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第八話:健気なヒロイン

休み時間の教室。読書にふけるレオンハルトに、アリスが声をかける。その身には、彼女の武器である「魅了の魔術」をたっぷりと纏わせて。


「私、王太子様にお願いがあるの。庶民だったからこそ分かるんです。偉い人たちが民を愛することこそが、国を良くするんだって……」


潤んだ瞳でレオンハルトを見つめるアリス。


(きっと彼は、国を憂う健気な私を意識するはず! さあダーリン、カモンッ♡)


期待に胸を膨らませる彼女に対し、レオンハルトは至極冷めた目を向けた。


「……で、君は今まで具体的に何をしたの?」


「へ?」


予想外すぎる反応に、アリスは目が点になる。


「そこまで豪語するなら、当然地域に色々貢献しているよね? どんな改革や活動を行ってきたんだい?」


「それは……。今は学生の身ですし、卒業したらレオンハルト様たちと一緒に、学んだことを活かして!」


必死に健気な女の子を演じるアリス。だが、レオンハルトは鼻で笑った。


「ふっ。学園に通わずとも、立派に領地を管理運営している令嬢を僕は知っているよ。君と違って、見返りなんて一切求めずにね」


彼の脳裏に浮かぶのは、「王は民のためにある」と言い切ったあの令嬢の姿だ。


「そんな……私だって未来のために一生懸命……っ」


泣き出すアリス。魅了の力で周囲の同情を引こうとしている――が、レオンハルトにはすべてお見通しだった。


その様子を見ていたカイルが、案の定、激昂して立ち上がる。


「おい! アリスの頑張りをバカにするな!」


(……こいつ、完全に魅了にかかってやがる。議長の息子、終わってるな)


呆れるレオンハルトだったが、すぐに「この状況、使えるな」とニヤリと口角を上げた。


そばにいたルーカスが、その表情に気づいて引きつる。(あ、レオンハルト様の悪巧みオーラだ……)


「うん、君の想いは伝わったよ! カイル、彼女も君と一緒にアイーゼ連合国を盛り上げていきたいらしいんだ」


「え? いえ、私は王太子様と――」


「よし、この僕が君たちの仲を認めようじゃないか!」


アリスがことわる隙を与えず、レオンハルトは言葉を被せた。


「この熱き二人に祝福を!!」


わぁーっ! と盛り上がる周囲の生徒たち。


「ち、ちがう……!」


首をぶんぶん振り回して否定するアリスと、「いやぁ、そんな……照れるなぁ」とデレデレし出すカイル。魅了にかかりまくって、もはや哀れである。


(こんなはずじゃなーーーーい!!)


アリスの顔面は絶望に染まり、心の中の絶叫が表情だけで手に取るように分かった。そんな彼女の壊れっぷりを眺め、レオンハルトは満足げにほくそ笑む。


その様子を横で見ていたルーカスは、(……うわ、性格悪)と、主のあまりの黒さに少しだけ引いていた。


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