赤沢優香ちゃん行方不明事件
都内某所で囁かれ続ける不気味な現代型都市伝説。
赤沢優香ちゃんは当時10歳。都内のファミリー向けマンションで暮らす、ごく普通の少女だった。
両親は共働きで、帰宅はいつも20時頃。いわゆる鍵っ子で、学校から帰ると一人で留守番をするのが日常だった。
事件当日、夕方17時42分。母親がパート勤務していたスーパーに、一本の電話が入る。
受話器の向こうから聞こえたのは、優香ちゃん本人の声だった。
「ママ、大きな口のおばさんが来たよ」
それだけを告げて、電話は切れた。
悪戯だと思った同僚もいたが、母親は言い知れぬ不安を覚え、急いで帰宅する。
玄関は施錠されておらず、優香ちゃんの靴はなし。
玄関、窓も、ベランダには侵入の痕跡は一切なかった。
そしてリビングのテーブルの上には、優香ちゃんが持っていた家の鍵が整然と置かれていた。
マンションの防犯カメラには、ただ一つの映像だけが残されている。
夕方のエントランス。
駅へ向かう優香ちゃんと、黄色い雨合羽を着た髪の長い女性。
深く被った合羽のフード、大きなマスクから顔は判別不能。
二人は手をつなぎ、ゆっくりと歩いていく。
だが、それ以降駅構内、商店街、交差点、周辺施設。
どの防犯カメラにも二人の姿は一切映っていない。
まるで、その瞬間に現実から切り取られたかのように。
事件は迷宮入りし、やがて人々の記憶からも薄れていった。
10年後。
赤沢家に一つの大きな荷物が届く。
差出人不明。
中身は、成人式用の立派な振り袖一式だった。
添えられていた手紙には、たった一文だけ。
「おとなになったよ」
そして封筒の中には、束ねられた髪の毛。
DNA鑑定の結果、それは赤沢優香ちゃん本人のものと完全一致した。
あの電話の「大きな口のおばさん」とは何だったのか。
黄色い雨合羽の女は何者だったのか。
そして、優香ちゃんはどこで大人になったのか。




