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進化先の選択肢がおかしい件  作者: 紫扇
2章 その目にうつる月の杯
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38 リスク度外視

どうする?

⇒町を壊滅させ手に入れる

 他の方法を探す

 他の条件を提示する


 ピッピッピ


どうする?

 町を壊滅させ手に入れる

 他の方法を探す

 他の条件を提示する

⇒殺してでも奪い取る


ピロリーン


 確かに町を壊滅させるのは難しいかもしれないが何とかなるかもしれない。

 だが、また上まで上がって降りてなど面倒なことはお断りである。


「面倒くさいのでお断りします。ゴミが調子にのるな」


 キュクさん穏便に断ってください。


「き……貴様!生きて帰れると思うな!!」


 レビスアルドは激昂し立ち上がり全身から魔力を溢れさせた。


「【我が敵を撃ち苦痛を与えよ】【デモンズボルト】」


 レビスアルドがその手を振るり俺たちへと向けると黒色の雷が俺たちへと向かって飛んで来る。

 キュクはそれを背中から【あくまの腕】を生やし掴む。

 【あくまの腕】は黒色をした細い筋肉質な腕で使ってみるととても器用なことが分かる腕である。

 【デモンズボルト】はキュクの【あくまの腕】に掴まれ稲光を周囲へと雷を撒き散らす。

 キュクは【あくまの腕】の手のひらに【ノイント】を開き【理をほどく眼】によって得た魔法の情報に自分の魔力を乗せる。


「返します」


 雷は激しさを増し周囲の悪魔を消し炭へと変えながらレビスアルドへと投げ返された。


「クッ……不条理な!!貴様あの【災禍の者達(カラミティ)】に連なる者か!!!!」


 レビスアルドは雷を魔力障壁によって防ぎ切るとより強い怒りを露にした。


「許さぬ……我をここへと追いやったばかりか……またもこの様なことを……」


 レビスアルドの怒りに同調するように周囲の悪魔達の力が増幅していく。


「「「オオオオオオオオオオオオ」」」


 周囲の悪魔達から魔法が、矢が飛び俺たちへと向かってくる。キュクは背中の【あくまの腕】を増やしそれぞれ個別に魔法を放つ。

 【あくまの腕】にはゾゾゾゾゾと【ノイント】が開き輝く。

 俺たちの周囲に爆発が起こり氷の柱がぶつかり合い鋼の刃が飛来し火花を散らす。


 視界を完全に埋め尽くす破壊の余波の中からその身に鎧を纏った悪魔の騎士が抜けてくる。手にした剣を振りかぶり槍を突き出す。


「「「オオオオオオオオオオ」」」


 俺は触手を出し正面の剣を弾き槍を絡め取り悪魔ごと投げ飛ばした。背後から槍を突きだした悪魔はキュクの【むしの腕】が穂先を弾き【おにの腕】で悪魔を殴り周囲のぶつかる魔法の外へと飛ばす。


「……!!」


 キュクは【魔力把握】で魔力の高まりを感じる。


「【暗き水】【冷たき闇】【重き底】」


 それはレビスアルドの魔力である。

 周囲の風景を歪める程の濃密な暗き青の魔力が世界に染み広がる。


「【深き彼方へ】【我は重さと苦痛を与える】」

「単文詠唱……!!」


 キュクは呟く。それは魔法の威力を殆ど変えず詠唱を省略する技術である。


「【デモンプレッシャー】」

「……クッ!!」


 その瞬間俺たちの体が重くなる。全身にズシリとした何かが乗っているような重さに耐えられず膝を着く。

 その隙を突くように周囲の悪魔が攻撃を放ってくる。

 キュクは眼を閉じ再び開いた。その眼には時計が刻まれその針をグルグルと回転させている。


「『加速』」


 ドムッと音がすると俺たちは悪魔の囲いを破り右方の悪魔へと肉薄する。


「ナッ!?……キサマ……」


 悪魔が驚愕を露にすると同時その頭を移動した勢いのまま蹴り抜く。

 キュクは蹴りにより勢いを殺し床をギギギと踏みしめ方向を変え次の悪魔を【おにの腕】で殴り、掴み、引きずる。

 背後より追ってくる悪魔の騎士へと振り向き【おにの腕】に持った悪魔を投げつける。悪魔は砲弾のように他の悪魔を巻き込み吹き飛んだ。


「はああああああぁぁぁぁ!!」


 キュクの握り締められた【おにの腕】がレビスアルドへと迫る。

 対しレビスアルドは腰の剣を抜くと拳へと叩きつけた。


 豪!!と周囲へ破壊の衝撃が広がる。


「この理不尽さ!!不条理さ!!馬鹿馬鹿しい程の強さ!!」


 レビスアルドはキュクの拳と拮抗しながら俺の触手を障壁によって防いでいる。


「許さぬ!!許さぬ!!!!」


 レビスアルドは右手の剣を振りキュクの拳を叩き落としながら左手に魔力を収束させる。


「貴様ら【災禍の者達(カラミティ)】は決して許さぬ!!!!」

「チッ……!!」

「【デモンズグロー】」


 レビスアルドの左手から闇の光線が放たれる。キュクは体を左へと倒れ込ませながら光線を躱す。

 キュク【おにの腕】の一本を床へつき右側の【腕】によってレビスアルドを攻撃しようとする。

 レビスアルドは数瞬剣を溜めるようにし呟く。


「断空」


 ゾワリと悪寒が体を駆け抜ける。

 キュクは『加速』を使い【腕】を引き戻すと後ろへと飛び退いた。キュクがいた場所をレビスアルドの剣が袈裟切りに通り過ぎると離れた所にいた俺たちの体が斜めに寸断された。


「なっ……!?」


 俺は【ふぇにっくすセット】の超再生を使い体を無理矢理繋げる。キュクも同じように体を繋げレビスアルドから距離を取る。


「断ち切られた体を一瞬で戻すとはやはりバケモノだな」


 レビスアルドは毒づき再び詠唱を開始する。

 俺たちはレビスアルドから離れた場所に移動したことにより再び他の悪魔に周囲を囲まれた。


 さっきの断空とかってのは何だ?ヤバすぎる。

 俺たちは悪魔の攻撃を回避し打ち上げ撃ち落としながら作戦を考える。


(剣術スキルのLv6断空でしょう)

 技……か?

(はい、スキルでは無くメイドスキルなどと同じスキルによる技です)

 Lv6って凄いのか?

(人間だとバケモノクラスですね。Lv8の断絶でなくてよかったです)

 もし断絶だったら?

(不死だろうと再生不可のダメージで死にます)

 剣術ヤベェ……。

(人間でそこまで到達したのは古の勇者だけなので普通は有り得ないかと)

 古の勇者スゲェな……。


「【我は水底より出でる】【凍てつきし手を持って】【地へと触れる】」


 レビスアルドの先ほどの言葉から俺たちを一撃で殺す為の魔法を使おうとしているのだろう。

 レビスアルドは剣も強く魔法も異常なレベルで威力がある。何よりあの障壁を超えダメージを与えるには相当な力が必要だ。

 俺はキュクへ策を伝え準備に入る。

 目に【時計仕掛けの眼】を現出させ『加速』と『収束』を使い魔力を生み出し集める。

 キュクは周囲の悪魔を寄せ付けず殴りつける。


「【凍てつく光は空へと落ち】【天を貫く】【我は水底の女王】【我は地獄の氷狼】」


 全身へと魔力を貯めこんでいく。俺とレビスアルドの魔力で周囲の空間が悲鳴を上げ揺れを起こしている。


「【我は天を穿つ雷の鎚】」


 俺たちの周囲にいた悪魔達が自分達の主人の攻撃を悟り離れる。


「【ディアリミデル】」

『極光』


 レビスアルドの放った雷は周囲を凍らせ俺の放った九色の光の束と衝突する。

 俺の『極光』は広範囲の攻撃なのに対しレビスアルドの雷は一点集中攻撃のようだ。俺の『極光』を少しずつ削り食い込んで来る。

 だが、俺は一人じゃ無い。


「【我は望む】【アンプリファー】」


 キュクが魔法を放つと極光の途中に幾枚もの魔法円が現れる。

 それを通過する度に『極光』は輝きを増しレビスアルドの【ディアリミデル】を飲み込みレビスアルドをも飲み込み周囲を光で染め上げた。



 俺たちがチカチカする目を擦りながら周囲を確認するとレビスアルドのダンジョンは吹き飛び狂信のダンジョンへの入り口が上に見えた。

 散らばる瓦礫に目を移しレビスアルドがいた所を見た。

 レビスアルドは全身を焼かれ死に体でそこにいた。


「完敗だ。我の敗けだ。アイテムなり何なり好きにするが良い」


 それだけ言うとレビスアルドは目を閉じ動かなくなった。


【異界:レビスアルド城のダンジョンを踏破しました。

ボーナスが付与されます。【経験値10万】となります。

 称号『狂気の果てで踊る者』『悪魔殺し』を得ました。】


 レビスアルドの持っていたアイテムが俺のアイテムボックスへと流れ込んでくる。

 レビスアルドのアイテムから解呪の効果のあるアイテムを取りだしキュクが俺に振りかける。

 これは?


「解呪の魔法薬です。これ一本で大体庶民の家が一軒立つそうです」


 何も変わった気がしない。


「そんなものでしょう」


 俺たちは目的を果たしたのでダンジョンから出ることにした。

 方法だが……どうやって戻るか……。

 かなり上の方に異界から狂信のダンジョンへの入り口がありそこまでの道は完全に崩落していた。


 するとバサリと音がし体が浮き上がった。

 キュクを見ると背中に翼が生えていた。そういえば【ふぇにっくすセット】の腕は翼だったんだな……。

 キュクはバッサバッサと飛ぶ練習を少しするとスイスイ飛び始めた。


「それでは戻りましょうか」


 そうだな俺たちは横目でレビスアルドが魔素へ徐々に体が変わっているのを確認すると狂信のダンジョンへ戻った。



 狂信のダンジョンへ戻る入り口を潜ると水の中だった。

 何を言っているか分からないと思うが俺もわけがわからない。


「どうやら先ほどの攻撃が異界のダンジョン内で膨れ上がり唯一の逃げ場の狂信のダンジョンの入り口へ殺到したようです。

 その結果、狂信のダンジョンの天井を抜き地下水脈の水がここに流れ込んだのでしょう」


 じゃあ真っ直ぐ上がれば外に出れるのか?

「恐らく」

 よし外の奴等に気付かれないくらいの速度で出よう。

「わかりました」


 キュクは【さかなの足】を使い水を蹴り上の方へと向かう。

 ダンジョンの中部まで水が流入しており上にいくほど光が近づいてくる。

 キュクは勢いよく水から飛び出すとその勢いのまま【ふぇにっくすの翼】を使い空へと飛び上がる。

 飛び上がる瞬間水面と大気がドンと音を鳴らしたので音速を超えたのかもしれない。


 俺が水面を飛び出したと思い目を開くと次に見たのは冒険者の町ウルバクと草原、そして少し離れた場所にあるグラスのような穴と流れ込む水だった。


 気づいている方も多いと思いますが作者は目と書いた時は自信の一つ目を、眼と書いた時は他の魔眼などを指して書いています。

 腕なども同様に腕と【腕】で別けています。

 また、腕が生えたキュクの姿などがイメージしづらい方は背中から羽が生えるのをイメージして下さい。

 羽の代わりに腕が生えます。


 書いててレビスアルドかっこよくね?と思っていた作者です。


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