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案件76「この兄妹は・・・7」

 作戦が失敗したところで、何よりも優先されるというのはある意味で嬉しいことなのかも知れない。


 戸惑う様子のユウガオを見る限り、あの笑顔を怒りのものだと勘違いしているようだ。


「大丈夫、でござる、か……?」


「生きてはいるみたいだ、が……? 頭がおかしくなったか?」


 答えたのはパキラの方で、アサガオの笑顔を気が狂ったのだと思っているらしかった。


 意外に理解が無いんだなぁ。まぁ、この状況で笑っていられる方が凄いんだろう。


「しかし、これでお前らの策は潰えた。大人しく、うん?」


 自分も相当の反動ダメージを受けているというのに、頑張って勝ち誇る姿は勝利に飢えていたことを示していた。しかし、ここへ向かってなにかが走ってくる音を聞き取り、誰もがそちらの方に注目した。


 ドドドドドドドッ!


 ダチョウかヌウの集団でも走ってくるかのような轟音だが、薄明かりに照らされている人影が一つだというのはわかる。


 覆面半裸のマント男……?


「バ、ニイちゅぁ~ん!!」


 走ってきた男が、パキラに向かって飛び掛かった。


 両手の掌を合わせ、肘は九十度に曲げつつ二の腕から肩にかけても同様に。腕で四角形を作るような具合だ。頭から尻はまっすぐにしておいて、足は平泳ぎの如く折りたたむ。


 まさか、この世界においてこのダイブアタックを使えるヤツが居たなんて!? しかも、未だに勘違いしたままだ!


「イッ、イヤァァァァァァァァァァッ!!」


 パキラにつきまとっているっていうマスクメロが、わざわざこんなところまでやってきたのだ。そして当然ながら、ストーカー被害にあっている女性は抵抗を試みる。


 “ジェリダラース”を発動させた全力の刺突が、がむしゃらにズタ袋を貫く。


 ユウガオはその瞬間を見逃さずに動く。


「『サンダーボルト・フルート』!」


 唱えた魔法は、風の“マテリアル”最強と言われたものだった。


 他の最強に比べて、効果範囲が圧倒的に狭いのが難点で使われにくい。空気を圧縮してプラズマ化した塊をぶつけるという、実に忍者の必殺技感があってカッコイイ攻撃なのだが。


 その一撃必殺の魔法を、まさかこうあっさりと不意打ちっぽくぶちかますっていうのはいかがなものかと思う。


 バジジジジッと球体が鳴き、輝く掌底はパキラの背中へと吸い込まれた。音、光、熱、電気、あらゆるエネルギーが弾ける。


 め、目がぁッ!


「ふぅ……長く苦しい戦いだったでござる」


 光の奔流が止んだ後、ユウガオが汗を拭うようにして、いかにも苦戦しましたって風に言った。


 倒したって感慨すらねぇよ!


 パキラの嫌悪を込めた悲鳴にほとんど混じってたせいで、断末魔の声らしいものなんて聞こえなかったよ! 綺麗さっぱり居なくなってるから、ぶち倒したのは確かなんだろうけど……。


「やったッスか……」


 そんなこと言うと、またやってきそうだから止めなさい!


 “ジェリダラース”だけが、きっちりきっかり地面に突き刺さているのだ。もしかしたら取り返しにくるかもしれないじゃないか。槍の呪いにドハマリして、使ってないと生きていけない体になっている可能性もある。


 まぁ、そんなことよりさっさと自分の傷を治療しろ。


「薬草、あるッスか……?」


 『ヒール』を使わずに治療用の薬を所望するのはなぜか?


 その答えは直ぐ思いついた。“マジック・チャーム”が最後の一つなので、可能な限り使わずに置いときたいのである。


「生憎と一個しかないでござる……」


「とりあえず、止血にはなるんで、頂戴ッス」


「済まんでござった。拙者の手でアサガオを傷つけるなんて出来なかったでござる」


「そうッスね、ハムッ。あのままダンジョン……むしゃ、むしゃ。から出されて、ごっくん……居たらほとんど何も、着ていない状態で放り出されていたッス」


 手渡された薬草を食べ……なんで食べるのよ? それ、そう使う薬じゃねぇから!


「これで、倒れはしないッス」


 なんで止血できるし……。


「きっと兵士達に酷いことをされていたッスよ? エッチな本みたいに! エッチな本みたいに!」


「や、やめるでござるぅぅぅぅぅっ!」


 おぉっと、怒ってはいないものの痛みの仕返しとばかりに、想像したくないことを脳裏に焼き付ける精神攻撃だ。


 この様子を見て、予想外にもリーサが反応を見せる。二人に近づいて行って、傷口に手をかざすと魔法を唱えたのである。


「『ヒール』」


「……」「……」


「なんだその、サボテンがダンス踊ってるのを見たような顔は? もう治療してやらないぞ」


 そりゃ、今まで冷たい反応しかしてこなかった奴が、いきなり優しくしてきたらそんな顔にもなる。


 二人にしてみればこんなところで止められては生殺しなので、最後までオネダリするしかない。


「続けてッス」「頼むでござる」


「やれやれ……『ヒール』」


 リーサはまだ驚きが抜けていない兄妹に呆れ、なんとか腹部の止血と修復を終える。言っても無理をすれば傷口が開く不完全なもので、肉もごっそりと一キロくらいは減っている。


 部分的に液体窒素でも掛けて砕いたような感じだろうか。呪いの槍“ジェリダラース”恐るべしだ。


 エントラを頼るのもありかもしれないが、そんな余裕があるかどうか。


「この槍は……ま、適当においとくッス。取りにくるかもしれないッスし」


「それで良いと思うでござるよ。リーサ殿は勇者殿を探すんでござるか? 拙者らは、賢者殿やファラエ殿の様子を見に行くでござる」


「あぁ、後は勝手にしろ」


 三人の行動が決まった。


 俺も、リーサと少し話したらユウガオ達を追おう。

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