元魔王様名前を捨てる
句読点の修正を行いました。他細かい修正を行いました。
物語に変化はありません。
最初の村では門前払いを食らったので他の村を求めてさまよっていたら、違う村が見えてきた。
「村に入れるか?」
のだが門の周りで何かをしていた奴らがいたから声をかけてみた。
「ん?いや、まだだな。それよりあんた誰だ?遅れてきたのか?分からんが作戦に参加するなら早く整列してくれ」
「作戦?」
こいつらを見た時から感じていたが門番じゃないのか?
「そうだ。早く並んでくれ」
「仕方ないな」
誰に命令をしているのか分からせてやりたいところだが俺は紳士だ。
男の後ろに並ぶことにした。
「おいおいそんなボロボロの装備で大丈夫かよ」
横にいた男がそう笑った。
確かにボロボロではあるが装備には頼らないし裸でなければそれでいい。
「問題ない。ところでなんの作戦なんだこれは」
「村の襲撃だろ。とぼけてんなよ」
「襲撃?」
「あぁ。ダークエルフの奴隷は値段がつくんでな。そのための襲撃って訳だ」
わざわざ説明する男。
なるほどな。事情は理解した。
「やはり、神たるもの奴隷の一人や二人は必要だ」
「?」
横にいる男は訳の分からなさそうな顔をしたがまぁいい。
「いくぞぉ!!!!」
先頭が村に入っていくのに続く。
「きゃー!!!」
「くるな!」
村の内部ではあちこちから直ぐに悲鳴が聞こえ始めた。
「抵抗は無駄だ!武器を捨てこちらにこい!」
「…」
その人間の言葉に抵抗を辞めるダークエルフ。
「おい、俺はそんな簡単に諦めるなと言ったな」
失望した。
群れを離れてまず最初に武器を捨てた男に詰め寄る。
「これが今のダークエルフなのか?」
「誰かは分かりませんが、人間には…勝てませんよ…目をつけられたなら従うしかない…」
「はぁ…」
ため息が出てくる。俺は魔王になった後にこんな軟弱な奴らを作り出したのか?
「命だけは…」
そうして縮こまる男。
「おい、あんた何してんだ!戻ってこい!」
後ろから人間の声が聞こえてきたが無視だ無視。
「決めたよ。俺はお前らのために剣を取ろう」
ダークエルフに背を向け魔力で作る剣、魔剣を生み出す。
右手には黒の魔剣 左手には光り輝く白の魔剣。
「その代わり終わったら水をくれ」
そう言って駆け出す。
「ひ、ひぃ!!!!!」
ものの数秒で逃げ始めた5人の人間達。
「人間など呆気ないものよ」
両方の魔剣を消しつつダークエルフに近付く。
「あ、ありがとうございました!このご恩は一生忘れません!」
「水をくれ。それとご恩は忘れても構わん」
喉がカラカラだ。このままではまた脱水で死ぬことになる。
死んでも復活するから真に死ぬことはないとは言え死にたくはない。それに流石にカラカラ過ぎて辛い。
「は、はい!」
「お兄ちゃん、ありがとう!」
その時男の後ろから女の子が出てきて俺に抱きついてくる。
「無礼者、勝手に触れるな」
「ご、ごめんなさい…」
しゅんとする少女。
「好きなだけ触るがいい」
しかしそれを見て直ぐに訂正する。
そんな顔をするな。水を貰えなくなったらどうする。
「ありがとう、お兄ちゃん!」
スリスリと顔を俺に擦り付けてくる少女。
「お持ちしました」
「あぁ、ご苦労」
男を労ってからコップを受け取り水を飲み干す。
雨が一切降らなかった荒地に水を与えるかのように、ガラガラだった喉に潤いがもたらされた。
「この辺りでは見ない顔ですがどちらから?」
世界の狭間からと答えたところでどうせ信用されないだろうな。
それにふと思った。このまま別の名前で活動してもう一度魔王になるのも悪くない、と。どうせ今の魔王は別の奴がなっているはずだ。ならもはやクシナの名前に価値はないかもしれない。
それに俺一人が吠えたところで信じてくれないだろう。
「少し遠くからな。名をシェルヴィというシェルとでも呼んでくれ」
そう言って男に手を差し出した。
「強いですねシェル。私を村を娘を守ってくれてありがとうございました」
「何、気にするな」
あの程度朝飯前どころか息をするのと同レベルで出来る。
それでこそ世界最強の魔王として君臨できるというものだ。
「それより魔王軍が没落したように見えるが」
俺が魔王として君臨していた時より活気がない。何より人間が攻めてきて直ぐに降参するとは何事だ。
「クシナ様が行方不明になってからずっとこうですよ。知らなかったんですか?」
「知らん。俺の村ではずっとクシナが最強で魔王軍は最強だと聞かされてきた」
俺がいる以上そうでなくてはならない。それよりも気になることがある。
「ちなみにクシナがいなくなってから何年になるんだ?」
あの世界では時計もなければ、昼夜もなかったし時間の感覚が狂った。
「500年以上前です」
「たったそれだけで魔王軍が落ちたのか?」
「たったかは分かりませんが、はい。落ちました」
「嘆かわしいことだ」
実に嘆かわしい。俺がいなくては勢いを維持すら出来ないのか?
「出来損ないのクズ共揃いというわけか」
「そのような言葉遣い辞めた方が宜しいですよ。今の魔王様はそのような言葉遣いをする者に厳しいので」
「そうか。気を付けよう」
それと一つの考えがあった。今まで激動の日々だった訳だしのんびり過ごすのも悪くないと。
まぁ何をするにしてもとりあえず寝床だ。
「ところでしばらくこの村に暫く留まりたいのだが宿か何かはあるか」
「あ、ありますよ」
「案内してくれ」
「こちらへ」
誘われるがままついていく。
「汚い宿だな」
有り得ない汚さだ。魔王がこんなところで寝るなど有り得ない話だが仕方ないか。
「そ、それでは」
男が娘を連れて去っていく。
それを見ていたのかダークエルフ共がわらわらと近寄ってきた。
「村を救ってくださりありがとうございます!」
「た、助かりました!お礼がしたいのですが…こちらをどうぞ!」
何人かが俺にコインを渡して去っていった。
大したことはしていないが貰えるものは貰っておこう。
どうせ俺の顔など知らない奴が多いだろうこの時代は。全く生き辛いものだ。
「…」
俺が現役だった頃は顔を見せるだけで何でも無料だったのにな。
「まぁいい。あの程度で金が手に入るなら何とでもなる」
さて、中に入ろうかと思ったが、料金表を見ると貰った分では足りないことに気付いた。
先に金が必要か。酒場を探しそちらに向かう。
獣人やダークエルフ、魔人の行き交う道を進んだ。
誰も俺に話しかけないのは新鮮でもあったが、同時に悲しくもあった。
今日はもう一話更新予定です。




