案件34「人、それを1」
日が沈む頃、俺はダンジョンマスター達とプラスアルファのところへと戻った。
もちろん、時間も時間なので彼らを解散させることにした。
「はいはい、タイムスケジュールを決めるだけにどんだけ時間かかってんのよ。ブレイク、ブレイク!」
五人が変なスクラムを組んで、周囲に迷惑をかけ始めている。
危うく町に被害が出て色々な人のお世話になるところだった。
『……』
皆して、「今日はこれぐらいで勘弁しておいてやる」みたいな顔で睨み合うのやめろよ。
なんとかその場を収めたは良いが、別の問題が浮上し始めていた。
「それで、勇者様。そちらの御仁は?」
ファラエが協力してくれることになり、一緒についてきた。もちろん、姿を隠したりする必要は無いと判断していた。
いや、先住ペットとかの関係って結構難しいよね……。そういう意味でもないけど、人間関係の優先度って奴?
「ファラエ=ノプシス・アフロディーテと、申します。その、よろしく、お願いしま……す」
ほ、ほら、新人君が萎縮しちゃったじゃないか!
「仲良くして頂戴ね? これから、ダンジョンを一緒にもり立てて行くな仲間なんだから」
「ということは、問題解決の案が浮かんだのですね」
とりあえず、エントラは納得してくれたようだ。
「そうよ。詳しくは土のダンジョンへ戻ってから話すわ。リーサ、お願……」
視線を移せば、そこには頬を膨らませながらも白目を剥いて、怒りながら泣いている顔があった。
器用な真似をする。
「不満なのはわかるけど、今は抑えて頂戴。次の機会には、ちゃんと街を回りましょう」
「ぐぬぬ……」
また「勇者に嫌われてる」みたいなことを言って落ち込むのかと思った。
しかし、予想に反して『レビテーション』を使って俺達を土の“マテリアル”ダンジョンへ戻してくれるつもりらしい。
理解してくれて助かる。
「どうせ暇なのだ、歩いて帰るとするよ」
ヘルは『レビテーション』に乗らず一人で歩き去ってしまう。
不意に、嫌な予感が過る。あ、あれ……?
「俺も、直ぐそこだから一人で帰るぜ!」
ブロスの奴も逃げやがった!
相変わらず、『ニトロ・ブースト』で高速推進だ。
「まっ――」
「『レビテーション』」
身体が浮き上がる。
「勇者よ、諦めろ」
「勇者様、ちゃんと後でフォローなさってください」
「――ってェェェェェェッ!」
低空を亜音速で走るのとは違うスリルがあった。
しかも、到着からリーサだけでのフライトが静か過ぎた所為で、非常に気まずかった。
「……うぅ、一周振り切った女の子って怖い」
「あれは、フォローしておかないと刃物が仕込んでありそうな『マジック・センテンス』を昼夜問わずに送ってくる手の子だね」
ファラエ、怖いこと言うなよ……。
通常状態のリーサなら打つ手はあるけど、精神マイナスに振り切ってるとかどうしろって言うんだ。
「とりあえず、作業に移るわよ……」
ちなみに、ちゃんとフォローの連絡は入れておいたからね。さすがにお怒りは鎮めてくれたと思っている。
「で、僕は何をすれば良いんだい?」
「ファラエは今から説明するものを作って頂戴。その後は、物が完成しないとどうしようもないからね」
正直、ファラエが服飾の技術を持っててくれてよかった。
直接は役に立たないかもしれないが、商売というのはやり方次第ってことだ。
「は、ぁ……これを作れと? どういう服なのか、なんとかわからなくも無いけど、どうしてこんなものを? 画力のことは置いといても、実用性を読み取れない……」
「下手で悪かったわねっ。エントラ、文章を考えるのを手伝って!」
デッサンの下手さを誤魔化しつつ、どんどん仕事を割り振っていく。何ができるかは秘密だ。
エントラには作業のメインをお願いすることにした。
正直、小学生くらいの子供に文章力で劣っていると認めるようなものだが。
「はーいっ!」
可愛い。
自分のダメさを許す。
残るはダンなのだが、細かい作業とかは俺より苦手そうなので諦めた。アサガオが帰ってくるのを待つ。
完成した文章を活版印刷するという作業もあるにはあるのだが、国にダンジョンマスターを行かせるわけにもいかない。
「俺は、相変わらずのダンジョンマスター役か?」
「貴方がダンジョンマスターなのよ、ダン」
いつになったら聞き分けるのやら。よろしい、ならば再教育だ。
「まぁた、頭が良いのかしら? さぁ、中に入ったらしっぽり楽しみましょう」
「ま、待て、冗談だ……! というか、頭というのはなんのことだ?」
おっと、そう言えば蹴りをぶちかました時のことは覚えてなかったんだっけか!
「えっと……忘れなさいっ! もぉ、ダンといいファラエといい、可愛げが無いわね!」
『自業自得』「だな」「だね」「ですね」
誤魔化そうとしたところで、間髪入れず声を揃える男ども。
「うぐぅ……。もぉ、ダンはさっさとダンジョンの状況確認! 居ない間に攻略されてるとか目も当てられないから!」
「わかった、わかった。これでチャラにしておこう」
もしかして、デートできなかったことを気にしてらした?




