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案件36「人、それを3」

 更に三日が経過した頃、ファラエが件のブツが完成したことを伝えてきた。


「耳のところは布で良かったんですが、ボディ部に合う素材と加工方法を見つけるのに苦労しました」


「で、最終的にはぜ~んぶ合成皮革にしたのね~。頼んでおいてなんだけど、拘るわねぇ……」


 見た目だけで良かったものを、ファラエは母親に似て凝り性のようだ。


 しかし、合皮でできた黒地のウサギ耳とレオタード風の衣装は、俺が想像していた通りの出来になっていた。


 大体ここまで聞けば、俺が何を注文していたのか分かってくるだろう。


「蝶ネクタイやカフスなんかの小物は本繻子(しゅす)と」


 大雑把な説明だったにもかかわらず、匠の細部にまで拘った造りに顧客は大満足だ。


 これなら、劇的ビフォーアフターが見られることだろう。


「ありがとう、ファラエ。後はレジ作業をしてもらうことになるけど、その分もノシを付けて返すわ」


「ノシ? いや、まぁ、どういたしまして。それで、これを……その、勇者が?」


「へ?」


 思わぬ一言に、少し戸惑った。


 確かに勇者ちゃんは美貌の持ち主ではあるが、色々と問題がある。


「イヤねぇ~、そんなわけないじゃないっ。あの姿は曝せないからポンチョ付きになるわ。さすがに勿体無いでしょ?」


 拘束魔法の状態を見せることができない上、根本的に体付きで見劣りするのだ。


 あ、もちろん、世界レベルに比べて見劣りしてしまうって意味だ。


「そ、そうだよねっ。あ、あははっ。アハハハハッ」


「そうよ、もぉ! アハハハハハッ」


 気持ちを落ち着かせようと、笑って和ませる作戦に出る。ホント、なんてことを考えてくれるのか。


 衣装を受け取ったので、その場を逃げるようにして立ち去る。


 向かう先は、ダンジョンの別の部屋で缶詰になっているアサガオのところである。


「アサガオーっ。調子はど、ぉ……?」


 部屋に入った俺を待っていたのは、なんとも言葉を失う光景だった。


「勇者様、なんの用でチャイか?」


 不可解な語尾……。


 後ろナナメに傾けた椅子の背もたれに片手で逆立ちしているアサガオの姿だ。


 誰が大道芸をしろと?


「……うぅ、妹が酷い有様でござる」


「語尾が変わるほど根を詰めたの? ほら、正気に戻りなさいアサガオ。外に出られるようにしてあげたんだから」


 おかしい、そこそこホワイトだったはずなのに。


 とは言え、ここでアサガオに脱落されるのは困るのだ。


「!?」


 お、さすがに反応した。


「本当ッスか? マジでシャバに出られるんッスかぁっ?」


「お、おう……。そんなに出たかったの……?」


 俺に、涙目で縋り付いてくる。ホワイトでも、缶詰状態であることに疲弊していたようだ。


 なんでもする、くらいの言質が取れたら良かったんだが。かっこわるいかおかっことじる。


「お風呂とかトイレはちゃんと外だったじゃない? ファラエに比べればまだ遠いけど、外に近い場所だから」


「そういう問題じゃないんッスよ! 一日一時間くらいは外で走り回らないと気持ちがッス!」


「犬でもあるまいに……」


 うーん、犬みたいに従順なアサガオとか面白くないか。


 そんなことより、早く例の衣装を着せるのが先だ。


「まぁまぁ、そこまで出たいならこれを着なさい。走り回りたいなら、プラカードも用意してあるからね!」


「わーいッス! 勇者様ステキーッス」


 計画通り。ニヤリッ。


「じゃあ、外で待ってるから着替え終えたら呼んでね」


 言い残して、衣装を置いて出ていこうとする。


 あれれぇ~、誰かを忘れているよう気がするぞ~?


「フベッ! でござる!」


 ユウガオが蹴り出されてきた。


 計画ど、ってもぉ良いわ!


「懲りないわねぇ。まぁ、追手がいることを私に教えなかった分の罰ね」


 罰になるのかはわからないが。


「ウヘヘヘッ、でござりゅ。と、勇者殿にはバレていたでござるか?」


「語るに落ちてたからね。報告の時」


 無駄に『スルーニング』や『ミスト・ヴェール』まで使って、諜報に向かった点が腑に落ちたよ。


「しまったでござるなぁ……。では、仕方ないのでもう一度アサガオ()を拝んでくるでござ」「それは私が禁止するわ」


 部屋に戻ろうとしたユウガオを制止する。


「うぇぇぇぇっ!?」


「当たり前でしょ。この程度で許したらお仕置きの意味がないわ」


「ご、後生でござるぅっ! アサガオの、妹の、バニー姿を一目でもぉぉぉぉぉぉっ!!!」


 うわぁっ! 鼻水が付くから!


 俺は脱兎の如くユウガオの懇願を回避する。バニーなだけに。


 さすがに、だらしなく泣きじゃくった顔では俺の動きを捕らえられないらしい。


 しかし、それほど悔しいのか……悔しいんだろなぁ。


 おわかりの通り、アサガオのため強いては攻略本販売のためにバニーコスチュームを繕って貰ったのだ!


「体に張り付くラバーがラインを強調し、黒い生地は白い素肌を輝かせるでござる! 更にはタイツが、美脚と肉々しさを引き立てるのでござるよぉっ!」


 うん、それだけで君がどんな想像をしているのかわかる。


 男のロマンの一つだよな。まぁ、アサガオの許しが出たら見せて貰うと良いさ。

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