案件35「人、それを2」
それからユウガオとアサガオが帰って来たのは、三日ほどしてからのことだった。
思ったより早かったことについて、理由の予想は付いていた。
「戻ったでござる」
「戻ったッス……」
やや気落ちした様子のアサガオと、それを心配するユウガオ。
「その感じだと、一応は情報を得られたみたいね。お疲れ様」
労いは忘れないが、それは重要なことじゃなかったようだ。
「そんなことは良いッス……」
「と、とりあえず報告するでござるっ。まず、直ぐ近くの村――あ……」
アサガオが口を噤んでしまったので、ユウガオが説明しようとするも言い淀む。
なるほど、最寄りの村はエントラの住んでいた場所だ。そして、教会がそこで何をしていたかも……。
「大丈夫ですよ、続けてください」
ユウガオとアサガオの二人だ。処置はちゃんとしてきただろう。
エントラに促されたが、全てを話すかどうか悩んでいるようである。
俺が頼んだのは諜報であるはずだからこそ、勝手なことをしたと思ってしまっているのだろう。
「教会の方々が、村人に神とコンタクトする方法を教えていたでござる……。後、案の定、国の後ろ盾となっているらしいでござるよ」
言葉を濁しながら言葉を紡ぐユウガオ。
ほほぉ~。
「そうですか。教会も無理な布教はしないでしょう」
「そうね。降りかかる火の粉は払い除けるけど、国同士で何をしてようが私には関係ないわ」
元から考えて置いた通りの返事をして、報告会を終了する。
「別に教会のやっていたことは良いんッス。ただ……」
アサガオが口を挟んでくる。続くはずだった言葉は嬉しいけれど、気持ちを切り替えないとやっていけない。
「貴女にはやってもらうことがあるわ。ヘルへの連絡、忘れたとは言わせないわよ?」
「……えっと。忘れたッス。テヘペロッス」
カワイコぶっても無駄だぁ!
嘘を吐いた分も上乗せでお仕置きでーす。
「はい、これに絵を描いて頂戴ね。アサガオの得意なお絵かきでしょう?」
「ど、どんだけ描かせるつもりッスか!? 数百って数じゃねぇッスよっ!?」
ジャジャ~ンと見せた羊皮紙の束に、アサガオが戦慄する。
描く内容は決めてあるけど、千枚くらいはあるから頑張って欲しい。
ユウガオが、「どうかご慈悲を」と目で訴えて来ている。
「一日ノルマ二十枚! 食事とお手洗いとお風呂、そして一日六時間の睡眠を除いて椅子から離れることは許さないわっ! ユウガオはちゃんと見張って置いてね」
言い渡された沙汰に、アサガオも涙目になる。
「うひぃぃぃ……」「御意にござ……」
どんな絵を描かされるのかと、二人が羊皮紙を手に取る。
「って、これはもしかしてッス……?」
「確かに、これはアレでござるな」
指示されていた内容は、俺の考えたダンジョンセキュリティの構造について、だ。
そう、攻略が難しいならガイドしてやれば良い。不可能ではないとわかれば、人は挑戦しにやってくる。
「攻略本でござるか」
「まさか、そんな手を思いついてくるとは……ッス」




