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案件68「異世界に来ても過労死寸前!?6」

 要するに、過労死を通り越して火葬される寸前というわけである。


 正しくは、死なないまでもダンジョンの外へと追い出され、ガーデンロードの奴らにナニをされてしまう。


「おいおい、フィニッシュにはまだ早いぜ?」


 存外余裕ぶっているブロス。


 負けたところで傷つくプライドも無いようなタイプだ。しかし、説明して打開策を考えて貰うのも(しゃく)である。


「腰掛けからの接吻で終わりといかず申し訳ないな」


 してやったりと言わんばかりに、ガラムさんが顔を伏せながらも口角を吊り上げた。


 普段は性格に似合わず奥手だけど、ダンスの勢いにまかせてやるつもりだったのか?


 そっぽを向いて誤魔化そうとしても無駄だ。


「……」


 ブロスは顔に赤味を帯びさせて、横目でチラッとこちらを見てきた。


「恥ずかしがるなら最初からやらないっ……でも、この状況をどうにかできたら考えて上げる」


 頭を下げる気はないので、交換条件を出した。


 もちろん、考えるだけでお礼をするつもりなんてな~い。いや、しかし、心変わりはあるかもしれない……。


 ブロスがカッと目を見開いて同意してくれる。


「どうするつもりだ? 今更、俺を倒したところで止められるものでは……」


 ガラムさんが言いかけた。


 眼の前で起こっていることに、冷静な反応はできないことだろう。


 既に種が生まれてしまった今、正攻法で防ぎきれるものではない。直撃を避けて、防御系の魔法で凌ぐにしても運任せ過ぎる。


 ならば、どうするか?


「勇者、俺から離れるな。『ファイアーボックス・シード』!」


 答え、力尽く!


 これには俺も、何がしたいのかわかっても言葉が出てこなかった。


 本来であればこの魔法は、種へと向かって熱量が集まり芽を出す流れである。それを逆再生するような真似を、“マテリアル”を刻むことなく自身の回路だけでやってのけたわけだ。


 勇者ちゃんを自分の方に引き寄せてたブロスを中心に、数千度の熱量が波紋の如く広がっていく。


 収束してくるガラムさんの『ファイアーボックス・シード』の赤熱とぶつかって、力という力が衝突地点で発散する。


 ベクトルだけが違う、同質のエネルギーが中和し合う。そのため、ビシッ――ピシッ――キシッ――という最初の数回を除いては音はほとんどしない。


 しかしそれは、音の波長さえもが均一になって空気を震えさせないというだけのことだ。


「……」「……」「……」


 ほぼ無音の中で、ダンジョンの一室が灼熱と破壊に包まれた。


 見つめ合う俺とブロスとガラムさんを、世界から置き去りにしたように。


 周囲だけが崩れ去っていく。


 逃げていた騎士団員が無事かどうかもわからないレベルだ。


「クッ……! 『フレイム・ショット』! ダメッ……?」


 ガラムさんは、この均衡を崩そうと小技をブロスへと放ってきた。


 膨大なエネルギーの中に投げ込んでも、何も変えることのできないような攻撃だ。銃弾の飛び交う戦場で、BB弾を一つ放った程度じゃ意味をなさないのと同じ。


「『フレイム・ショット』!」


 それでも、僅かな隙間を見つけようと必死になった。


「『フレイム・ショット』!」


 一つではどうしようもなくとも、十発、二十発と撃ち込めばそれは少しずつ変わっていった。


 もう一発、もう一発。


 ガラムさんは、“魔エネルギー”の続く限り均衡を切り崩そうと躍起になる。


「……そこだ。『フレイム・ショット』ォッ!」


 そして綻びを見つけた。


 一矢報いることに全力を掛けた男が、これでもかと言わんばかりに笑う。完璧の孔に矢を通して傷を付けられるという喜びに湧く。


「通れぇっ!」


 裂帛の気合と同時に、小さな穴から火球が漏れ出してきた。


 ブロスは『ファイアーボックス・シード』の維持で忙しい。体を動かせるのは、後もう少しだけ芽が種へと戻ってからだ。


 ならば、この身で守らなければならないということである。


「くのぉっ!」


「勇者っ!?」


 ブロスの前へと躍り出て、火球を背中に受ける。


 “爆蹴ズⅢ”で蹴り飛ばせば片付いたのかもしれないが、消し切れず下手なところにぶつかっては本末転倒だ……ろ?


「ッ!!」


 当然ながら、声こそ我慢したものの痛かった。もしかしたら、我慢ではなく言葉にならない苦悶だったのかもしれなかった。


「なんて無茶をしやがるっ!」


 声を張り上げても、ブロスは魔法を維持し続けた。


 ここで途切れさせたのでは、勇者ちゃんの意志に報いれないからだ。


 多少なりとも意識は飛びかけたものの、なんとか五感は正常に生きている。


「なぜ直撃して無事なんだ……?」


 ガラムさんは、これまでに何度も見た悔しげな表情で訊ねてきた。


 自分自身でも忘れていたが、“マギクロースバンド”製の服を着ている。


 腰の辺りで『フレイム・ショット』を受けて、肩から地面を転がったお陰で“ハイクロースバンド”でダメージはかなり軽減できた。


 しかし、痛いことには変わりない……。ガラムさんとの戦いは、基本的に痛み分けだから嫌いだ!


 それでもこの勝負、最後の一矢を凌いだ勇者ちゃん側の勝利である。他の騎士達は先の炎熱で倒れたか、やってきたとしてもブロスが返り討ちにしてくれる。


「さて、ガラムさん。色々と聞かせて貰うわよ?」

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