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案件66「異世界に来ても過労死寸前!?4」

 ここ数日の連戦で、俺の体力はかなりカツカツだった。


 ダンジョンで戦っている以上、後ろに逃げ場はなく前にも敵がいる状態になる。


 倒しても倒しても、ガーデンロードの兵士達は生身でも挑んでくる。途中でアイテムを拾われ、巡回魔族までやられ、着々とこちらの戦力は減っていく。


 俺達の体力が尽きるか、相手の精神力が持たなくなるか。


「こんな所まで来て、なんでまたデスマーチしなきゃなんないのよ……。私の平穏はどこよぉ」


 三人目くらいの騎士団員を蹴ってダンジョンから放り出した時点で、不平を漏らした。


 俺に、気楽な生活なんてものはないのだ。


 元の世界に戻る戻らない、魔王を倒す倒さないなどとやっていた時からわかりきっていたが。


「何をボヤいている? 異端者となった時点で、心休まる日など来ないことを知れっ。お前にできるのは、その身で罪を償うことのみ!」


 ガラムさんは言い放つ。


「そうだ、そうだ」「ここなら、他を巻き込むこともないからな」「覚悟しろよ、グヘヘヘヘッ」「今度こそ負けねぇっ」


 団員達も、先の戦いでのことを引きずっているいるようだ。


 なんだか今、嫌な寒気を覚えたぞ……?


「そういうわけだ。こちらも、もはや負けらない」


 周囲の期待を一身に背負い、騎士団長は剣と盾を構える。


 ガラムさんだけなら体術だけでも互角に渡り合えるが、騎士達が連携してくるから大変だ。毒の“マテリアル”を使うにも、この数相手では隠しきれない。


 今回はリーサも居ないから辛い……あれ? あれは、もしかして?


 ジリジリと騎士達に追い詰められていく中、輪の外にいる人影に気づく。


「どうしたんだぁ、勇者? お前の中に眠る悪魔はその程度かよっ?」


 奮い立たせようとする言葉を掛けてくるのはブロッサム(ブロス)だった。


 ここにいることの理由とかを聞きたいところだが、とりあえず言い返したい。


 勇者ちゃんの中に悪魔なんて棲んでねぇ! いや、もしかして俺のことを言ってるのか? なら、俺は悪魔じゃねぇ!


 そんなこと、さすがに暴露できないから呑み込む。


 中に別人の精神が入って居ますとか言ったら、ガラムさん達はどういう反応をするんだろうな。


「悪魔憑きか。それならば、なおさら見逃せないな」


 プルプル……僕、悪い悪魔じゃないよ!


 しかし、ここで本当に全力を出すわけにもいかないのだ。


「ブロス、私には無理よ。悪魔を制御できないわ……。乗っ取られて、皆のことを忘れるなんて嫌よ!」


「グッ……。し、仕方ねぇなぁ。ちょいと手伝ってやるよ」


 かかったな、馬鹿めッ!


 必殺、上目遣いに弱いフリをする。ブロスは特に、お気に入りの相手を放っておけないところがある。


 しかし、それなりに手間を掛けているので余裕ができたらお礼をしよう。


「こんなところにもっ?」「アイエエエエ!?」「ダンジョン! マスタァナンデ!?」「コワイ!」「ゴボボーッ!」


 勝利を迎えようとする教会の騎士達は恐怖のあまり容易に失禁し、嘔吐した。


 それらへ侮蔑的な視線を送りながら朱色の魔族は手近の団員を掴むと中の人を引き出し、壁に投げつけて割った。


「アバーッ!」


 昔近くの踏切で見た鯖折りなマグロ状態になる寸前で、なんとか光の粒子となって消えていってくれた。


 危うく忘れていた記憶を掘り出しそうになって、ちょっと危なかった。


「……あんたの方がよっぽど悪魔よ?」


 人のことは言えないアトモスフィアだが、一応は注意しておく。


 心は早く折れて欲しいと願いつつも、精神を病んでくれとは思っていない。生命活動が停止するまで、ダンジョンの外へ復活できないのだ。


「なんだ、いつも似たようなことをしているから耐性はあるのかと思っていた。なら、こっちにするぜ。『フレア・バースト』!」


 配慮してグロはなしにしてくれたのか、ただ一人ずつやっていくのが面倒だったのか、炎の魔法で一掃した。


 対処に遅れた騎士の十人ほどが消し炭になって消え去り、五~六人ほどが時前のタフさでかろうじて生き残ることができる。


 二人ばかりが優秀だったらしく魔法による防御を行ったものの、中途半端に怪我を負って身動きを封じられることとなる。


「チッ、一発で終わらなかった」


 炎の爆撃に無理やり指向性をもたせた。そんな荒業をやってのけておきながら、贅沢な不平を述べた。


「……このっ」


 さすがと言うべきか、ガラムさんはほぼダメージもなく炎風の中から出てきた。


 赤髭だからといって炎に耐性があるわけではじゃないんだろう。当たり前だろ?


 たぶん、自分の使う魔法で自傷しないようアイテムを所持していたか、予め魔法で守っていたか。もしかしたら、右手の盾に秘密があるのかもしれない。


「やってくれるな。お前達、俺が押させている間に治療をっ」


 俺達の前に躍り出て、我が身を犠牲にしてまで団員達を守ろうとする。


 それに応える仲間達。


「団長!」「急ぎます! どうかご無事で!」「覚えておけ、勇者ぁ! 俺の“ロッド”が『サン・レイ』だぁっ!」


「あぁ、俺なら大丈夫だ」


 なんだかヤバイ奴らを本気にさせてしまったようだ。


 もはや勝ち負けの話ではなく、全身全霊を懸けて勇者ちゃんとブロスを倒さなければならないという意地。


 何が正しくて間違っているのかなんてものも、二の次だ。


「悪いが今の俺には、お前達のために神様に祈ってやる言葉はないからな」

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