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案件37「順風満帆の兆し?1」

「何ッスか、これぇ……」


 バニーコスに変身したアサガオの表情も、これまた新鮮であった。


 さておき、ダンジョンを出てからはプラカードをもたせて入り口に立たせてある。


 隣には簡易カウンターを設置して、ファラエが着席。即売会みたいな状態だな。


「これは私が絵を書き込んだ攻略本ッスね。売れってことで良いッスか?」


「まだあまりお客さんはつかないと思うけど、ダンジョンが進めると分かったら口コミで広がるわ」


 一冊20ゴールドと俺の価値観から見るとお高いが、活版印刷があるからと言っても本の価値ってそんなもんだ。


 加えて、お宝の地図よりも信憑性がある分は付加価値も高い。


「攻略本? 本と言うよりかは、資料を綴ってあるだけって感じだけど」


「ダンジョンのガイドブックみたいなものよ。完全な製本をしていたら何度も町とを往復しなくちゃ行けなくなるから、少しぐらいは、ね?」


 ファラエは今までバニーコスを作っていたから詳しく知らないか。


 説明もほどほどの即売所へ連れてきてしまって申し訳ないね。


 ちなみに、町へ印刷しに行ったユウガオが血涙を流しそうな組み合わせは、顔が割れているか否かってところだ。


「じゃあ、私がいると怪しまれるから奥へ戻るわ。売り切れるか、日が暮れたら二人共戻って来て良いわよ」


「わかったッス」「頑張るよ」


 二人に任せてその場を立ち去る。


 わざわざコスプレをさせる必要など無いと思うかも知れないが、人間なんて存外現金なものだ。


 探索者もやっぱり男社会なんだよ。これぐらいの時代は、それこそ顕著だ。


 そういう文句はさておき、俺はダンジョンの上にある開けた地点へと上っていく。


「準備はオッケー?」


 そこで待っていたエントラに声を掛ける。


「えぇ、できてますよ。いつも、いつも、走り回ってお疲れ様です」


 答えるエントラの少し前方では、炎に巻かれた石が大量にある。


 更に前方には、水を張った直径三メートルくらいの穴。


 お察しの通り、釜茹で勇者ちゃんのお時間ですよー。温泉造りから始まって、マジで才能(エントラ)の無駄遣い。


「皆には苦労を掛けてるからね。これぐらいの福利厚生はないと」


 エントラに、“風呼びのポンチョ”を脱がすのと、湯浴み用の掛け布に着替えさせて貰う。


 いつもならアサガオにお願いするのだが、手が空いてないのだから仕方ない。


「エントラも浸かって行く? 二人ぐらいなら入れるわよ」


「い、いえ、僕は後で良いです……」


「そう?」


 お湯の中に焼け石を放り込み終え、エントラはそそくさとフェードアウトしてしまう。


 あるぇ~? やっぱり、こき使われるのが嫌になったのかな。


「順番に入ったんじゃ冷めて勿体ないんだけど?」


 何か大事なことを見失っている気もしなくはない。


 手の届く範囲で浴び湯をしてから、石造りの湯船に入る。


 さすがにブロスのところの温泉とは比べるべくもないし、効能だってこちらは文字通り無能である。


 気持ちよければ良いんだよ、気持ちよければ!


「……誰?」


 湯加減に気を緩ませそうになったところで、傍の岩陰に人影を見た。


 俺が誰何すると、そいつは大人しく姿を現した。まぁ、言ってもダンなのだが。


「あら、貴方がノゾキだなんて珍しいわね」


 通りがかりの誰かかと思ったが、安心すべきか否か。


「鍛錬が終わったところでな。丁度良い、一緒させて貰おうか」


 おやおや、意外な申し出だ。


 余裕があるようには見えないものの、少なからず同じダンジョンの中で住んでいた分、耐性は付いてきた様子である。


「言いたいこともあったのでな」


 お湯を浴びて汗を一流し。ダンが鎧のまま入ってくる。


「ちょっ、ちょっと! 湯船に手ぬぐいを漬けるマナー違反は見るけど、鎧ごと入る奴は初めてよっ!」


 指摘しても、ダンは「何を言ってるんだ?」って顔をするだけだ。


 お湯が汚れるとか、立派な鎧が錆びるとか、いろいろと問題はあると思う。


「俺達、魔族が人間の作った脆弱な衣装やら防具を身につけると思っているのか?」


「へ?」


 思わぬセリフに、俺はきっと酷く間抜けな顔をしたことだろう。


 いや、もっと食い入るようにダンを見たかもしれない。


「その鎧とかも含めて貴方の身体? 人間の衣装とかは好まない? マジっ?」


 正直、どういう理屈なのか良くわからない。が、元から魔族なんて理解の及ぶ生物ではない。


 考えても仕方ないと、元の体勢になる。


「もう見るのは終わりか?」


「私には単なる鎧姿だからね。でも、そうなると……」


 あ、いや、止めておこう。


 こんなことを気づかせてしまうと、良からぬことを考える輩が出てくるからな。


「ところで、何か言いたいことがあったんじゃないの?」


 話を変えることにする。


「そうだったな。新しい衣装、似合っていたぞ」


 何事かと思えば、今度のセリフも反応に困るものだった。


「……」


 褒められたことを喜ぶべきなのか、それとも今更感を指摘するべきなのか。


 服飾に拘らない分、こういうところに疎いのだろうか。


 ユウガオとアサガオは置いといて、エントラはいつも「勇者様はステキです」だから良くわからないし。


「そう、リリシアから連絡が入っていたぞ。あ、ちなみに俺やブロッサム、ヘルボルスも同意見だ」


 ダン達の意見は良いや。


「ホント、喧嘩中のカップルみたいね……」


 丁度、明日はリーサのダンジョンは休みだし、一緒に出かけるとしますか。

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