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案件29「そうだ、観光地に行こう3」

 まず、俺は四つの刺客から距離を取ることに専念する。


 嬉しいことに、仮面三人は人間だ。もう一つが魔族なのは、ただ野良が混じっただけだろう。


「まさか、私に嫉妬したわけじゃないわよね?」


 ユルい顔した豚魔族は答えてくれない。


 しかし、表情はわかる。あれは単純に、人間という獲物を見つけた時の顔だ。


 享楽的に人間を殺すタイプの。


「どうする? 魔族を始末するか?」


「放っておけ。町に多少の被害が出ても、(なす)り付けてしまえば良い」


「その通り」


 聞こえてるぞ、チョウチョ仮面三人衆。って言うか、恥ずかしくないのか?


 しかし、これで俺が魔族も倒さないといけなくなったのは確かだ。


 何せ今ですら、魔族さんが俺ら全員を巻き込んで魔法を使おうとしている。


「マジかっ! せめて、中腹まで待って!」


 ポインセティスの中腹以下にある下層民の居住地であれば、多少の魔法をぶちかましても人的被害は少ない。


 俺達が飛び回っているのは、観光地としての上層民用居住地だ。最悪の場合に、責任を押し付けられてたまるか!


 ちなみに、野良や巡回魔族が魔法を使うのは珍しいが用いらないわけじゃない。


 そもそも、魔法や“マジック・チャーム”、“魔エネルギー”自体が魔族発祥なんだから当たり前だ。


「あれは『フレア・バースト』か!」


「俺達ごとやるつもりだ!」


「散れ! 散れぇ!」


 少し遅れて、広範囲を焼き尽くすのが目的だと気づいたみたいだ。


 人間やダンジョンマスターと違って、名称を呟かないで良い分、少し発動まで時間が掛かる。それだけが救いだ。


「ここで、落とす!」


 三人が散開してくれたお陰で、魔族までの道が開いた。


 立ち並ぶ白亜の尖塔を蹴る。横へ。


 魔族が狙いを変えようとしている間に互いの距離が縮む。


 更に壁でバウンドして、横合いから蹴り飛ばす。壁を砕いてなお、魔族は生きている。


 しかし、これだけではただダメージを与えただけ。


「な、なんだぁ!? ヒィッ、魔族だぁ!」


 おや、俺にユウガオ兄妹の捕獲を頼んできた富豪の古狸さんじゃないか。


「ごめんなさい。トドメはこっちで差しておくわ!」


 穴の空いた壁へと突っ込み、トドメの一撃を頭に叩き込む。


「潰れろぉっ!」


 斜めに蹴りで貫いたら、反作用で屋根の上へ戻る。


「な、なんてことを! 勇者の所業かぁ!」


「コラテラルダメージよ!」


 文句を言ってくる奴にはこの手に限るな。


 この手は理解して貰えないんだけど。


「魔族が片付いた今がチャンスだ」


「わざわざ倒してくれてありがとよ」


「魔法の展開中に突っ込むなんて、命知らずか?」


 恰幅の良い富豪さんと言い争っている間に、また三人衆が戻ってきやがりました。


「取り込み中だから、弁償はまた今度でお願いするわっ」


 追われているのを察してくれたのか、古狸さんに黙って見送られた。


 報酬との引き換えでユウガオ兄妹を救ったが、一応は恩とみなしてくれているみたいだ。


「さっさと貴方達を倒して、謝りにいかないと勇者が廃るってものよ! 覚悟しなさいっ!」


「何が勇者だ!」「ほざけ!」「覚悟するのはお前の方だ!」


 三人同時に喋るな。何を言っているかわからなくなる。


 わからなくても良いけど。


 しかし、この仮装パーティーから抜け出してきたみたいな三人の連携は、意外と厄介だ。


 下層民居住区に入れば、障害物を利用して振り切れると踏んだがダメそう……。


「言ったわね……」


 大型の蒸気パイプがジョイントされる隙間へと、滑り込んでいく。少しでもためらえば、鉄管に押しつぶされるか閉じ込められる。


 コンマ1秒の差で、俺は刺客の視線から逃れた。


「馬鹿な……」


「あのタイミングで通り抜けるだとっ?」


「うろたえるな! 直ぐに回り込め!」


 パイプを飛び越えてやってくる頃には、既に『トキシック・トラップ』を発動している。


 毒の範囲に一人が入った。同時に距離を詰めてこない警戒心は褒めてやろう。


 まぁ、今まで逃げていた俺が、急に立ち止まったならそうするか。


「諦めたの、あ、あっ……な、なに? 光!」


「ど、どうした!?」


「お前、何をした!?」


 仲間の一人が急に狂い始めたら、そりゃ驚くわ。


「LSDよ」


 俺が優しく教えてあげよう。


「エル、エス、ディー?」


「なんだ、それはぁっ?」


「ひ、光が! 虹が襲ってくる! ひかりぃがぁ!」


 ご存知の方も多いと思うが、いわゆる麻薬の一種である。


 これの特殊なところは、植物などから作られる単純な代物と違い人工的に作られたということだ。


 だからと言って合成麻薬とも異なり、医療の過程で偶然に生まれた奴だってこと。


「麦角って言うライ麦に付着するカビから……」


 って、コイツら戸惑い過ぎて話を聞いてねぇな。おい、こらっ!


「は、ははっ。ひかりがっ、襲ってぇ! くくく――るっ」


「なんだ、これは……。“ピョップの実”から取れるアヘンとも違う……」


「教会がそうそうアヘンを外へ流すわけが、ハッ……!?」


 今、聞き捨てならないことを言いやがったな。


 この世界に麻薬の存在がないことに少し疑問を持っていたけど、そういうことだったか。


 麻薬なんてものを金とかと引き換えにばら撒く奴らの気なんか知れない。


 例え、宗教的な意味合いでの利用だったとしても、だ。


「関係者じゃないけど、裏側のことを知っている奴らね」

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