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スペシャル1 クリスマス・イヴ

 ――どうしても、この季節(きせつ)だけはセンチメンタルになる。


 中学に進学したころからだったかな。この日のために、街は(きら)びやかに着飾(きかざ)られていくというのに、街行く人は感情を()き出しにするというのに、私は(さみ)しかった。


 ひとりぼっちだったからかな? どうだろう、わかんないや。


 でも……ひとりだから寂しいとか、そういうのとは違う気がする。もちろん、ひとりよりも誰かと一緒の方が落ち着くのかもしれないけれど。


 私は、改札(かいさつ)をでたところの(まど)から、とあるものを見下ろした。それは、深緑(ふかみどり)の木にイルミネーションがあしらわれている。私とは正反対に、地上からそれを見上げるカップルたち。彼らは恍惚(こうこつ)とした表情をしていた。


 カップルか。カップルね……。カップルに(あこが)れたことは一度もないんだよね。楽しそうだし、実際に楽しいけれど。ミミさんと結ばれる前も、(うらや)ましいとか(うら)めしいとかは思わなかった。だから、私と彼らを比較(ひかく)して寂しいって思うわけじゃないんだよね。


 じゃあ、何でなのかな。


 ……。……うーん、やっぱりわからない。


 でもまあ、この感情は不快(ふかい)じゃないし、嫌いじゃない。いつも感じる寂しいとは種類が(こと)なるから。私にとっては風物詩(ふうぶつし)のようなもの。寂しいな……今年もこの季節が来たな……ってそんな感じ。


 あー、もしかしたら寒いからかな? 身体が()えてさ、(こご)えてさ、寒いーってなってさ、それで寂しいって感じるのかな? ほら、だって心が冷えるって表現があるんだし。


 ……違う、違うな。だって冬じゃなくても寒いって思う瞬間(しゅんかん)はいくらでもあるし、そのときは別に寂しいって思うわけじゃないし。考えれば考えるほど(なぞ)だ。


 それにしても……まだかな……ミミさん……。ミミさんから「イヴの夜にデートしない?」って(さそ)ってきたのに……。来たらチョップ確定(かくてい)だな、優しくね。


 来ないなんてないよね……? 私、一応オシャレしてきたんだよ……?


 「アイアムベアー」って(さけ)んでるクマさんのプリントTシャツと、白のもこもこダウンを新調(しんちょう)したのにな……白好きだな私……。


 はあ……。……あっ。息が白い。もっと見たい……!


 はあ、はあ、はあ、ふーっ。うー、白い! 冬だっ! もっと見たい!


 ふー、ふー、はあ、はあ、はあ……。


「何やってんの……」


「ひんっ?!」


 幼稚(ようち)な遊びを見られた、と慌てて(きびす)を返すと……そこに、天使いた。


 (こん)のジャケットに、無地(むじ)の黒T。そして黒のショートパンツ。太ももが寒そうな格好(かっこう)をした天使の正体は、ミミさんだった。


 私は、彼女に見惚(みと)れてしまっていた。大人っぽいと感じたのだ。服装も大人っぽいけれど、今日の彼女は前髪を上げて、髪を流していたのだ。普段はツインテールなのに。くっ……可愛い……。


 (かた)まる私に、ミミさんはジトッとした(ひとみ)を向けてきた。

「はあはあ言ってさ、変態(へんたい)さんだったよ? 周囲(しゅうい)の人も引いてたし……」


「は、恥ずかしい……! ミミさんのせいです!」


「どうしてそうなるのっ?! あたしは遅刻(ちこく)しただけだよ?」


堂々(どうどう)と遅れないでください! もう、私、楽しみにしてたのに!」


 ふん。そっぽを向いて、私は口先を()がらせた。すると、その口もとに人差し指が当てられた。

「あたしもめっちゃ楽しみでさ、何を着ていこうか、髪型はどうしようか、どんな顔すればいいか、そんなこと考えてたら遅くなっちゃってさ。……ごめんね?」


 か、可愛い……。ミミさんも楽しみにしてくれてたんだ……。


 私は、彼女の指にちゅっとして、手を差し出した。

「ロータリーにクリスマスツリーがあるんです。行きましょう?」


「そだね。行こっか!」


 ぎゅっ。彼女と手を(つな)いだ途端(とたん)、手先だけじゃなく、全身がぽかぽかする感覚に(おちい)った。


 今年の冬は、例年よりもセンチメンタルだ――。

ご覧いただきありがとうございました!

ぜひ次話もご覧くださいませ!

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