オウルダー·プラネット。
ユキの高熱にジュウゴはFの館に向かう。報告の義務など職場の決まり事にはない。が、血を分けずとも受け入れた魂の安否を案じるFの心根に、彼等は恩義に報いるかのように胸に定めた行動であった。
翌日、謎の高熱がユキを襲った。こうなる事はジュウゴは分かっていた。故に、病に伏せる少年への対処も心得ていた。この惑星の住民は両親が他界した後でないと青年期へと成長を遂げず、永眠しようとも復活させることが可能と言う特殊存在の集団である。
生死観の違いに戸惑うことも多々あったが、聖護使という職務に就いてからはその魂サイクルにも慣れてきた。異世界からの異邦人のジュウゴはそれでも小さいユキを護り時が止まったこの世界に生き続ける事にしたのである。最初はユキの両親への恩だけで動いていたが、何時しかF達の為に行動することが多くなり始めていた。その姿の後を着いていきたいと感じ始めていたのもある。魘されるユキの髪を撫でながら、聞こえてないかもしれないが一言残す。
「……任務ご苦労さま。報告は私がしておこう。」背を向けて着替えをして部屋の扉に向かう時、熱に浮かされていたユキが霞みそうな、しかし誇らしげに笑った。「…ゴメンね、ジュウゴ…任せた♪」熱に浮かされながらも健気に強気で送り出すその姿勢にジュウゴは頷くことでしか返すことができなかった。
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Fの居る執務室は誰でも入れる場所ではない。何故ならば、そこは銀河系その物が生まれる場所であり貴重な【オウルダー·プラネット(古い惑星)】が無数に存在する場所だからである。作業は繊細且つ緻密で、感情や空気の温度の些細な刺激で死んでしまうのだ。
Fは神々の傲りや人間の争いで滅んだ銀河系を復活させる力を持ち、その方法が原初の銀河系で授かった【箱庭世界】と言う特有能力である。傷付いた銀河系を癒し復活への活力とさせる力であり、何故かFにしか取得できなかったらしい。其々彼等はそう言う特有能力を一つずつ所持し、故にこの時の紡がない場所に居を構えるしか無かったのだ。箱庭の中は一面が銀河の渦であるが、砂粒を振り掛ける様に幾度も繰り返すとやがて一つの惑星が誕生する。
それこそが【オウルダー·プラネット】、銀河系の心臓部とも云える【核】だ。その惑星は全ての生物が居らず、砂粒の振り注ぐ音と育成状況をFに伝える小さな星一つである。Fはその星の様子を探りながら力を注ぎ、星はその力に安堵して無数の惑星を誕生させていく。時折、その星がグズったり癇癪を表すと銀河系の空間が荒れて生まれて生物を有し始めた惑星に様々な悪循環を連鎖させてまたも崩壊してしまうのだ。時がこの空間に流れていないのは、オウルダー達と向き合う時間を割くためと考えられた。
ーーーそして、目的の館に辿り着き、ジュウゴは門から館を見上げた。それは孤独な雰囲気に満ちていて、Fの心を顕すかの様であった。ーーー




