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案件28「そうだ、観光地に行こう2」

 ダンジョン活性化のために、観光地から学ぶところもあるだろう。


 そう考えて、俺はポインセティスへと向かうことにした。


「あそこは、私達には良い思い出と悪い思い出が混ざっているところッスからねぇ……」


「トラウマと言うほどではないでござるが」


 思い立ったら吉日とも言うので早速出発しようとしたんだが、アサガオとユウガオが意見を出してきた。


 俺達と出会った思い出もあれば、貴族や商人連中から盗みを働いて恨まれている町でもある。


 確かに二度と戻りたいところではないだろうな。


「わかったわ。貴方達にはある仕事を頼むことにするわ」


 俺は提案する。


 関わりたいとは思わないが、向こうから関わってくるとも限らない。


 故に、先手を打って情報を集める必要もあった。


「教会の動きを探って頂戴」


「構わないでござるが。こちらからどうこうするつもりはないのでござるよね?」


 先のことで、勇者ちゃんの存在は教会に知れ渡っているはずだ。


 他の村とかにも抗生物質とワクチンを配りたいと思っているが、下手をすればこの数日で目を光らせている可能性がある。


 向こうから邪魔するのなら、火の粉は振り払う主義だ。


「自分達じゃ何もできないくせに、人のやってることにケチをつける奴らが許せないのよ。せっかく、保身を含む好意で手柄まで譲って上げてるのに」


 宗教家って奴は昔から余計なことしかしやがらないよな。


 良い予感もしないので、俺は教会の動きを探るよう二人にお願いすることにした。


「わかったッス!」「御意にっ」


 言って、二人の気配がそこから消えた。


 ユウガオは『スルーニング』だろう。アサガオは、それほどまで優秀ではない『ミスト・ヴェール』で、姿を隠しただけだ。


「それじゃあ、ポインセティスへ行くわよー!」


 情報収集を二人に任せて、俺はエントラとゆっくり歩き出す。


「まぁ、待て勇者。私だって時間があるんだから、パパッと行って観光しようじゃないか」


 そう言って、俺の腰にくっついてくるリーサ。


 何を言って居るのかと思った瞬間、俺達の身体が浮き上がる。


「『レビテーション』!」


「ちょっと、いきなりっ!?」


 心の準備ができていない間に、リーサの魔法で俺達はポインセティスへと向かって飛翔する。


 術者であるリーサが止めない限り、俺個人の意思では途中下車できないようだ。すっごく怖い。


「第一、何でダンやブロスまでついてくるのよ! 足を掴むな、足をっ!」


 ブロスは、まだ邪魔だけど勝手にしろと言い捨てても良い。


 しかし、ダンまでついて来させる予定はなかった。


 誰が土の“マテリアル”ダンジョンを管理するつもりなんだ。ダンジョン・マスター不在とかふざけるな。


「リーサ! なんで、ダンまで連れてきたのよ!」


「あれ? 一定の範囲をグループとして認識するから仕方ないな」


「ちくせう!」


 今更文句を言ったところで、目的地へ到着するまでは如何ともし難いらしい。


 更に俺を驚かせたのは、到着した先にあった人混みだ。


 町の全容を眺めるよりも、そっちの人集りに気を取られるほどである。


「我を取り囲みしバラ達よ、どうかこの身を開放しておくれ。待ちに待った薄雪の草花が咲き誇った」


 聞き覚えのある声で、砂糖を吐き捨てたくなるような(ポエム)を紡ぐ。


 取り囲んでいるのは女性ばかりだ。もはや、誰がそこに居るのかわかりすぎて、俺達はうんざりした顔をする。


 人混みが割れて、幽鬼の(おう)が姿を現した。


 命を狙いに行く愚かな女は軽くあしらわれる。


「なんでヘルまでいやがります……」


 まぁ、答えを聞かずとも誰が根回しをしたのかはわかる。


 アサガオ、帰ったら覚悟しておけよ。


「我が居てはダメか、美しき根無し草? 勇者よ、まだ心が定まらないか」


「おっと、その手には乗らないわよ。貴方が考えを改めないなら、候補としては最悪よ」


 マウントを取りにくるヘルを躱して、ポインセティスのシンボルである三本のポールへ飛び乗る。


 一番、背の低いポールへバック宙で。次に背の高いポールへ。更に背の高いポールに。


「な、何よあの女!」「私のヘルボレス様を返して!」「ヘルボレス殺!!!」「だ、ダンジョンマスターが揃い踏みよ……」


 さすがに、周囲の黄色い声――以外も――五月蝿いな。


 しかし、そんな小煩さなど、四体のダンジョンマスターが一睨みすれば黙らざるを得なくなるのだ。


『……』


 スゴスゴと群衆が引いて行った。


 こんなのでも魔王に仕える強者(つわもの)達か。


「さて、これでゆっくり回れるぜ。どこか美味い飯屋に行ってみようぜ」


「どこから行こうか? 私は何か甘い物が食べたいぞ」


「どこか闘技のできる場所はないだろうか?」


「ダンよ、ここは観光地だぞ。そんな物があるわけなかろう。服飾屋など勇者にはふさわしいのではないか?」


「もっと観光地らしく、尖塔郡など見てはどうでしょう?」


 いくらなんでも、この四人を連れて町を歩くのは辛い。一人でも辛いのに、だ。


 加えてエントラまで参戦していた。


「五人同時なんて無理だから、タイムスケジュールを作りなさいよ……。その間に、私は下見でもしておくわ」


 五人とも「確かに」と納得の上で、順番と行き先を相談する。


 それを始めていくつも数えない内に、俺は気配を感じた。傍の建物に飛び乗って、四つの追跡者に目配せする。


 話し合いがデッドヒートしているダンジョンマスター達は気づいていないようだ。


「ハッ!」


 仕方ないので、俺は一人で街へと疾駆する。

久しぶりのアクション回が少し続きます。

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