表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/81

案件71「この兄妹は・・・2」

 今は既にブロスと離れているものの、ここで兄妹に見つかると言い訳が苦しくなる。


 敵から隠れていたことにするか?


 ユウガオとアサガオがこっちへ来る様子はなく、リーサのハッと息を飲むような音が聞こえるだけだ。


「ゆう……いや、違うな」


 リーサが言いかけて否定した。


 おいおい、どうしたんだ?


 気になって瓦礫から頭を僅かだけ出して、起こっていることを確認する。リーサ達と対峙している長髪の人物が、どこかで見たことあるように感じた。


「パキラ殿? またお会いしたでござるな。お元気だったでござるか?」


 ユウガオがにこやかに名前を口にして、漸く何者なのかを理解した。勇者ちゃん母が昔にファンをやっていた、元ガーデンロード兵で現探索者という人物である。


 しかし俺は、パキラを女性だと思っていなかった。セミロングの黒髪をハッチング帽で隠していたこともあるし、何よりも完全に男として振る舞っていたからだ。


「何が、お元気だったか、だ! ふざけるのもいい加減にしてくれ! 後、殿などと白々しい!」


 作っているのかそれとも元からなのか、低いめの声でユウガオを威嚇した。


「パキラ? 誰ッスか? 変装させた勇者様に似ているッスけど、どっかで見たような見なかったような……ッス?」


 アサガオはあまり記憶にないようだった。しかし、思わぬ発言で気付かない内に影響されていたことを知る。


 覚えが無いのも仕方ないため、ユウガオはいつもの通り説明する。


「えーと、『やられ方が格好良いパキラ』でござるよ」


「……あぁっ。わからないッスね」


 って、わからんのかーい!


「兄妹……? して揃ってふざけたことを。ここで雪辱を晴らさせて貰う!」


 言って、パキラは黒々とした柄と赤々とした穂先の槍を構えた。


 俺は心の中でツッコミを入れつつも、避けられないであろう戦いの行方を見守ることにする。


「3対1で……」「あぁ、私は手伝わないから」


「2対1でござるが、構わないんでござるか?」


 リーサは頭数に入らないというだけで、割とパキラにも勝機がありそうだった。


 ためらいがちな確認に対して、射抜くように釣り上がった瞳を僅かに伏せた。なかなかの自身の現れだが、俺の見立てではユウガオとトントンってところなんだが。


「さっさと片付けろ。2分で終わらなかったら、三人まとめて吹き飛ばす」


 暴虐の女王らしいセリフを吐き捨て、完全に観戦モードに入るリーサ。


 スタートの合図のために手を上るものの、パキラはそれを手で制止する。


「最後に一つ利かせて欲しいんけど」


「何でござる?」「うん?」「手短にな」


 パキラが慌てた様子で質問を投げてきた。


 リーサは、早く勇者ちゃんに会いたいのか急かせかしたような態度を見せる。別に逃げたりしないから、ゆっくり見ていこうぜ。


「変な……ズタ袋を被った短パンの男をけしかけたのは貴女? ついさっきから、迫ってきて怖いんだけど……」


 パキラの不可解な訊いに、何やら引っかかるものを感じた。


 どこかで見たことのあるような容姿を頭の中で思い浮かべれば、思い当たる人物が直ぐに出てくる。ごめん、それ俺がやったことだわ……。まさか、変装した勇者ちゃん似の娘がいるとは思わなかったし?


 しかし、それをアサガオに向けるというのはよくわからない。


「私が、男をけしかけるような女に見えるんッスか?」


 当然彼女は、それは見当違いだと言いたげに答えた。


「悪いけど、見える」


「そうッスか?」


 なかなか鋭いなパキラ。


「もう良いか? さっさと始めろ」


「……」


 追求したかっただろうが、ダンジョンマスターであるリーサが急かすものだから諦めざるを得なかった。


「仕方ない、始めよう」


 パキラが槍を構えた。いやにユウガオが警戒しているのがわかるから、たぶん普通の武器ではないだろう。


「見た目からしてヤバそうッス」


「呪いの槍でござるよ。とりあえず、いつも通りやるでござる」


「了解ッス」


 兄妹で軽く会話をした後、武器を引き抜いた。


 ユウガオが“短刀Ⅲ”で、アサガオが“蒸気銃Ⅱ”だ。


 いつも通りとは言ったものの、上手く戦えるかわからないな。修行やリーサとのコンビを乗り越えた新生アサガオに、果たしてどれだけユウガオがついていけるか。


 実践を見たリーサの方がわかるだろう。


 今の隙にブロスはダンの待つ部屋の方へと逃げているため、少しは自由が利くようになった。瓦礫の山から顔を覗かせて尋ねた。


「この戦いどうみます? 実況のリリシアさん?」


「うーん、ちょっとしたことで天秤が傾くだろうな。あの呪いの槍“フェリダーラース”のネタを知っているから言えることだが、最悪が引き分け……」


 神妙な表情をするくらいに、あの槍はヤバい代物らしかった。


「うん?」


 不自然なことに気づいて、リーサはこちらを見た。しかし、俺は既に側面へと回り込んでいた。


 何も見つからないので首を傾げる。


「気の所為か……?」


「では、2分以内とおっしゃいましたが、実はかなり厳しい設定であると?」


「いんや、2分は制限時間だ。その時間で終わらせるくらいじゃないと、最悪になる。えっと……?」


 そっちは質量を持った残像だ。じゃなくて、俺は普通に瓦礫の正面側へと来ていた。


 リーサが視線を戻したらまた裏側へと戻る。


「おい、何か言ったか?」


 今度は気の所為とは片付けず、アサガオ達に声を掛けた。


「何も言って無いッスよ?」


「ハァッ!」


「ゲッ!?」


 対峙して睨み合っていたパキラは、アサガオが僅かに視線を逸した瞬間にしかけた。


 おっと、これはリーサさん戦犯ですねぇ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ