42 下等なる存在
依頼→クエストに書き直しました。
俺たちは掲示板へと行きクエストを眺めた。俺としてはどんなクエストがあるのかワクワクしている。
「ふぅ面倒です」
キュクが静かだと思っていたが単純に人の真似をしているのが面倒らしい。
「ロプス様いいことを思い付きました」
「却下な」
「ギルドマスターを脅してSランクを手に入れましょう」
「多分くれないと思うな」
キュクさんなんでこんなに過激なんですかね……。
「哭かぬなら拷問にかけよホトトギスと言いますし」
「言わないよ?そんな物騒な句無いよ?」
あと鳴くの字が違う気がする。
そんな何時もどうりの会話をしながら張り出されているクエストを改めて見た。
『・ドブ掃除
・薬草採集
・ゴブリン討伐
・迷い猫探し
・引っ越しのお手伝い
・新聞配達……etc.』
俺たちのランクで出来そうなクエストはこんな感じである。
隣の冒険者らしき少年が薬草採集を剥がしカウンターへ持って行った。
これだとクエストは一人しか受けられないんじゃ無いかと思ったが掲示板に再び薬草採集のクエストが書かれた用紙が浮かび上がって現れた。
なるほど……こうやって何回も受けられるクエストもあるのか。
カウンターでは、受け付けの人がクエスト用紙に「ダン」とハンコを押していた。
冒険者らしさに拘りすぎだろ……。
「昔の転生者か召喚者が作ったのでしょうか」
俺たちは薬草採集とゴブリン討伐を剥がしリーシャさんの所へ持って行った。
「この2つを受けるのですね?どちらも期限は存在しないクエストとなります。がんばって下さい」
リーシャさんにダンとハンコを押して貰い移動しようとするとヌッと俺たちの前へ立ちふさがる奴が居た。
「おいおい、こんなガキが冒険者だぁ?ギルドの質も落ちたもんだぜ」
話かけてきたのは筋肉質な大男だった。後ろには仲間らしき男が二人いた。一人は身軽そうな小男でもう一人は細身の男だった。
いずれも髭を生やし微妙にだらしない格好をしていた。
「こ……これは、テンプレ!」
「チッ」
驚く俺とあからさまに機嫌の悪くなったキュクを無視し男は話かけて来た。
「なぁメイドさんよぉ。そんなガキ放っておッ…………」
「アニキ!」
「テメェ何しやがる!」
にたにたと笑い近付いて来た男達の先頭、筋肉質の男の膝をキュクは踏み抜き反対方向へと曲げた。
「誰に口を聞いているんですか?殺しますよ?」
「ええぇぇ」
キュクさんはテンプレがお気に召さなかったらしい。
「ぎゃあああぁぁぁ痛てえぇ痛てぇええええ」
「あ……アニキしっかり【ヒーリング】」
「ふ……ふざけてんのか!!」
細身の男は治癒術を使い大男の足を治している。小男はナイフを抜き構えた。
それを見てキュクは殺すかと動こうとした時だった。
「双方、争いは止めて下さい!!!」
リーシャさんの怒声が響き渡った。
「ロプスさん達はいきなり相手を攻撃しないで下さい!これ以上やる場合冒険者資格を剥奪しますよ!!」
凄い剣幕で俺たちへとそう言うと今度は男達を鋭い目で見た。
「ベンツさん達もこれに懲りたら新人冒険者と問題を起こすのはやめて下さい。
今、医者を呼んだので直ぐに来ますからそれを仕舞って下さい!」
リーシャに怒られ小男はこちらを睨みつけたままゆっくりとナイフを仕舞った。
「てめぇ……覚えてろ……」
ベンツと言うらしい男は俺たちを睨みつけたままそう吐き捨て奥から来た医者の人達に連れていかれた。
後で報復的なのがあるかもしれない恐い話である。
「ベンツさん達にも問題はありますが直ぐに手を出すようでしたら冒険者資格を剥奪することになります。気をつけて下さい」
リーシャさんはプリプリ怒りながら俺たちへと再度警告をする。
「チッ」
「…………」
「やーすみません」
キュクはゴミを見る目をしてリーシャさんを一瞥しギルドの入り口へと歩いて行く。俺は厳しい表情をしたままのリーシャさんに一応謝罪をした。
周囲でこちらの様子を伺っていた冒険者達へ向かっても手を振っておいたが目が合うと反らされた。
俺たちはギルドを出るとクエストをこなす為に門へと向かって歩きだした。
ー◇ー
ロプス達が立ち去ったギルド内は喧騒を取り戻し今あった出来事を話始めた。
「はぁ……また問題児が……報告しないと……」
リーシャは今しがた現れた破格の問題児の存在に頭を痛める。
ベンツ達のパーティは確かに新人に絡み問題を多々起こすが個々の冒険者ランクはCであり中堅冒険者である。
いわゆる適度に力があり素行に問題のある冒険者である。
そんな冒険者を防御する暇も与えず一撃で戦闘不能に追い込むのは新人ではあまり居ないのである。
もし現れたらその多くは転生者か召喚者であり大体がロクなことにはならないのだ。
「今の凄かったね~」
「また転生者かな……はぁ……」
「リーシャ時々こういうの当たるよね~」
肩を落とすリーシャに同僚のアーニャが話しかける。アーニャはおっとりとしたタレ目の兎の獣人である。
耳も垂れておりふわふわとした白色の髪と同じ色をしていた。
「また……私ばっかり……前もセクハラばっかりするオジサンとかくるし……」
「あの人出入り禁止になったんだっけ~」
言わずもがな変態である。ギルドで出禁とは只者では無い。
どうやって仕事する気なのだ。
リーシャはブツブツと気を落としながらもギルドマスターへの報告書を纏める。
「はぁ……冒険者の人って何で変な人が多いんだろう……」
「そこまでじゃ無いと思うけどね~」
単純にリーシャが変態に好かれているだけである。
「とりあえず報告してくる」
「いってらっしゃ~い」
リーシャはフラフラと立ち上がりアーニャと受け付けを替わるとギルドマスターの部屋へと歩いて行った。
ー◇ー
外に出て薬草を探すことになり俺はふと気がついた。
「薬草ってどこで取れるんだ?」
「その辺りの草原でも取れるそうです」
キュクは何やら本を取りだし読んでいる。
「ネイビーのドロップアイテムにありました」
「本当何者だったんだネイビー……」
恐らく只のヤンデレでは無いことは確かである。
「この本によると薬草はどこでも取れる雑草の一種だそうです。まぁ適当に歩いてもロプス様ならば手に入るでしょう」
「その根拠は?」
「【神直感】がありますから」
「あったね。そんなの」
俺もすっかり忘れていた。そういえば使ってない経験値もあったな……。
手に入るのが少ないから慎重に使わないとな。
「じゃあ適当に歩くか」
「はい」
俺たちは街道を外れ草の生い茂る草原を散歩する。
「~~♪~~♪」
どうやらキュクの機嫌も直ったらしいどうもキュクは人嫌いの傾向があるようだ。
街の中にいる時は注意した方がいいかもしれないな。
適当に歩いて薬草を見つけた俺たちはそれを採取しゴブリンを探すことにした。
薬草はクエスト達成には一本でいいが多ければその分追加報酬が入るらしい……面倒なのでやらないが。
ゴブリンは森を散歩すると現れた。
「メスダ、ガキハコロソウ」
【ゴブリンセット】のおかげか言葉は分かったがゴブリンは何処かの雑魚のようなことを言っていた。
「ケケケ、オレノガキハラマ……」
聞くに耐えないので【ノイント】を服の下で開き、空中に作った氷柱で刺し殺した。
すると背後からそのゴブリンの仲間らしきゴブリンが姿を現した。皆一様にボロ布とこん棒しか身に付けていなかった。
「ケケケ、メスダ」
「メスダ」
「ガキハコロセ」
もはや流れ作業である。ゴブリンを全て氷柱で貫いて殺した。
「ゴブリンってこんなのばっかなのか……」
「知能があると言っても獣と同じですから」
「これなら人にモンスターは殺せって言われるのも納得だな」
俺は何とも言えない気持ちになる。
「レベルが低いモンスターは獣と同じです。レベルが高いモンスターならば意思疏通が出来る者もいるでしょうが会話しても意味は無いでしょう」
「なんでだ?」
「アレらも所詮は人と大して変わらない者ばかりですから」
キュクの言い方だと俺たちは違うように聞こえるが……。
「ロプス様はロプス様ですから」
意味は分からないがまぁいいか。何かあればその時考えよう。
「それではどうしますか?」
「クエストも達成したし街へ戻るか」
俺たちはまったりと歩き街へと戻った。
ヒロインは外道です。




