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第七話:筋肉の過剰攻撃

「もう、これ以上のイベントはいらない!」


そう言わんばかりに、レオンハルトとルーカスは寮を目指して早足で進んでいく。


だが、世の中そんなに甘くはなかった。


昇降口を出たところで、豪快な声が響き渡る。


「待っていたぞ! 王太子レオンハルト!!」


黒い瞳を爛々と輝かせ、大剣を肩に担いだ赤い髪のワイルド系イケメンが、二人の前に立ちふさがった。


(またかよ……)


今日何度目かの事態に、心底げんなりする二人。


「俺はガウル・ヴァン・ブラッドレイ! 防衛総監の息子だ!」


「この鍛え抜かれた筋肉で、お前に勝負を挑む!」


言いながら、筋肉を強調する気持ち悪いポージングを次々と繰り出すガウル。


「うわ、僕こういう系、生理的に無理なんです。あとはよろしくお願いしますね」


さっさと一人で逃げ出すルーカス。


朝から続く刺客(自称・運命の相手と自称・ライバル)による波状攻撃に、レオンハルトの忍耐力はすでに限界を突破していた。


「…………」


冷めた目で、ガウルを見やるレオンハルト。


彼はスッと手を伸ばし、指先に魔力を集めて一言放った。


「グラビティ(重力魔術)」


どぉぉぉぉん!!


凄まじい衝撃と共に、ガウルが地面に深々とめり込んだ。


「ぬぉぉぉぉ―――!?」


ガウルの叫びが虚しく響く。


あまりに無慈悲な光景に、周囲で見守っていた生徒たちは一瞬で凍りついた。


「さあ、ゴミ掃除は終わったよ。行こうか」


爽やかな笑顔を浮かべ、スタスタと寮に向かって歩き出すレオンハルト。


「……ご愁傷さまです」


ルーカスは、地面に埋まったガウルに向けて静かに手を合わせた。



(新人影エリカ)


エリカは当初、これはぬるい仕事だと思っていた。


これでもヴァルデンライヒ王国諜報部初の女性諜報員として、トップの成績を収めて勝ち取った座なのだ。


事前の説明では、護衛は不要、雑用さえこなせば良いと聞いていた。


だが、現実はそこまで甘くなかった。


「え、六人同時に調査するんですか?」


ターゲットのあまりの多さに、エリカは思わず引いた。


一方、レオンハルトの目は完全に据わっている。


「あぁ。なるべく早めに、詳細な情報が欲しい」


(あいつら、絶対に許さない。社会的に抹殺してやる……!)


瞳の奥で暗黒の炎を燃やしながら、レオンハルトは淡々と告げた。


「影の長なら、これくらい容易くやり遂げてくれるんだけどね。……君には、まだ難しいかな?」


「――っ、いえ! やらせてください!」


安い挑発に、まんまと引っかかるエリカ。


(所詮は新人だな……ちょろい)


心の中で邪悪にほくそ笑む腹黒王太子。


こうして、王族の無茶ぶりに身を削る「影」が、また一人誕生したのだった。


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