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第十話:深夜の潜入

こんなはずでは……。


追い詰められたアリスとイザベラは、一発逆転の策を講じることにした。


選んだ手段は、夜更けの男子寮への潜入。


静まり返った寮の廊下に、二つの影が忍び寄る。


まずはアリスがレオンハルトの部屋に忍び込んだ。彼女は脳内で完璧な勝利のシナリオを描く。


(レオンハルト殿下に可愛く訴えかけるの。魅了の魔術を全開にして、瞳を潤ませて……。


『私……レオンハルト殿下のことが忘れられないんです。本気を受け止めてくれませんか?』


ふふふ、これで殿下を落としてみせるわ!)


「よいしょっ」


彼女はベッドの下へ潜り込んだ。



その五分後――。


今度はイザベラが部屋に忍び込んだ。彼女もまた、自身の勝利を確信している。


(レオンハルト殿下に艶っぽく迫りますわ。


『わたくし……レオンハルト殿下だけは他の男性とは違って見えましたの。わたくしを欲してくださいませ』


ホホホ、これで殿下を骨抜きにして差し上げますわ!)


「うんしょっ」


彼女はクローゼットの中へと身を隠した。



その直後だった。


部屋のドアがバァン!と勢いよく開く。


現れたのは、レオンハルトとルーカス、そして数名の警備員。


「ハイ、カクホー」


ルーカスが感情の籠もっていない棒読みで、警備員に淡々と命じた。


「えっ?」


「はい!?」


隠れ場所から無慈悲に引きずり出されるアリスとイザベラ。


「ちょっと、なんでアンタがここにいるのよ!」


「それはこちらのセリフですわ!」


連行されながらも言い争いを続ける二人を、レオンハルトとルーカスは死んだような目で見送った。


「……ねえルーカス。もう、王国に帰ってもいいかな」


疲れ切ったレオンハルトの声が室内に響く。


「……陛下に、早期帰還の相談をしてみましょうか」


同じく弱り切ったルーカスが、深く溜息をつきながら答えた。



翌日、学園の掲示板には一枚の張り紙が出された。


【公示】


下記二名、男子寮への不法侵入につき二週間の停学処分に処す。


・アリス・ヴァン・リヒテン

・イザベラ・ヴァン・コルド


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