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案件50「盛大な進捗5」

「ふむッス?」


 アサガオが、訝しげに見つめてくる。


 うわぁ……。バレてないか、ドキがムネムネするぅっ。


「気にしなくて良いんッスよ? 勇者様だって、人間なんッスから」


 無駄に優しい眼差しで、不要なくらい慈愛に満ちた声音に、余計過ぎる正論をほざかないでくれ。


「べ、別に、変な物を隠したわけじゃなくて……。じゃなくて、何があったのよっ?」


 これぐらいのことで顔真っ赤にして、否定している自分が悲しい。


 とりあえず誤魔化して、報告を聞くとしよう。このダンジョンの性能や、アサガオとエントラで対処できないハプニングとは?


「そうそう、そうだったッス! まぁ、向かいながら話すッスよっ」


「結構な切羽詰まり具合じゃない……」


 無駄話をしている暇はなかったようで、俺達は地上へと向かって走る。


 途中で、何度目かの挑戦に来た半裸覆面を蹴り飛ばした気もするけど、気のせいだ。き、の、せ、い、だ!


 ちなみに、言っては申し訳ないが、アサガオの説明は要領を得なかった。


「元気がない勇者様のためになんとかかんとか、手を尽くそうとしたんッスよ。あ、もう大丈夫そうッスから、心配が過ぎたって感じッスかね?」


「え、えっと、心配をかけてごめんなさい? それで、何があったのよ?」


 気を揉ませてしまったという点は、少なからず俺の優柔不断が招いたことだ。


 元気づけてくれようと、努力していたというのも感謝すべきだろう。


 だが、ホウレンソウはちゃんとして欲しい。


「あぁ、そのことなんッスけどね。こう、『アイスバーン・フラウ』同士のぶつかり合いみたいだったッス」


 水“マテリアル”の最強魔法がぶつかり合ったようなハプニングとか、勘弁していただきたいんですが……。


「あー、えーと、それで私じゃ止められない感じだったッスから?」


 アサガオの混乱が伝わってくるので、言い訳がましい感じの報告は仕方ないとしよう。


 まぁ、報告自体は『間者』であるユウガオにまかせている部分が多かったしな。


 そして、地上に出る数階手前にやってきたところで、そこに見知った顔が二つもあった。


 その二人が向かい合っているのを見た瞬間に、脊髄に鉄杭を通されたような衝撃が走った。


 アサガオの言っていた言葉の意味を、ここへきて漸く理解できる。


「っ!? ブ、ブロスっ? それに……」


 ハッとなって、なんとか震える声を絞り出した。


 まだブロスがいることくらいは、疑問に思うことでもない。


 ただ、それに向かって赤髪を蓄えたガラムさんが憮然とした表情をして佇んでいる。復活早すぎませんかねぇ……?


「ガラムさん、まで。一体、どういう集まりなの? 何度来たって、ま、負けないんだからっ!」


 まさか、勇者ちゃん(異端者)討伐をまだ諦められないとか?


 そんなに仕事熱心だと、過労自殺待ったなしだよ?


「なんだ、勇者の知り合いかよ。俺のダンジョンの回りで小煩くしやがってた奴らの仲間らしいんで、ちーっと地獄の業火で焼き入れてやろうかと思ってさ」


「……放って置くのが危険なのは以前変わりなし、か。いや、今日は戦いに来たんじゃない」


 どちらの発言にガラムさんが呆れた顔になったのかは、考えないでおこう。


「戦いに来たんじゃないなら、何の用なのよ?」


 俺の中で想像していたガラムさんらしからぬことを言い出した。


 異端者は容赦なく狩れって人だと思ってたけど、融通を利かせてくれるところは割と柔軟なのかも。


 そう思っていたら、嫌なセリフが飛び出してきた。


「命だけは救って貰った貸し、返して置かなければ以後の戦いに憂いを残すことになるだろうに」


 お、おう……律儀過ぎてこっちが引くよ。


 貸しにした覚えがないので、これは完全にあぶく銭です。


 第一、命の対価で得られる情報なんて、よっぽど良いものか一番聞きたくない話だ。


「あー! あー! 聞きたくなーいっ! なんか嫌な予感しかしないもーん!!」


 全力で受け取りを拒否させていただきたいのですが、よろしいでございましょうか?


「クッハハハッ、黒装束娘から聞いていたよりは元気じゃんかよっ。こいつが悩みの種ってわけじゃなさそうだが、邪魔なら追い出しておくぜ?」


 ここでブロスが口を挟んできた。


 愉快な笑顔で物騒なことを言うくらいに、ブロスもガラムさんから良い印象を持たなかったんだろう。


 さっきの絶対零度の睨み合いも、お互いの防衛本能だったのかもしれない。


「はっはぁ~、そういうことぉ」


 アサガオの妙な混乱っぷりに合点が行き、流し目に見つめてやる。


「やぁ、美味しいものでも食べれば、元気になるかと思ったんッスよ……」


 アサガオは一歩ずつ下がっていくも、ダンジョンの奥しか逃げ場がない。


 ブロスとまで裏でつながっていたのは「こいつぅ~」って感じだが、こちらのことを気遣ってなので怒るに怒れない。


 さておき、ブロスが暴走しないように留めておく必要があった。


「まぁ、争う予定がないならわざわざ呼び込むことはないわ」


「……そうか。まぁ、良いぜ。発言を許してやるよ、魔王様の仇敵に仕える者」


「あ、えっ。聞かな――」


 変な流れでブロスが先を促してしまう。


 上から目線な態度に、ガラムさんもムキになった様子で続けた。


「――近々、スノードロップ王国がガーデンロードへ戦争を仕掛ける。斥候を務める娘からの情報だ」


 うせやろ……!? あの美少女さんズに娘が!?

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