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進化先の選択肢がおかしい件  作者: 紫扇
2章 その目にうつる月の杯
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39 蠢く災禍

 ロプス達が空の彼方へ飛び立った後のダンジョンに空いた大穴の縁に闇が這い出す。

 徐々に勢いを増しそれはズズズズズと闇を引きずりながら人の形へと変わった。


「これが原因か……」


 それは男だった。

闇よりも深い黒と髪に鮮血の赤を混ぜたかのような色をしたボサボサの長髪を適当に流し、深い闇のようなマントを着た壮年の男だった。


「これを単体で行ったとすると……一応警戒が必要か?」


 男は顎の髭を軽く撫で思案する。

 突如、男に対して巨大な闘気が破壊の力を撒き散らし飛んで来る。

 すると男の周囲を赤黒い硬質な壁が覆い闘気を完全に防いだ。


「相も変わらず不躾な小僧だ」

「ハーッハー俺と戦え!!!」


 男へと空から声が響き渡る。

 それは青年だった。黒い髪をヤマアラシのように後ろへ真っ直ぐ立たせ、ボクサーパンツ、そして手足に包帯をしたまさに闘志といった青年だった。

 そんな青年が空から落下してきたのだ。青年は軽く着地すると体から莫大な闘気が溢れだし周囲を炎のように赤く染める。

 男は面倒そうに大穴を軽く顎で示した。


「貴様もこれを見に来たのだろう?」

「そうだったが、お前がいるなら話は別だ!!!!」


 冷静で渋い声を出す男とは裏腹に青年は気合い十分といった調子でとても大声で答える。


「やれやれ、鬱陶しい男だ」

「オッシャーーー!!!!」


 男は静かに右手をマントから出し刀剣を造る。青年は拳を握りしめ歯を剥き出し笑う。

 一触即発の空気が漂う中におよそ場違いな声が二人へと割って入った。


「こらーまた、こんな所でケンカしてー」


 それは少女の声だった。

 11歳ほどの年齢の金髪のツインテールをした少女が二人のいる大穴の反対側から声を上げたのだ。


「おいたばっかりしてると、おしおきしちゃうぞ☆」


 少女はフリルの沢山付いた青のドレスを振り手に持ったステッキを二人へと突きつける。


「また面倒な」

「めんどくせぇ」


 その少女を見て男と青年は辟易とした声を出す。


「もーなによ失礼ね(怒)」


 少女はプンプンと怒っている。


「ふん……」

「あ、逃げんな」


 男は再び闇に紛れるとその場から消え去った。


「じゃ、俺もいくわ……北か……」


 青年は消えた男を見て走り出した。


「あーーこらーー」


 少女は走っていく男に怒りはしたが追うことは無かった。


「はぁ……まぁいいわ」


 少女もまた大穴を一瞥し消えた。


 ー◇ー


 1週間ほど前ウルバクのギルドマスターは『蒼窮の若草』の者達に報告を受けた。それは人型モンスターがダンジョン内に侵入したというものだった。

 すぐさま冒険者に注意を促し情報を集めた。

 その後そのモンスターがどういった目的を持っているのか調べる為に捜索隊を結成しダンジョン内を調べる準備をしていた。

 町の間はポータルと呼ばれる大型転移魔道具によって以前よりも格段に移動しやすくなったがダンジョンは未だに徒歩など以外の移動方は無かった。

 それはダンジョンに転移禁止などの効果が付いたものが多いことが原因である。

 故にダンジョンを捜索しようと思うと時間がかかるのであった。


 その夜、ウルバクのギルドマスターはダンジョンへ送る冒険者の選定をし準備を整えながら紅茶を飲んでいた。

 すると、莫大な魔力を感じたのだそちらを見ると町から離れた草原の中から空へ向かい光の柱が立っていたのだ。

 それが魔力の柱であることは分かったが……あまりに巨大であった為その光の柱が消えるまで暫し呆然としてしまった。冒険者ギルドのギルドマスターとしては珍しいことだがそれも無理からぬことである。


「ーー!!……あちち」


 ギルドマスターは手に持った紅茶を膝に掛けてしまったことで正気を取り戻した。秘書などは未だ呆然としている。


(な……なんだ今のは戦略級魔術でもあれほどの威力はでないぞ)


 ギルドマスターは呆然としている秘書へ声を飛ばし自分も魔力の放出があった場所へと向かうために立ち上がった。




 そして、ウルバクのギルドマスターは発生場所へ行き愕然とした。

 そこにはポータルを使い駆けつけたハリーや護衛の為に着いてきた暴雨剣者達もいたが皆、一様に驚きを示した。

 そこには……ダンジョンの底まで続くような大穴があった。その大穴には水が流れ込み並々と波打っている。

 大穴は民家を四つか五つは横に並べられそうなサイズをしていた。

 だが、彼らを震え上がらせる出来事はそれだけではなかった。

 大穴の縁に巨大な拳を叩きつけたような形で抉れた跡があったのだ。あまりの威力だったのか大穴の縁辺りの部分は穴の中へと崩落していた。

 それを見て誰かが呟いた。


「【災禍の者達(カラミティ)】」


 ハリーは月を見上げ大変なことが起こりそうだと溜め息をついた。


 この日、狂信のダンジョンに起こった異変は直ぐ様中央ギルドへと伝えられ世界中に注意が促された。


 それは、世界を巻き込んだ宴の序章でしか無いことをこの時の人々は知るよしも無かった。


風邪をひきました。

一応2章終了となります。

3章はついに冒険者などと絡んでいく出会いの章になります。

少し文章量を減らしうまく纏めたいなと思います。

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