第八話 ツアー参加
「ところでさ、僕と友達にならない?」
「…偽物の友達ってのはな、良い面しといてソイツを落ちぶれさせるために行動すんだよ。誰だお前は?」
俺は声のする方へと振り返り、声の主を確かめた。
友人になろうと声をかけてきた青年は、飄々とした表情をし、「ツレないなー」などと言っている。
歳は俺よりも少し下だろう。十六,七と言ったところか?多少は経験を積んでいるのだろうが、まだ新人に片足残した様な風体の冒険者だ。
訝しむ俺を見て、あどけなさを残した青年は更に言葉を続けた。
「僕はベージャム。六等級冒険者さ。あんたこの街に来て間もないだろ?良かったら僕が案内するよ。もちろん、冒険者としての旨い情報も売るよ?お金、困ってるんでしょ?」
パーティーランク同様、七段階に分けられる個人ランク。ベージャムと名乗る青年、彼個人の技量はそれの六等級だと言う。
身なり通りの実力なのは分かった。だが何故だ?
俺は確かにこの街に来て間もない。昨日到着したばかりだからな。街に到着し、ギルド職員との話し合いで一日を過ごし、食堂で夕食と朝食を取った。
それだけだ。パーティーメンバー以外では、ヴェロニカとしか会話をしていない。それなのに何故、コイツは俺たちの動向を知っているんだ?
見慣れない冒険者パーティーが現れれば、多少は注目を集めるだろう。それは分かってる。だが、普段よりも警戒心を強め、俺はこの街に来た。だからこそ、それだけではない気がしてしょうがない。
三日前に夜襲を受けた俺は、アリーナに不躾な視線を送る男共に加え、周囲を警戒していた。貴族様への積荷、その内質のいい調度品は村に置いてきたし、少女は街の冒険者ギルドに届けたのだ。間違いなく恨みを買っているだろう。
ギルド側が俺たちの情報を漏らすわけもない。夜襲を受けた際、一人逃げ出したヤツから漏れたのか?
俺は湖からの出来事を一つづつ思い返していた。
「…お前、ベージャムと言ったか?昨夜、食堂で俺たちの近くに座っていたな」
夕食時、魔法に憧れていたジモンの斜め後ろ。そこに位置するテーブルで、俺たちに視線を向けていた青年だと俺は思い出した。
「せいかーい!聞くつもりは無かったんだよ?けど聞こえちゃってさ。ちなみに、さっきの朝食のときは後ろに座ってたよ。仲間と一緒にね」
嫌らしく笑い、片手で金を表現する青年。いかにもな感じがするコイツを、俺は信じ切れなかった。冒険者としての情報は同業者から集めるのが一番だ。俺もそうしようと考えていたが、何もコイツからじゃなくても良い。
笑みを浮かべる子供っぽい青年の誘いを断ろうとしたとき、ギルド職員の女性に声をかけられた。
「あら、ベージャムくんにグラムズさん。早速お知り合いになったんですか?ベージャムくんは目敏いですね。グラムズさん、彼はこの街生まれの情報通ですよ。それは、私が保証します!」
徹夜明けで疲労が溜まっているはずなのに。疲れを感じさせない笑顔を見せ、ヴェロニカがそう告げた。
…まあ、結局は同業者から聞き込む訳だ。ギルド職員であるヴェロニカが言うなら、コイツでも良いか。
「ヴェロが言うなら頼もうか」
ベージャムに街の中を案内され、俺は彼と二人で歩いた。冒険者ギルドを出てしばらく。街の中心に位置する小高い丘の上には、貴族様の屋敷が建ち並んでいるのが見えた。
その丘の坂を登り上を目指した。坂の途中、道を逸れる階段を上がり、外円部分を目指して俺たちは移動した。辿り着いた先のここからは、街の景色が良く見えた。
「んで、ここがレイニールの街を一望できる丘の展望庭園さ。僕のツアーはどうだった?」
レイニールの街を一望出来る庭園。その庭園の端。手すりに体を預け、ベージャムは吹き上げる風に服をなびかせていた。
すっかりと昼時なのに、一般開放されている展望庭園を見渡せば、多くの人が訪れているのが分かった。煌びやかな見た目の貴族。街に住む一般人。旅装をした旅人や冒険者。多くの人だ。
ベージャムの右隣に俺は立ち並び、手すりに手を着いた。俺が立つここからは、街が良く見える。
ここに来る道中紹介された商業区。そこでは、近隣の農村で採れた新鮮な農作物が売られているのが。道を行き交う人や荷馬車が見えた。
レンガや木で建てられた一般的な建物。その煙突の生えた建物からは、ところどころ煙が上がってるのが見えた。食事処や、鍛治工房だろう。昼食を求め、店を吟味する街の人が。良質の武器や防具を求め、行ったり来たりする冒険者が見えた。
顔を少し動かすと宿場町が見えた。俺たちのパーティーと同様、安宿を探す冒険者たちが。宿に荷馬車を乗り付け、忙しなく動く行商人が見えた。
街を囲む石壁。その外には、自然と農地が入り混じった景色が見えた。
俺たちパーティーが街に入ったとき、くぐった南門。南門の先には、恐らく一泊した村だろう。微かに村の輪郭が見えた。その村の奥には自然豊かな森が広がっている。
あの森の中には巨大な湖があるのだろうが、流石にここからでは見えない。俺たちはその湖から一日半を掛け、この街にやって来たのだ。
東門から先。そこには、少し離れたところに緑豊かな森が広がっていた。ベージャムが言うには、あの森の中には小さな泉が存在し、ちょっとした観光スポットだと言う。泉について彼はやたらと詳しかった。
レイニールの街では、周辺の森や山脈での討伐依頼が多数存在し、夏の手前には多くの冒険者が街に集うのが恒例だそうだ。
「僕のツアーはどうだった?特に質問がなければさ、僕から一つ、いいかな?」
俺は眺めていた景色から視線を外し、ベージャムへと向き直った。
「男二人のツアーで、展望庭園。告白か?」
「ふざけないでくれ。あんた、グラムズだっけ?強面で無表情なのに。あんた、冗談なんか言わない人間だろ」
「待て。俺はグラムズじゃない」
「はぁ?ヴェロニカさんもあんたのパーティーメンバーも、グラムズって呼んでたろ?」
パーティーメンバーにあだ名で呼ばれるのは正直嬉しかった。だからこそ、訂正するのも最近は諦めていたが、それ以外の人間に呼ばれるのは抵抗がある。だが今後、いちいち訂正するのも面倒だ。
そんなことを考えていたとき、俺の返答を待たずにベージャムは話を続けた。
「まあ、どっちでもいいや。んでさ、グラムズ。あんた、あそこをどう思う?」
街を一望出来る庭園の手摺りに寄りかかり、ベージャムは街の一角を指差した。
「…あそこってのは、スラムか?それがどうした?」
「それがどうしたって、なんとも思わないのか?」
「ああ。別にどこにでもあるだろ、スラムなんて」
「いや、待て待て、グラムズ。あんた人攫いにあった少女をギルドに送り届けたろ?それも、身銭まで切って保護してもらおうとしてる。そんなあんたが、なんにも思わないのか?」
隣にいるベージャムを見ると、身長差もあいまって、彼は本当に子供のように見えた。甘い考えを持ち、何かを期待するように俺を見上げていた。
「アイツらがスラムに行き着いたのは俺のせいじゃねーだろ。なんで俺が考えなきゃいけないんだ?」
「はぁ?人助けする余裕くらいはあんだろ?」
困ったな。俺は最近自分の未熟さを再認識し、憧れとの差を思い知ったばっかりなんだ。過剰な期待を寄せられている気がする。
「何を聞きたいんだ?簡潔に言ってくれ」
「だから!助けないのかって聞いてんだよ。見捨てんのか?」
「見捨てるもなにも、俺はそもそも見てない。何故助けなきゃいけないんだ?」
「なんで見ないんだよ!?あそこが見えんだろ?ボロを纏って、じっと座ってる子供が!」
街を一望出来るここからは、その姿がよく見えていたが、俺は気にも止めていなかった。廃屋が倒壊し、小さな広場となっている場所。そこには老若男女、何人ものスラムの住人が見えた。
俺は背中の大剣に手をかけ、俺とは異なる考えを持つベージャムに答えた。
「楽にしてやればいいのか?」
「ふざけるな!スラムでだって必死に生きてるんだ!なんで街の誰もが手を貸してくれないんだよ!」
ベージャムの怒声に、蜘蛛の子を散らしたように俺たちの周囲から人が消えた。
「ふざけてなんかいない。何もせず、ただそこにいるだけ。死を待ってるんじゃないのか?助けてやる唯一の方法だろ」
「あんた、それ本気で言ってんのか?」
「お前が言ったんだろ。俺は冗談を言わない人間だ」
チッ!
ベージャムは大きな舌打ちを打つと、顔を赤らめ俺に詰め寄って来た。
世界は理不尽で不平等だ。いくら努力を積み重ねようが、その努力は必ずしも報われない。俺はそれを嫌と言うほど経験した。
俺の育った村では魔物に殺されかけた。ずっと自分を鍛えていたのにだ。
村を出て、冒険者となってしばらくしたころ。魔物によって仲間を失い、俺自身も再び死にかけた。一度たりとも、鍛錬を怠っていなかったのにだ。
それ以降も度々危険な経験をして来た。その全てにおいて、俺は鍛錬を続けていなかったら死んでいただろう。
他人に助けられるとしても、まずは自分が、出来うる限りの自己研鑽をしなければいけない、と俺は思う。そうじゃなけりゃ、助かるものも助からないんだ。
「スラムの人間とあんたが助けた少女。何が違うって言うんだよ」
「全く違うだろ。不本意に窮地に立たされたのは一緒かも知れない。だが、スラムの住人は好き好んであそこに居るんだろ。自分では何もしないのに、他人に頼るのか?」
「出来ることはしてる!それだけじゃ足りないから助けを求めてるんだろ」
「出来ること?それはなんだ?物乞いか?日銭を稼いで食い繋いでるだけじゃねーか。嫌ならあそこに見える村にでも行けば良いだろ。安全な街にしがみついて、ああなってんのは自分たちの選択だ」
俺は微かに見える村を指差し、ベージャムに提案した。提案が気に入らなかったのか、今にも掴みかかって来そうなベージャムは眉を吊り上げた。
「外に出たら魔物なんかに殺されるだろ!」
「そうだ。そう言う世界だからな。仕方ないだろ」
村なんかは街よりもよっぽど、魔物の恐怖と隣り合わせで生活をしている。そりゃあ誰しもが安全なところに住みたいだろうよ。
それに村ではほとんどが農業なんかに従事して、税を納めつつ自給自足しているんだ、失業のしようがない。死ぬだけだ。スラムなんて形成されない。
街は村よりも安全だ。死ぬこともなく、ただ生き伸びているんだろう。
そもそも俺は自分のことで精一杯だ。ほんの僅かな余裕しかない。その僅かな部分でしか、俺は他人を助けれないんだ。
俺はじっと彼を見つめ、更に言葉を重ねた。
「もし俺が、自分の手の届く範囲。スラムの二人だけに手を貸したとする。それを見ていた周りのスラムの住人はなんて思うんだ?」
「そんなの、次は自分の番かも知れないって夢見るだろ。希望を抱くに決まってる」
「そうだ。希望を抱いて待つんだよ。約束もしてないのに、何にもしないで待つんだよ。次に俺が来なかったら?約束もしてないのに裏切られたって。お門違いの逆恨みを抱くだろ?俺はお人好しでも勇者でもねぇ、自分に出来もしないことは最初からしない。その方がお互いの為だろ」
眉を吊り上げていた彼は手すりにもたれかかり、真下を覗き込むように俯いている。俺からは彼の表情を伺えない。
反論をしないところを見るに、「逆恨みなんて抱かない、だから助けろ」とは言えないのだろう。
当然だ。歩いて半日の距離に村があるのに、そこで自給自足をしようともせず、村よりも安全な街にただ居るだけの人々だ。逆恨みくらいするだろうよ。
俺はスラムの住人がどんな生活をしてるかなんて知らない。ただ、スラムと似たような生活を経験し、逞しくも一人で旅に出た、魔法に憧れる子供を知っている。
ジモンは自分で行動している。スラムの住人だってやろうと思えば出来るはずなんだ。俺だって全員を助けられるならそうするだろう。だが、俺にそんな力はない。
俺とベージャムでは、今までの人生経験が違う。だからこそ、考え方が違うのだろう。
彼は俺よりもよっぽど苦労をして来たのかもしれない。世界は理不尽で不平等だ。彼もそう感じているのだろう。
ただ、俺にはベージャムが、自分であらがうことをやめてしまった俺に見えた。
手すりに寄りかかり、俯くベージャムはポツリと言葉をこぼした。
「…寄りかかるより先に、何かをしろってことか?」
「そうだな。少なくとも俺はそうして来た。じゃなきゃ俺は、今日まで生きれてないだろうな」
「…あんた、やっぱり変だな。強そうな見た目してんのに死んでたかもだって?けど、何となくあんたが分かったよ。他の奴らはさ、俺がスラムのために助けてくれって言ったって、無視してどっか行くだけだからな」
辺りを見渡すベージャムにつられ、俺も展望庭園内を見渡した。先ほどのベージャムの怒声に、散らばった人たちだろう。俺たちを遠巻きに見る人々が見えた。
二人で手摺りに寄りかかり、静かに街を眺めた。
「…なあ。スラムの人間が自分で精一杯やり切って、それでもどうしようもなかったら。グラムズ、あんたは手を差し出すのか?」
「…全員には無理だろうよ。俺の腕は二本だ。抱え込める量が決まってんだよ。ただ、首を突っ込んだからには、最後まで責任は持ちてえと思うけどな」
俺は懐から小銀貨を一枚取り出し「受け取れ」と言い、ベージャムに放った。
「ちょ!おいおい!危うく落ちるとこだったぜ。…って大銀貨!?なんで?」
「ツアー代金だ。お前も、この街のスラム出身なんだろ?取っとけ」
俺の自由に使える金がなくなった。
はぁ…。なんで大銀貨しか懐にないんだよ。馬の売却金を受け取ってからツアーに参加すればよかったな。小銀貨数枚でよかっただろうに。まったく。
自ら首を突っ込んだ少女の、延長を見据えた保護料金を稼がなきゃなのに、どうすんだよ。
利き腕の矢傷がピリリと痛む。俺は左手で頬杖を付き、ぼーっと街を眺めた。
「…なあ、グラムズ。あんたってさ、闇ギルドとかではないんだよな?ほら、昨日の夕食のときもさ、料理が運ばれてくる前に口を覆ってたろ?その、不気味な口の刺青で」
こいつよく見てるな。ヴェロニカが目敏いと言ってたのに頷ける。人としての嗅覚が鋭いんだろうな。
俺は頬杖のまま、街を眺めつつベージャムに返事をした。
「そんなんじゃねーよ。それより、この街はそう言った類の組織は居るのか?」
「…ああー、居るには居るけど。普通に冒険者してたらまず関わらないから安心してくれ」
湖で夜襲を受けた俺としては、完全に安心出来るわけではないが、目立たないで冒険者してれば平気か。それよりも金だ、金。
「…なあ、ベージャム。旨い情報売るって言ってたよな。教えてくれよ」
「ああ!そうだったな。金払いのいいグラムズには特別、旨い狩場を教えてやるよ。友達価格だ。多少汚い稼ぎでも文句ないよな?」
「友達じゃねーよ。それと、犯罪じゃなければ汚い稼ぎなんてないだろ。綺麗事言ってたらこの世界じゃ死ぬだけだ。なんでもやるさ」
俺は旨い情報を仕入れつつ、二人で階段を下り、展望庭園を後にした。
冒険者ギルドへと戻る道中、「グラムズは見た目も相待って年齢が分かんねーな」と言われ、「今回の春で二十歳になった」と返答をしたら、「やっぱり闇ギルド所属の詐欺師だろ!」などと言われてしまった。
失敬なやつだ。やはりこいつとは友達になれないようだ。
展望庭園へと向かったルートとは別のルートを通り、いくつかの新しい店を二人で覗きつつ、俺たちは冒険者ギルド前へと帰って来た。
夕方。冒険者ギルドの前にはパーティーメンバーがすでに揃っていた。
「グラムズー!宿取ったわよー!早くいきましょー」
夕日に照らされ、より一層燃え上がるような髪を揺らし、アリーナが手を振っていた。
「きれーな姉ちゃんに、聖職者。…それと、ボロを纏った子供。なぁグラムズ。アイツはあんたが助けた訳じゃないのか?今回の少女みたいにさ」
「ジモンは自分で立派にもがいてるぜ?俺と同じ、負け犬でもな」
少女の一件だけではなく、ジモンを連れていたのも要因だろう。お陰で俺には分不相応な期待を、ベージャムに寄せられていたのだ。
「…なあ、ところでさ、あの姉ちゃん紹介してくれよ」
「紹介はしない。自分で話しかけるんだな」
俺は三人の元に辿り着くと、メンバーから視線を送られていたベージャムの背中を押した。
「六等級冒険者のベージャムです。初めまして。皆さんのお名前を伺っても?」
俺はメンバーと、やや照れているベージャムが軽い挨拶を交わすのを確認すると、一人冒険者ギルドへと入り、少女分の手数料を引かれた馬の売却代金を受け取った。
代金を受け取り再びギルドの外へと出ると、一通りの挨拶を終え、メンバーとベージャムは軽い談笑をしていた。俺はベージャムへと今日の礼を述べ、別れを述べようとしたとき。
「グラムズ!今度誕生祝いをしようぜ!友達記念も兼ねてさ」
「友達じゃねーよ。祝いも要らん。じゃあな、今日は助かった」
変に懐かれてやしないか?俺はスラムに介入するつもりはないぞ。
俺は背を向けて適当に手を振り、ベージャムへ別れを告げると、さっさと歩き始めた。
「え!?あたし知らないんだけど?いつ誕生日だったの!?」
「グラムズ!誕生日って年に一回なんだぜ?なんで言わないんだ?」
「私が手料理を振る舞いましょう。何が食べたいですか?」
やけに騒がしい三人と、俺は宿へと向かった。
アリーナが手配をした宿。そこは至って普通の安宿だった。宿の一階では食堂を営み、二階が宿となっていた。
安宿らしく、二階の通路の灯りはまばらで、やや心許ない。ギシギシと軋む廊下を歩き、アリーナは個室の扉を開けた。
「じゃーん!ここがあたしたち『負け犬』の拠点になりまーす」
少し埃っぽい空気の部屋。窓からは夕日が差し込み、宿場町の人通りが見える。窓を開けると空気が入れ替わる。一階の食堂から立ち上る料理の香りがした。通路同様、部屋にも取り付けられていた心許ない灯りの照明魔石。簡易的な家具に、ベットが四つ。藁じゃないベットで寝れるのはありがたいな。
ここが男性の部屋となるのだろう。俺は部屋の設備を紹介するアリーナに視線を向けた。
「いい部屋だ。助かった。宿の代金はいくらだ?馬の売却金から充てて、残った分を四等分にしよう」
「じゃあ立て替えた宿の代金分、抜くねー」
俺は代金が抜かれた小袋を見つめ、眉根を寄せた。
「…アリーナ。随分と宿代が安いんじゃないか?四人部屋と一人部屋で、それだけなのか?」
「え?四人部屋だけだけど?」
「ん?いつも宿を取る時は二部屋取ってただろ?空きがなかったのか?」
「節約よ、節約。あたし一人の個室なんて勿体無いでしょ?四人部屋でベット余らせるより経済的じゃない。お金に余裕があるわけじゃないんだし」
住の分は既に引かれている馬の売却金。それを四等分したら、一人当たりのお金は確かに少ない。だが売ったのは馬だ。四人の衣食を二月は賄えるくらいの金額は残っているのだ。
防具や武器、道具なんかを買い揃えたら一月分程度に減るだろう。
だが、それ以前の問題だ。アリーナは男性に囲まれた部屋でくつろげるのか?
「アリーナはそれで問題ないのか?」
「んー、そうねー。グラムズが一人遊び控えてくれたら助かるかも?なんなら、誕生日プレゼントにあたしが手伝ってあげようか?」
「ん?一人遊び?」
一人遊びとはなんだ?一人で、遊ぶ。…んん。
…ああ、アリーナにとっては俺の日々の日課、鍛錬を遊びと言っているのか。遊びではないのだが…確かに部屋で筋トレなんかをしていては汗臭くて迷惑かもしれないな。
手伝う、と言うのは外での模擬戦なんかで相手をしてくれると言うことだろう。それなら部屋に匂いは篭らないからな。
「すまない。匂ってたか?」
「した日はね」
「それでも手伝ってくれるのか?」
「え!?本当に手伝って欲しいの!?」
「…ん?」
小首を傾げ悩む俺。
頬に手を当て、慌てふためくアリーナ。
いまいち噛み合っていない俺たちを見兼ね、ベニーが俺に一人遊びの意味を耳打ちした。
俺の顔がなくなった日だ。
俺がベージャムから仕入れた情報を含め、他の三人が集めた情報と照らし合わせて精査をした。精査だけをして、俺はいつもより早く眠りについた。
翌朝。ジモンはいつものように体調を崩していた。ジモンは年齢の割に体の発達が遅く、体が弱い気がする。こうして定期的に体調を崩すのだ。
二日目の休息を終えた明日、東門の先にある女神の泉へと依頼に行くことが決定していたが、ジモンを抜いた三人で行くことになるだろう。
ジモンを安静にさせるために。そして、一人で今日休日を過ごすために、なんだかいずらい部屋を俺は出た。ジモンへの土産でも買って来てやろう。
私はグラムズよりベージャム派の考えですね。執筆が大変なので出来うる限り最速で、誰でも良いので助けて欲しいです。
次話、負け犬での依頼を描く初の話になります。
その前に活動報告を書く?と思います。少々お待ちください。




