに食べ終わってしまった。
「エル達の勝ちだ」
「悔しいけど…勝てないな…」
俺もユリ達も同じ答えを出していた。
「ちゃんと覚えてるよね?負けた方が勝った方の言うことを聞くって」
「あぁ。覚えている。しかしな俺も男だ。俺が4人分の言うことを聞こう」
そう口にしたリルの顔を見て返す。
「流石シェルですね…」
そう呟くエル。
「何を頼みたいか考えておいてくれ。俺は部屋で待っているぞ」
「そんな事でいいのか?」
「はい」
初めに来たのはエルとリルだった。
エルの望みはエルとリルを対等の存在として見て欲しいという事だった。
「しかし俺はお前達を対等な存在として見ていたぞ」
奴隷扱いした覚えはない。なにか命令することはあっても格下として見たつもりは無い。
「そうだったんですか?」
「少なくとも俺は奴隷扱いしたつもりは無い」
「偉そうな喋り方するからだよ」
同じ部屋にいたユリがそう口を挟んできた。
「そうだな…余計な考えをさせてしまうし改めようとは考えているがな…中々治らないし調子に乗ればついどんどん態度がデカくなるのだ」
「なら、私みたいな丁寧な話し方してみませんか?」
エルがそう提案してきた。
「これでいいのか?」
「…全然違うと思いますけど…」
「まぁいい。で、望みは何だ?永遠の命でも不老でもくれてやるぞ」
リルが先に口を開いた。
「私はシェルにお兄ちゃんになって欲しい」
「俺がリルの兄に…?」
それは考えてもいなかったな。
「うん。お兄ちゃんって呼びたい」
「別に構わないが」
「やったっ。ね、お兄ちゃん」
そう言って俺の腕に抱きついてくるリル。
「おんぶして」
「いいよ」
リルを背中に載せ、立ち上がった。
「まさか兄になるとは思わなかったな」
「お姉ちゃんはいるけどお兄ちゃんも欲しかったんだよね」
えへへと笑うリル。
「俺がそれになれるかは分からないが頑張ろう」
「お兄ちゃんは最強だから大丈夫なんでしょ?」
「それは間違いないな」
2人で小さく笑う。
「で、エルの望みは何だ?」
「それなら私は3人で外に行きたいです」
「リルと俺とエルでってことだな」
頷くエル。
「分かった。俺がいなくなるからって泣いたりするなよ」
「誰が!」
顔を赤くしてそう言うユリと笑顔で手を振るミーナ、その2人を背に外に出る。
ブクマありがとうございます。
新作も並行して書いています。そろそろ投稿できそうです。




